兵庫県豊岡市『人、自然にやさしいお店 moko』 『株式会社坪口農事未来研究所』
コウノトリ育む環境共生農業を2つの“女子力”が進化させる
安心して使える「石けん」。だからコウノトリ育む農法
「私の原点は、安全安心の石けんをつくりたいという思い。その原料に使うお米も安全安心であることは大前提で、『コウノトリ育む農法』を取り入れるのは当然の選択でした」
「コウノトリ育む農法」を知った当時を振り返る、野世英子さん。現在、豊岡市の南東、但東地区で約6haの田んぼで水稲栽培し、「コウノトリ育む農法」により、「赤米」やコシヒカリを生産している。
学生時代の同級生であるご主人の実家が米農家だった。だが、ご主人も企業に勤め、農家の嫁になる予定すらなかった。だが転機は、出産直後に訪れる。体質が変わってか、肌荒れが続き、原因の一つが日々肌に接触する「石けん」ではないかと推測し、書籍やインターネットで調べ始めた。すると、「無添加」と記載している商品でも、完全に合成化学物質が無添加である商品はほとんど存在しないことを知る。
「なければ、自分で作ろうと思い、インターネットで原料を調達して、レシピ本を見ながら、試行錯誤して、約1ヶ月かけて作りました」
使ってみたら、市販の商品との違いは一目瞭然。肌荒れはなくなり、しっとりとした保湿が戻った。同じように悩む知人女性に提供したところ、すぐに評判になり、商品にしてほしい、という要望が急増。完全無添加のレシピで製造をしてくれる工場を見つけ、事業化に着手した。
その後、原料に米ぬかが使えることを知り、なかでも、自身で栄養価が高いと好んで食べていた、米の原種と考えられている「赤米」の米ぬかを使ってみると、泡立ちもよく、もちもち感が出た。ただ、購入すると高価であり、ならば自分で育てよう、とご主人の実家の田んぼを使い、米の生産を始めた。
「私は石けんに使うのであれば、無農薬でなければ意味がないと思っていました。そんな時に『コウノトリ育む農法』を知り、勉強に行きましたが、従来の農業すら知らない素人でしたから、失敗の連続……でもやっぱり自分で育てた原料で作る石けんには、一層愛情を感じます」
「コウノトリ育む農法」と「赤米」というコンセプトを生かした、センスあるパッケージデザインも手伝い、米ぬか石けんは話題を呼んだ。豊岡市も商品のPR活動を行い、市内各所で製品が並べられるように。結果、生産量は4年間で5倍になった。「コウノトリ育む農法」の6次産業化の新たなシンボルの一つになった。