秋田県大潟村『大潟村あきたこまち生産者協会』
地元食材の「すっきり飲める甘酒」 2年で地域を代表する存在に
秋田の伝統食を伝統の糀でさらに飲みやすく
「商品を開発し始めた当初は、『糀づくりは簡単ではない』や『いまさら新しい甘酒を作って本当に売れるのか』という意見もありました。」
涌井副社長は、同社が生産する「あきたこまち」を活かした加工品を考える中で、ブームになっている「甘酒」に着目した。だが実は、本人は「甘酒」はあまり得意ではなかったという。
「小さい頃、家でよく甘酒が出てきましたが、独特の糀の風味が苦手で、あまり好んで飲みませんでしたね」
「甘酒」は、大きく二つのタイプに分類することができる。ひとつは、酒粕を使用したタイプ。もうひとつは、米糀を使用する、米のみでつくるタイプだ。秋田だけでなく、東北地域では自宅で甘酒を作る文化があり、涌井副社長の家でも同様に甘酒を飲んでいたという。
自身は甘酒が苦手でも、商品化はできるか。2017年。地元の秋田空港で偶然見つけた甘酒を手に取り、飲んだところ、衝撃が走ったという。
「甘酒なのに、甘さが後に残らない。しかも、糀の匂いがほとんどしない。これなら私も飲めると思ったんです」
その商品は、地元秋田の糀屋(味噌屋)が作っていたもので、秋田県内のみで使用されてきた「あめこうじ」という糀を使ったものであった。実は涌井副社長、その糀屋とは地元勉強会で顔見知りであったことから、すぐに連絡し相談。その糀屋はあくまで手づくりの少量製造であるため、涌井副社長が「あめこうじ」を用いた甘酒づくりを本格事業化することに、異論はなかったという。
だが、開発は簡単ではなかった。甘酒づくりのための設備をリースで購入。「あめこうじ」を用いた試作品を作ってみたが、あの空港で買った商品のような品質のものはでき上がらなかった。
「『あめこうじ』は、秋田の伝統的な糀なのですが、糀の中でも扱いが難しく、生産量も少ないものでした」
問題は、温度管理にあった。「あめこうじ」は米が糀に変化する際に発生する温度の上昇が他の糀と異なり、その特性を把握した糀作りをしなければならなかった。約半年。ようやく涌井副社長がイメージする、飲みやすい甘酒が製造できるようになった。
「作りにくいからこそ、真似されにくい。その独自性にも、この商品の可能性を感じました」