「食と健康」で地方創生。日本の本物の食を伝えるdancyuが徹底取材。
第五回
五島列島・上五島のおいしい「薬膳と健康」の旅
基本の上質素材「塩、あごだし、椿油」を見直す。
郷土料理の決め手であり、3種の神器ともいえるのが、海塩とあごだしと椿油。島ではスーパーマーケットや物産店で扱いがあり、簡単に手に入れることができる。地元でつくられるピュアで上質な素材を見直し、もてなしの料理に取り入れていくこと。それは、郷土料理に磨きをかけることにつながる。
■小川邦夫さんがつくる「五島のうみしお」
五島の美しい海から生まれる海塩。手間暇をかけた混じりけのない塩のつくり手は島に何人かおり、それぞれに個性がある。そのなかの一人、小川邦夫さんが手がける「五島のうみしお」の工房を訪ねた。
小川さんは熊本県の出身。「仕事に追われる生活ではなく、自然のなかでゆったりと暮らしたい」という考えのもと、2000年に妻と長男を連れて縁もゆかりもない上五島に移住。島で出会った塩づくりに取り組むようになったという。
製塩の工程は大きく二つ。薪をくべながらじっくり海水を煮詰め、塩分濃度3%から約20%まで高めていく。そして、1週間ほど甕で寝かせた後に再び塩水を炊き上げて結晶をつくっていく。
小川さんの塩は結晶の粒が大きく、ミネラルをたたえた甘味がありつつもしっかりとした塩気が感じられる。
シンプルな作業だけに奥は深い。ポイントは火加減とにがりの引き上げのタイミング。「ほら」と手のひらに乗せたできたての塩は、それは見事なもの。ピラミッドのような形の結晶は太陽の光を受け、きらきらと輝いている。
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■畑下 直さんがつくる「あごだし」
五島列島でだしといえば、あごだしと決まっている。トビウオを炙って乾燥させ焼きあごで取るだしである。そのつくり手のなかでも昔ながらの製法を踏襲し、味わいに評判が高いのが畑下直さんが営む「はたした」のものだ。
その手順は、まずは作業場のある目の前の海で揚がったトビウオを串に刺していく。
表面を炭火で焼きつけていく。もうもうと煙を上げて手際よく焼かれていく様子は圧巻。今では少なくなった製法である。
それを冷風で乾燥させていく。時間をかける分、旨味はしっかり!深い味わいのだしがとれる。味付きのものは、酒のつまみにも最高である。
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■新上五島町振興公社の「椿油」
上五島だけでおおよそ680万本ものやぶ椿が自生しているといわれており、島の特産品でもある椿油。かつては、各家庭でつくった椿油の買い取りもしていた新上五島町振興公社では昔ながらの搾油体験ができる。
まずは乾燥させた椿の種を杵でついてつぶしていく。
つぶした種を布でくるみ、せいろに入れて蒸し上げる。それを圧搾機に入れ、油を搾り取る。
出来立ては、鮮やかな黄色。天然由来の椿油は、1kgの種から300mlしかとれないほど貴重なもの。髪や手、顔、ひじなど体に付けるほかに、食用としても重宝されている。植物油の中で最も多くのオレイン酸が含まれているといわれており、体内で活性酸素と結びついて過酸化脂質をつくりにくいため、動脈硬化や高血圧、心疾患などの生活習慣病予防改善に見直されている。薬膳料理化にも強いアイテムである。
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