「食と健康」で地方創生。日本の本物の食を伝えるdancyuが徹底取材。
第三回
三重の「健美和膳」と「温泉宿泊プラン」
地元大学との連携で生まれた、三重県津市「湯元榊原舘」(ゆもとさかきばらかん)の「鍼灸、薬膳宿泊プラン」。
伊勢神宮参拝のために、湯の中で禊を行う「湯ごり」の地に立つ名湯の旅館である。長い歴史を持つ旅館が打ち出す、鈴鹿医療科学大学・髙木久代教授監修の「健美和膳」とは?
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「まろみの湯」、薬膳料理、鍼灸の三本立てで心身が蘇る宿泊に
三重県津市の温泉旅館「湯元榊原舘」を訪ねた。創業は大正8年。平安時代に清少納言の枕草子に「七栗の湯」として記述されている、歴史ある名湯の宿だ。全59室を有する大規模な旅館で、伊勢神宮まで車で約60分の立地。来客数がピークを迎えた1990年代半ばは、年間49万人が訪れた。だが、現在は32万人にまで減少。そこで、この土地が持つ素質を存分に生かし、再び多くの人を呼ぶべく、同館の四代目・前田諭人(さとし)さんと、地元の経済活性化を目指す株式会社三十三総研の専務取締役伊藤公昭さんが新しい取り組みに乗り出した。
新しいプランのテーマは、都会で暮らす人々のストレスを癒やすこと。そして、日本文化を体験したいインバウンドの取り込むこと。地元の鈴鹿医療科学大学と連携した薬膳料理と、宿の誇りでもある名湯「まろみの湯」、鍼灸の施術を組み合わせることを実現したのだ。
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伊藤公昭さん(写真右)さんが目を付けたのは、奈良県、和歌山県に並び、三重県は古くからの漢方の聖地だったということだった。そこで伊藤さんは、三重県庁の「薬農連携産業化支援事業」を受託するかたちで、地元の農家に薬用植物の栽培を薦め、専門家を呼んで栽培用を指導してもらい荒れ地や休耕田を活用するように。2015年からは、地元の牽引企業である九鬼産業株式会社の協力を得て鎮静作用のあるカノコ草を栽培し、製薬会社に卸す仕組みを確立している。前田諭人さん(写真左)が宿で提供する薬膳料理は、そういった土地柄からも親和性の高い取り組みというわけである。
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さっそく薬膳料理「健美和膳」と鍼灸を組み合わせたプランを体験させてもらった。現在、木曜日限定で実施をしているプランで、価格設定は2万6070円~(3人一部屋の場合の一人分税込み料金。2019年3月現在)。普通、宿のチェックインは15時からのところ、12時から可能で、まずはゆっくり温泉に浸かることを薦められる。
加水や循環をしない源泉かけ流し。「まろみの湯」と謳うとおり、とろりとした肌触りの湯で、まさに疲れやストレスが溶けてなくなっていくよう。体が芯から温まる。源泉の噴出口から湯口までが至極近く、温泉が酸化することなく溜められることも、よい泉質を保っている理由である。源泉は31.2度と低めだが、低温だと炭酸成分が壊れないというメリットもある。その冷泉を張る浴槽には、15分以上浸かることを薦めている。
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湯から上がってクールダウンしたら、鍼灸施術専用の部屋へと向かう。施術をするのは、鈴鹿医療科学大学の鍼灸サイエンス学科の教員で、中国で東洋医学の実績を積んだ医師の張文平先生という贅沢。まずは、カウンセリングをして、その人ごとに合わせた施術を判断する。脈で内臓の具合を図り、問診や舌の状況を目で確認。そして、吸い玉といわれるカッピングや鍼、お灸を組み合わせて、その人が辛いと感じている症状を緩和していく。血行をよくし、顔のむくみの解消やほうれい線の軽減、たるみの改善を目指す「美容鍼」という施術を選ぶこともできる。
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施術は約1時間をかけて行われる。終了後は、その人の体質や体調に合わせた薬膳茶をいただく。この時点で、満足度はかなり高い。
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