「食と健康」で地方創生。日本の本物の食を伝えるdancyuが徹底取材。
第二回
青山有紀さんの「和の薬膳料理」の提案
青山有紀さんは、国際中医薬膳師資格を有する料理人。母から受け継がれた、京おばんざいと韓国家庭料理を提供する料理店の店主でもある。今回は長崎県の五島列島を訪ねて想を得た、おもてなし料理となる薬膳料理を提案。「冬の野菜の料理」、「魚料理」、「猪肉料理」「鍋もの」など、全10種類の新作レシピを伝える。場がぐっと華やぎ、心も浮き立つ食べ方の提案とともに、地元の身近な食材で応用をしたい!
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食欲を掻き立てる!「季節の野菜と魚の前菜」編
今回、「和の薬膳料理」を提案するのは、料理人・青山有紀さん。一日一組限定の料理屋を営んでいた家で育ち、美容業界を経て、自身も東京・中目黒に料理屋「青家」を開店(現在は京都へ移転準備中)。国立北京中医薬大学日本校で学んで国際中医薬膳師資格を取得し、薬膳料理にまつわる料理書も数多く著している。美容の知識を生かしたものも多く、女性からの支持も厚い。
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「和の薬膳料理」を考案するにあたり、その一例として、2018年に世界文化遺産に登録された教会を有する、長崎県・五島列島の南松浦郡新上五島町を訪ねた。海に囲まれ、ぶりや鯛、牡蠣を代表とする魚介が豊富で、椿が咲き誇る山々では近年、猪の捕獲が盛んだ。活気ある市場や神聖な祈りの場、地元の方がもてなす郷土料理に実際に触れ、全10品のレシピを完成させた。
すべての食材には、薬膳でいうところ効能が期待できるというもの。今回のレシピのポイントを青山さんはこう語る。
「気を補う“補気”、血を補う“養血”、腸の働きを高めて排便を促す“通便”など、どの食材にパワーがあります。その効能を最大限に生かすために、組み合わせを考えることが大事です。実際に地方へ足を運んでみてなにより嬉しいのは、その土地らしいものが食べられること。器や提供の仕方などに地元のストーリーを重ねることで、おもてなし料理として転用できるはずです。ぜひご自分の土地でも、その時々の季節感を取り入れて応用してみてください」
さっそく、「季節の野菜と魚の前菜」編、「猪肉と山の幸の料理」編、「鍋ものとご飯のごちそう」編の順でレシピを紹介していこう。
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白い野菜と松の実のポタージュ
「白い野菜は消化によく、胃腸を助ける効能もあります。とくに、玉ねぎ、ねぎ、蕪は体を温めるので冷え性の方にもお薦めです。ミキサーにかけることも消化を助けてくれます。松の実を合わせて免疫力がアップ。さらにご飯が加わることで力が付きますし、ほのかにとろみがつきます。疲れた日で食べる気力がないときはこれだけでOK。赤ちゃんにもお年寄りにも、病み上がりの方にもやさしい一品です。食事の最初に、温かいスターターとしてお猪口一杯の量でお出しするのもよいですね」 |
材料(2人分)
・蕪、長ねぎ、大根、カリフラワー、玉ねぎなどの白い野菜 合わせて300g
・松の実 小さじ1
・ご飯 40g
・オリーブオイル 大さじ1
・塩麹 小さじ1(なければ塩少々)
・昆布だし 400ml
(つくり方)
- 野菜は洗って、食べられる皮はつけたままざくざくと切る。
- 鍋にオリーブオイルを熱して、1を炒める。油が回ったらご飯、松の実、塩麹、昆布だしを加え、蓋をしてごく弱火で10分蒸し煮にする。
- ミキサー(もしくはハンディフードプロセッサーなど)にかけてポタージュ状にして鍋に戻し、味を見て好みで塩(分量外)を足してととのえる。
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アジと旬野菜のぬた
「刺身、生魚をいかに薬膳にできるかがテーマ。青魚は西洋医学的には血をサラサラにする効果があるといわれます。アジは本来、体を温めると言われますが、冷たい料理なので酢、和がらしといった体を温める食材を組み合わせて、中庸を保つようにします。野菜は時季のものを。春なら山菜もよいです。最初からぬたと和えずに盛り付ければ、季節の野菜の色見も楽しめます」 |
材料(4人分)
・新鮮なアジ(3枚おろし) 2尾
・菜の花、スナップエンドウ、筍など(いずれもゆでておく) 適量
・木の芽、ラディッシュなどの薬味 少々
A ぬた味噌(混ぜておく)
白味噌 大さじ2
きび砂糖 小さじ1
米酢 大さじ1と小さじ1
和がらし 小さじ1/2
すり胡麻 小さじ2
(つくり方)
- アジは皮目を下にして重ならないようにバットに広げ、両面に塩(分量外)を振る。15分ほど置いてからさっと洗い、ペーパーで水気を拭き取る。別の小さなバットにアジを重ならないように並べ、酢(分量外)をかけ、6分浸す(3分経ったらひっくり返す)。酢から引き上げ、骨があれば抜き、皮が付いていたら剥がして、食べやすく切る。
- 器に野菜とアジを盛りつけ、Aぬた味噌を添え、木の芽やラディッシュなどの彩りの薬味を飾る。
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鯛と旬野菜のさっぱり和え
「鯛にはほんのり体を温める効能があり、利尿作用もあります。ストレスにもよいと言われる食材です。野菜や香りのいい柑橘と合わせて見た目を華やかにし、むくみの解消、美肌づくりにつながるお料理に。食感や香りが大事なので、食べる直前に仕上げるのがポイントです」 |
材料(2人分)
・蕪、うるい、水菜などの野菜 合わせて100g
・鯛刺身用の柵 70g
・胡麻油 小さじ2
・花穂紫蘇 数本分
・胡麻 適量
・柚子やレモン、酢橘などの絞り汁 小さじ2くらい
・塩 少々
・手作りポン酢 大さじ2 ※3ページ目の(つくり方)を参照
(つくり方)
- 鯛の両面に塩(分量外)を振り、15分ほど置いてから水気を拭き取り、食べやすく切ってボウルに入れる。蕪、うるい、水菜は洗って食べやすく切り、しっかりと水気を切る。柑橘の実は皮をむき、すべてボウルに加える。
- 1に手作りポン酢、胡麻油、柚子などの搾り汁を入れて手早く混ぜ、味を見て好みで塩かポン酢を足す。食べる直前に器に盛り、胡麻を振って花穂紫蘇の花を茎から外して散らす。
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椿の花と蕪の甘酢和え
「新上五島だけでも約680万本もが自生するという椿。五島を象徴する花を料理に取り入れました。鮮やかな色見も美しい小鉢に仕上がります。蕪は整腸作用があり、血を巡らせて五臓を養う効能があります。イライラしたり、のぼせたりした際にもよい食材です」 |
材料(4人分)
・椿の花の蕾 10個ほど
・蕪 200g
・塩 少々
・酢 大さじ2
・きび砂糖 小さじ2
・柚子 適量
(つくり方)
- 蕪をごく薄く切りにし(スライサーでもよい)、塩をからめて揉む。しんなりしたらさっと洗い、ザルにあげて水分を絞る。
- 椿は花びらだけを取り、さっとゆでてザルにあげ、軽く絞る。
- ボウルにきび砂糖を入れて熱湯大さじ1で溶かし、酢を加えて混ぜる。1と2を加えて混ぜ、30分ほど置く。味を見て好みで塩少々(分量外)を足し、器に盛り、柑橘の搾り汁をかけて柚子の皮を飾る。
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