清泉女子大学の皆さんの粘り
発想塾にはじめて大学生が挑戦!
アイデアはどこまではじけたのか?
大学生× AI × 地方創生で、新しい解へ
AIを活用して地方の課題を考える“地方創生イノベーション発想塾”。4回目となる今回、大学生として初めて挑戦してくれたのは、東京の清泉女子大学 安斎ゼミのメンバーたち。大学生の柔軟な脳と、予想外のヒントを繰り出すAIとの出会いは、どんな化学反応を起こしたのでしょうか。
清泉女子大学の地球市民学科は、日本で唯一「地球市民」を冠した学科として、グローバルな視野をもって地球社会に貢献する人材を育成しています。好奇心旺盛で成長意欲の高い学生が集まる安斎徹教授のゼミでは、これからの社会やビジネスを如何にデザインするかを探求しています。発想塾に挑戦する理由を、安斎教授にうかがいました。「ゼミでは、AIを使いこなしてクリエイティブなことができる人材を育てたいと強く思っています。パートナーとなる地域を探していたところ、近畿日本ツーリスト関東様から、群馬県の沼田市観光協会様をご紹介いただきました。『AI×地方創生』に挑戦できるのは学生にとって貴重な経験になります」。
群馬県沼田市は、利根川水系が育む豊かな自然に囲まれた街。3つの川に育まれた平らな台地と急崖からなる河岸段丘は、日本一美しいと評されています。また、四季を通じて多彩な果物が実ることから、フルーツ狩りが盛んです。学生たちは、沼田市の魅力を存分に生かし、更に魅力化するためのアイデア発想に取り組みました。
1 3 人の学生が、発想の跳躍にトライ
講師は、(株)博報堂 八幡功一氏と、(株)そもそも ファシリテーター 赤松範麿氏。メインゲストには、沼田市観光協会から金丸智さん。オブザーバーとして、(株)近畿日本ツーリスト関東の佐藤佳奈さんと村山祥恵さんも参加してくださいました。学生たちは妄想力を逞しくして、計3日間の発想塾(合計6時間+宿題)に臨みました。
1日目 沼田市を知ろう
(2020年10月19日)
2日目 発想の基本を学ぼう
(10月26日)
3日目 アイデアを飛ばそう
(11月9日)
学生たちは、全員が沼田市に行ったことがなく、知識ゼロからのスタートです。そこで、初日は、金丸さんから、沼田市の特徴や、“沼田市ならでは”のことを教えていただきました。 2日目は、発想に関する講義や、AIブレストスパークの使い方を学び、「沼田市に行ってみたくなるアイデアを考える」という宿題が出されました。3日目の冒頭では、1人ずつ宿題を発表。更に4チームに分かれて討議して、各々の宿題を超える案を出すべく頭を絞りました。学生たちは、時間ギリギリまで粘ってアイデアを研ぎ澄まし、発想塾をやり遂げました。
発想塾後も、粘りに粘って、最終4案
発想塾を終えて、「せっかく生み出した案を、このまま終わらせたくない。さらに磨いて完成させたい」との思いを、金丸さんに打診したところ、快諾を得て、再度プレゼンする機会をいただきました。1か月後、ブラッシュアップした自信作を、「沼田市リブランド計画」としてプレゼンするオンライン会議が実現しました。
Aチーム
「最高の途中下車を! 」
フルーツ狩りを楽しんだ後、すぐに帰ってしまう観光客が多いことから、もっと沼田で時間を過ごしてもらうことを狙った案。「沼田は途中下車するのに最高の場所」をキーワードに、観光バスの代わりに路線バスを使うことを提案。乗り降り自由なフリーパスを使って、味噌パンやだんご汁といった地元グルメや、心癒される景色など、どこで降りても味わいのある沼田を楽しんでもらうというアイデア。
Bチーム
「フルーツI N G 沼田」
りんごの産地といえば東北や信州が有名。そこに沼田も名乗りを上げよう!というアイデア。りんご温泉やりんご食べ比べなど、りんご三昧の“りんごツーリズム” で女性層へのアプローチを狙った。また、「実際に沼田に行って食べてみたい」という気持ちを醸成する施策として、東京にある群馬県のアンテナショップのメニューに、りんごのスイーツを加えることも提案した。
Cチーム
「学童文化財」
アニメ「鬼滅の刃」の影響で、レトロなものに関心が集まっている。それを好機として、文化財をアピールしようというアイデア。子どもたちに、沼田の文化財「南郷の曲屋(まがりや)」で、かまどの火おこしや囲炉裏での料理などを体験してもらう。文化財を“見るだけのもの” から、楽しい体験ができる場所、行きたい場所に変え、未来に伝承したいという気持ちに繋げようと提案した。
Dチーム
「シズってみる?」
シズルとは、温かい料理から上る湯気や、天ぷらを揚げる音など、臨場感ある表現で五感に訴える広告手法のこと。AIが出したこのヒントから着想して、沼田を「日本一シズる場所」にしようというアイデア。日本最大の天狗のお面が見られる迦葉山弥勒寺や、国道沿いに店が並ぶとんかつ街道、人気の温泉などをつなげた「シズロード」をつくり、見たい!食べたい!行きたい!という意欲を刺激し続ける観光コースをつくることを企画。
AIに連れられて、自分の思考のずっと外へ
発想塾から最終プレゼンまでを終えて、学生たちからは、こんな感想が寄せられました。
・AIの可能性は無限大だなぁと感じた。
・アイデアを数多く出すことで、意外な点で新たな発見があると感じた。
・発想は自分が思ったより沢山あって、その発想がどんどん繋がっていくこと。自分の中では限界でも、それ以上に出していくことが大事だなと思った。
・アイデアの本質的な部分を捉えること、意外な接着から新しいものが生まれると学んだ。
・自分にはない視点に気が付けたり、新たな発想を思いつくきっかけになった。
金丸 智さんから一言
AIを使うことで、沼田に対する自分の中のイメージとは全く違う視点で考えるきっかけを得られると感じました。また、学生さんたちは沼田に来たことがないので少し心配していたのですが、それは杞憂でした。逆に、全く知らない土地であるだけに、柔軟なアイデアが出てくるものだなと驚きました。地元の自分たちにも良い示唆をたくさんもらいました。
佐藤 佳奈さんから一言
旅行を企画する立場から見て、新鮮なアイデアばかりでした。例えば、路線バスを活用するというのは、地域の魅力発見や、地元の方との交流に繋がりやすく、パック旅行とは違う面白さが生まれると思います。どのアイデアも、地元企業とのコラボなど、いろんな可能性が広がっていくイメージが湧きました。
安斎徹教授から一言
AIは、考えも及ばないワードを次々と出してきます。それが発想を助けてくれて、非常に面白く、今後も使っていこうと考えています。今回の発想塾を喩えて言うなら、AIに連れられて空想の旅に出たようなものです。気がついたら、学生たちは実際に沼田に降り立ったかのような感覚にまで達していました。学生たちにはぜひ現地を訪れて、土地の魅力を体験し、更にクリエイティブなアイデアを出してくれることを期待しています。
行ったことのない土地へ芽生えた「擬似郷土愛」
今回は現地に行くことなく発想しましたが、学生たちからは、「沼田が好きになった」「河岸段丘を見て、ハイキングや温泉に行こうと友人を誘いたい」「新鮮な果物や、感動的な景色を味わえて、一日中楽しめる場所だと友人に紹介したい」といった感想が寄せられました。自分たちで良いところを調べて、頭を動かしたことで、すっかり郷土愛に似た気持ちが生まれた様子。ネットやテレビから簡単に情報を得るよりも、能動的に想いを寄せて考えてみた方が、より深い関心や愛着を生むことになるとは、新しい発見でした。こうした体験は、関係人口を増やす方策の新しいヒントになるかもしれませんね。