千葉県いすみ市『いすみ市役所』
学校給食が導き出す オーガニックと地域の可能性
子どもへの好影響を多面的に説明 段階的に予算増額を達成
「有機米に取り組み始めた頃、生産者さんと有機米の活用法について意見を聞いた際、『まず、地元の子どもたちに食べさせてあげたい』という声が上がりました。それで、まずは初年度にできた有機米を学校給食に導入したら、地元でとても評判が良かった。その影響もあり、その翌年には市として学校給食のお米の全量を有機米にすることを目標に掲げました。その目標は生産者を強く勇気づけ、新たな生産者も参加し、結果、4年目で全量導入が達成できました」
生産量ももちろんだが、学校給食の食材を替える上で、最大のネックとなるのは、コストだ。前出のとおり、有機米は従来の米より高価であり、仕入れ値が上がることは必至。一方、学校給食の予算は限られている。そのコストをどう解決するか。鮫田主査は他地域の学校給食の成功事例を徹底して調べ、答えを導き出した。
「学校給食に割ける予算は限られています。ですが、そもそも予算とは何のためにあるのかを考えた際、特に学校にまつわる予算は、子どもたちの健全育成につながることにあるわけです。有機食材を学校給食に導入している他の地域の事例を参考に、有機米を取り入れることで子どもたちへの複合的な効果を算出し、単なる給食の枠組みにとどまらず、食農体験や環境教育ができることなど、多様な価値があることを説得し、給食以外の予算を割り当てる提案も行いました。その結果、毎年段階的に予算が増額されていきました」
学校給食導入以降、鮫田主査を中心に、有機米給食と連動した教育プログラムを開発。環境と農業と食を一体化した食農教育を、1年間で45分×30時限行いはじめた。その取り組みは今も続き、いすみ市の学校教育の特徴として定着しつつある。
「健全な環境が健全な食を育み、暮らす人々の健康と健全な持続性ある社会を作り出す。有機農業の持つ複合的な価値を表現する上で、学校給食は、最高の取り組みだと、改めて思います」