2018年に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録され、多くの観光客が訪れる熊本県は農業が盛んで、歴史ある野菜を「くまもとふるさと野菜」に認定し、その普及に努めています。キンカンや日向夏、キュウリなどが生産量日本一(2018年)の宮崎県には、全国区になった完熟マンゴーや宮崎牛など、ふるさと納税でも人気の高い特産品が数多くあります。農産物や水産物のみならずブランド焼酎でも有名になりました。鹿児島県には日本最大のロケット発射場がある種子島、世界遺産に認定された屋久島があります。有名な農産物として、世界一重い大根「桜島だいこん」があります。黒豚やさつま地鶏、鹿児島黒牛などブランド肉が多くあり、常に畜産産出額の全国上位に名を連ねます。

馬刺し

 新鮮な馬の生肉におろししょうがやニンニクなどの薬味を添えて、甘口のしょうゆで食べます。
 戦国時代、豊臣秀吉の配下で肥後(現在の熊本県)を治めていた加藤清正が、食糧難の際に馬を食す文化を広めたと伝わります。
昭和中期に入り、牛肉や豚肉の代わりに、役目を終えた農耕馬や軍馬を食べる習慣が一気に広がりました。
 その切り口が桜色になることから、「桜肉」とも呼ばれています。ハラミ、フタエゴ、赤身など各部位の食感と味わいは多様。食し方は刺身をはじめ焼肉や燻製、しゃぶしゃぶなど様々。今では全国的に食されます。

いきなりだご

 輪切りにしたさつまいもと餡を小麦粉の生地で包んで蒸し上げる、熊本県に昔から伝わる郷土菓子。
 「いきなり」とは熊本の方言で「簡単」という意味で、「だご」とは団子をさします。手早く「いきなり」作れることから、その名が付いたという説もあります。繁忙期の農家のおやつとしてうまれた料理とされます。戦後、食糧難の際には餡を入れない「いきなりだご」が多く振る舞われたといわれています。
 今では熊本おふくろの味として、定番のおやつとして、全国各地の物産展などでも人気です。

からしれんこん

 よく洗ったレンコンの両端を切り落としてからゆでて陰干しし、レンコンの穴にからしみそを詰めてたものに衣をつけ、揚げた料理です。
 江戸時代、藩主の細川忠利が病弱だったため、滋養強壮を目的とした献上品として作られたのがはじまりです。からしれんこんの切り口が、細川家の家紋「九曜紋(くようもん)」に似ていたため、しばらくは門外不出の料理でしたが、明治時代に入ってから一般に製法が広まったとされます。
 レンコンの食感とからしみその味わいは、お酒のつまみとして、ご飯のおかずとして、お土産としても人気です。熊本県の冠婚葬祭に欠かせないからしれんこんは、熊本名物の一つです。

地鶏の炭火焼き

 小口切りにした地鶏を、塩こしょうで下味をつけ、強火の炭火で炭の色が付くまで黒々とこんがり焼き上げた一品。炭火による燻製のような独特の香りが特徴です。
 元々、古くから宮崎県及び鹿児島県で飼育されていた「地頭鶏」が天然記念物に指定されたため、新たに食用として外来種の鶏との交配で産み出された地鶏が「みやざき地頭鶏(じとっこ)」となり、宮崎を代表する地鶏となりました。
 現在では加工技術の向上による真空包装のおかげもあり、燻製や炭火焼のお土産品も大変人気があります。

冷や汁

 魚を焼いてほぐしてあぶったみそ、薬味とあわせたものを出汁でのばし、冷やしてからご飯にかけて食します。太平洋に面した宮崎県で獲れるアジ、トビウオ、カマス、タイなどの魚を活かす調理法としてうみだされました。
 古くは鎌倉時代の書、鎌倉管領家記録に「武家にては飯に汁かけ参らせ候、僧侶にては冷汁をかけ参らせ候」と記されていました。
冷や汁は全国に広まりましたが、特に夏の暑さが厳しい宮崎県でよく食べられるようになりました。
 いまや日常的であり、他地方でも食される料理です。

鶏飯

 ご飯をお椀に盛り、鶏肉、錦糸卵、甘辛く煮たシイタケ、パパイヤの漬け物を盛りつけ、鶏のだし汁をかけて食す、奄美群島の郷土料理です。地域によってはパパイヤの漬け物の代わりに紅しょうがやたくあんなどを用いることもあります。
 手の込んだ料理の発祥は、400年ほど前の藩政時代に奄美の人々が薩摩藩をもてなす料理としてつくったと伝わります。当時は炊き込みご飯でしたが、戦後アレンジされ現在の形となりました。現在は学校給食においても人気の一品です。

きびなご料理

 キビナゴとはイワシ科の8cm程の小魚です。その姿の美しさから「海の宝石」とよばれることもあります。酢みそで食す刺身、塩焼や天ぷら、煮付け、揚げ物、汁物など、様々な調理方法で味わうことができます。中でも、菊の花をかたどって盛りつけられる刺身「菊花造り」は、鹿児島県の郷土料理を語る上では欠かせないもてなし料理。
 鹿児島近海でキビナゴが多く水揚げされることから、当地で多くのきびなご料理が根付いたとされます。
 地域によって料理方法は様々で、枕崎や種子島ではすき焼きにキビナゴを入れるなど、産地ならではの調理法が多様にあります。

つけあげ

 魚のすり身と野菜を使った揚げ物料理です。
 琉球(現在の沖縄県)に魚肉のすり身で作るチキアギという揚げ物料理があり、江戸時代にこの料理が薩摩に伝わったのがつけあげの発祥といわれています。鹿児島県でよく食されていることから、「さつまあげ」とも呼ばれています。鹿児島県近海では、イワシやトビウオ、エソなどの様々な魚が水揚げされることから、種類豊富なつけあげが作られています。
 現在では鹿児島県を代表する郷土料理として、全国各地で食されています。