ひろしまブランドショップ「TAU」

アンテナショップの2大巨頭の一角を崩した
ひろしまブランドショップ「TAU」の躍進

「売れているからいい、ではない」。決してブレない“売り上げ以上に大切なこと”

 「TAU」は売り上げを順調に伸ばしている間にも、さまざまな変革を行っている。1階に広島市の名物「汁なし担々麵」のイートインスペースと、鮮魚店をつくった。2階の日本酒試飲コーナーでは、1階の鮮魚店で買った刺し身をつまみにできるような連携も行われている。
 変化し続ける理由を、村上さんは「売れているからいい、ではないと思っています。開店当初から肝に銘じているのは、『TAU』はただ買ったり食べたりするところではないということ。ここで“新しい物を知って、体験して、広島に興味を持ってもらい、現地に行っていただく”のが目的ですから、そのコンセプトに沿ってどんどん店の内容を高めていきたい」。売り上げを伸ばす以上の目的が、いつも明確になっている。

店内でもひときわ目立つ1階の鮮魚店

  • 販売する鮮魚は店内でさばかれる

  • さばかれた鮮魚は2階のイートインで地酒とともに食せる

「TAU」の躍進を支えるのは「One team(ワン・チーム)」

 「たくさんの方に助けていただいて今の『TAU』があります」と村上さんは言う。若くして店長に就任した村上さんには、多方面からアドバイスが降り注いだ。何から手を付けていいかわからないほどの大量の意見の中から、良いと思ったものを次々に試したそうだ。その経験から強力な人間関係も生まれた。
 最も特徴的なのが、広島県との関係だろう。「TAU」の運営は村上さんの会社が委託されているが、予算や運営方針は広島県が決定している。「ほかのアンテナショップの店長に羨ましがられるほど、県の担当の方々が積極的に運営に協力してくださいます」と村上さん。月1回、広島県の担当者と村上さん、さらにショップの部門長が集まって運営ミーティングを行い、意見を交換し合う。
 けれど、最初からスムーズな関係性があったわけではない。経営戦略や運営方針について、激しい口調で意見交換を行うこともあった。「TAU」をより良くするための真剣な意見交換がいつしかチームワークを生み、流行の言葉を使えば「One team」になったのだ。

「いい商品は売れる」を実感。「TAU」をきっかけに全国に羽ばたいて

 「広島レモン©」や「イカ天瀬戸内れもん味」など「TAU」がきっかけで知名度が上がった商品は多い。集客だけでなく、県産品の魅力を引き出すのもアンテナショップの大きな役割だ。お客様の声を聞いてそれをメーカーにフィードバックすることで、商品がブラッシュアップされる。地元だけで愛されていた「だし道楽」や「保命酒のど飴」など東京では無名の商品も好評を得ていることから、村上さんは「いい商品は売れる」を実感しているという。
 今後の「TAU」についてうかがうと、「2020年は東京オリンピックが開催され、外国人観光客が増えることが予想されます。外国人観光客にもアピールしたい」とのこと。進化を続ける「TAU」から目が離せない。

  • 「TAU」でうまれたヒット商品
    「レモンケーキ」などの「広島レモン」関連商品

  • 同じくヒット商品「イカ天瀬戸内れもん味」

(文・写真)中元 千恵子
(取材協力)風土47編集部
(取材日)2019年12月吉日

【参考】
ひろしまブランドショップ「TAU」
https://www.tau-hiroshima.jp/