住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

清水さん


氏名

清水 ひな子さん(しみず・ひなこ)
所属 株式会社鴻池組 土木事業総轄本部 環境エンジニアリング本部 環境イノベーション部
プロフィール 福岡県久留米市生まれ。化学を環境に活かす興味から大学は環境化学科で学ぶ。2021年株式会社鴻池組に入社。鉄道高架橋の構築工事現場での仕事を経て2023年より現職。小水力発電、バイオマス発電といった再生可能エネルギー分野の営業開発を担当。主に小水力発電の分野で、調査、計画などの初期段階から発電運用までのトータルコーディネート業務を担っている。2025年1月に「地方創生カレッジin高知県四万十町」に参加した。

地元の方と協調し、地産地消のエネルギーの力でお役に立ちたい

NEW! 2025.03.28公開 
 

株式会社鴻池組で再生可能エネルギーとしての小水力発電の業務に携わる清水ひな子さんは、2025年1月に開催された「わかりやすい・使いやすい・暮らしやすいDX」をテーマとした「地方創生カレッジin高知県四万十町 最先端の田舎暮らしへ~」に参加しました。小水力発電というエネルギーの地産地消を通じた地域活性化に向けた思いや、地方創生カレッジで学んだことなどについて、お話をうかがいました。

 

目標は電力の地産地消をしながら地域を活性化していくこと

──清水さんは建設会社で小水力発電、バイオマス発電といった再生可能エネルギーの普及に携わっているのですね。「地方創生カレッジin高知県四万十町」に参加されたきっかけは?

清水:現在私が担当しているのは小水力発電の分野で、現地調査、計画など事業の初期段階から発電の運用とまでのトータルコーディネートをしております。当社の小水力発電事業は、投資や収益を目的とした大規模エネルギー開発ではなく、過疎化が進む離島などの地域に小規模な発電設備を設置・運用して電力供給する、小規模分散型のエネルギー開発です。目標は、地域資源を活用し新たなエネルギー資源を生み出すことで地域の活性化につなげていくこと。そのためには地元の方と一緒になって取組みを進めていくことが一番大切なので、地方の課題を見つけ、それをどう解決していくかを学ぶために所属部署から毎年1人、地方創生カレッジに参加しています。


──ワークショップ前に受講された、地方創生カレッジのeラーニング講座はいかがでしたか。

清水:今回の四万十町でのワークショップのテーマは、「最先端の田舎暮らしへ~わかりやすい・使いやすい・暮らしやすいDX」でした。今会社としてもDXに取り組んでいるところなのですが、地方創生とDXがなかなか結びつかないところがあります。eラーニングで受講した「住民と行政のUXを変えるデジタル窓口改革・自治体DX事例」では、どういった形で地方創生とDXをからめていくかを実例を見ながら知ることができ、業務のヒントになることがたくさんありました。また、eラーニングによってワークショップでの学習にスムーズに入ることができたと思います。
項目に分けて一つ一つ丁寧に解説してくださっているのが非常にありがたかったです。スライドをダウンロードができるのもいいですね。あとから資料を見返すことができるのでとても便利でした。


地方で事業を展開するには地元の方とのコミュニケーションが重要

──現地での1日目、座学はいかがでしたか。

清水:東海大学の小林先生が「自治体におけるDX推進のポイント」というタイトルで、限られた人材や財源を効率的に活用するためのDXの進め方についてお話しくださいました。心に刺さったのが、「組織を本来あるべき姿へと取り戻すことができる」というお言葉。建設会社に身を置くものとして、労働力不足は喫緊の課題で、これを解決しなければ将来的な市場の縮小が懸念されます。生産性の向上といった業務改革をしながらDXを進め、労働者にとって働きやすい環境をつくることが人的資源の確保、ひいては企業の魅力、業界の活性化にもつながるのではないかと実感しました。DXの推進によってあるべき姿を取り戻す、という力強い言葉は、私の今後の指針のひとつとなりそうです。


──次なるトークセッションのテーマは「日高村まるごとデジタル化」でした。

清水:実際に高知県四万十町でDXを推し進めた四万十町役場の坂本さんがドローンを活用して地域のプロモーション、鳥獣被害対策、人命救助などに取り組まれたお話をしてくださいました。我々建設業界も現場の安全性や効率化の進化を図り、ドローンをはじめ、人の代わりに現場を巡回する四足歩行ロボットや遠隔操作が可能なタワークレーンのシステムなどといったデジタルツールを積極的に活用しながら建設プロセスにおけるイノベーションを進めていきたいと考えているため、参考になった点が多くありました。また、えれ株式会社の安岡さんは、地元説明会の実施に際し、地域の方々にご理解いただけるまで何度も何度も足を運んだとのこと。今回お話をいただいたお二方とも「地域の方々とのコミュニケーションを大事にしましょう」とお話されていたことにとても共感しました。我々も地方で事業を進める際には実際に現地に足を運んで地域の雰囲気を感じ取り、できる限り対面で地元の方々とコミュニケーションをとることで、その地域の生の声を大事にしたいと考えています。


──地元の理解を得るには、苦労もあるでしょうね。

清水:特に小水力発電は河川などの水を利用して発電を行うため、取水区間の減水が避けられず、魚の収量や生態系にまったく影響しないということにはなりません。できる限り河川の維持流量を確保し、地元の皆様に納得いただける形で事業を進められるよう、地域の方々や漁業組合さんと話し合って折り合いをつけていくのはいつも大きな課題です。


──2日目のフィールドワークでは、ドローンの活用を体験されたのですね。

清水:ドローンに触るのは初めてで、コンパクトで軽いことに驚きました。ドローンで撮った映像には、人の目では見ることのできない視点があります。日高村役場の坂本さんから人命救助に活用しているというお話がありましたが、その意味がよくわかりました。小水力発電の事業でも現場視察は欠かせませんが、夏場ですと草が生い茂っているなどで立ち入れない場所があるんです。ドローンがあればどんなところでもいろいろな角度から見ることができ、現地の視察・調査が楽に、正確になると思います。


──清水さんたちのグループのテーマは?

清水:「ドローンとともに生きる町四万十町」です。まず、地域経済分析システム「RESAS」のデータを活用して課題を見つけました。注目したのは、人口減少と高齢化です。また人口減少の背景には南海トラフ巨大地震のリスク回避によって企業誘致が進みづらいという問題があるのではといった意見も出ました。そうした考えから、現在四万十町で取り組んでいるドローンの活用をさらに進め、四万十町の立地、地形を紹介するPR動画を作ったり、上空から現場点検などをして防災学習にも力を入れたりといった対策をまとめ、発表させていただきました。四万十町役場の坂本さんからは、地形、立地の紹介動画はぜひ作りたいというフィードバックをいただきました。今回のグループワークのメンバー5名は異業種で、それぞれ視点が異なっていて多様な意見が出てとても参考になりました。貴重な体験でした。
また何かを訴えるためには客観的なデータというものが不可欠です。「RESAS」については今回初めて利用しましたが、今後はこうした便利なシステムと地域の生の声の両方をうまく活用しながら効率的に情報収集を行い、地域の現状や課題について考えていきたいと感じました。

何より大事なのは現地の方の地域活性化への思いの強さ

──鴻池組の小水力発電所は、現在どの地域で稼働しているのですか?

清水:島根半島の北東約80km海上にある隠岐諸島・道後島の隠岐の島町に1つ、兵庫県に2つ(香美町と神戸市東灘区)を稼働しています。隠岐の島町には年内にもう1つ増える予定です。香美町の発電所については地元の方々の「小水力発電事業で地域を活性化させたい」という思いを受けて興した事業です。


兵庫県香美町にある小長辿発電所

兵庫県香美町にある小長辿発電所

──地域からの要請で事業が始まることもあるのですね。

清水:そういった事例もありますし、小水力発電専門のコンサルタントからご提案をいただいた候補地と我々がやりたいという思いが合致して始まることもあります。いずれにしても事業を進めるのは、地元の方の賛同や協力があってこそです。水力発電には様々な業界の事業者が参入していますので、先行事業者がいる場合は我々が無理やり入っていくことはしません。いろいろな条件がそろって初めて進められるもので、断念せざるを得ない場合も多々あります。小水力発電事業は運転開始から20年、30年と長期に渡って続くプロジェクトのため、地域の特性や環境はもちろん、何よりもその地域に住んでいる方々の思いを大切にしたいという考えを常に持っています。中には開発に対してネガティブな地域もありますが、運転開始後には地元の方々から「発電所ができて良かった」と思っていただけるような魅力的な事業になるよう、これからも地道に取組みを続けていきます。


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現場でデジタルツールを活用する様子
(中央が清水さん)


離島での生活で地方の価値を実感。地方活性化をテーマにし続けたい

──小水力発電事業を通して地方との関わりを持った清水さんにとって、地方創生というテーマは今後どんなものになっていきそうですか?

清水:隠岐の島町では古民家を改装した宿舎兼事務所があり、我々の部署では大阪と隠岐の島町を行ったり来たりし、1か月くらい逗留することもあります。敷地内に作った畑で野菜を育て、近所の方々と一緒に収穫したり、漁業者さんが持ってきてくださる魚やカニと野菜を交換したり、地元の祭りに参加したりといった地域の方々との交流も楽しみの一つです。ときには社員がお隣のお宅の障子を貼り換えたりすることも。地元の方との生活を楽しみながら地域密着型の取組みを進めています。


──古民家に常駐して物々交換とは。地元の方との関係の近さを感じます。

清水:ふだんの大阪での暮らしは何でもすぐに手に入る快適さはありますが、離島ならではののどかさ、自給自足の豊かさ、人とのつながりの温かさ…隠岐の島町での生活で、地方でしか得られないものの価値を知りました。しかし実際には地方には空き家が多く、世帯数も人口もどんどん減少しています。我々が地方で事業を行う際には、発電所の施工は地元の建設事業者様にお願いし、発電開始後の維持管理も地元の方に依頼しています。また地元に合同会社を立ち上げて地域の雇用を増やす取組みも進めておりまして、地方の雇用創生に対して少しでもお役に立ちたいと思っています。それから、発電所を作ることによって視察者も大勢来られるので、たくさんの方々に足を運んで宿泊してもらい、地域の魅力を知ってもらうこともつながるのではと。微力ながら事業を通して地方創生に貢献していけたらと思っておりますし、地方創生という課題には建設会社としてこれからも関心を持ち続けます。私自身地方出身者ですので、自分の町だったら?という視点を大事に、このテーマに今後も向き合っていきたいと思っております。


──日本にはまだ再生可能エネルギーのポテンシャルはありますか?

清水:あります!今ある地域資源を活用して新しいエネルギーを生み出せるように、地元の方のご協力をいただきながら、今後も積極的に事業の幅を広げていけたらと思っています。今回、行政と民間企業が連携してDXを進めていくことの大切さを学びましたので、今後は行政から「民間の力を活用したい」という思いをもっともっと引き出せるよう、我々にしかない技術とノウハウをさらに身につけ、企業としての魅力を高めていきたいです。


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清水さん

清水 ひな子さん
(しみず・ひなこ)

株式会社鴻池組 土木事業総轄本部 環境エンジニアリング本部 環境イノベーション部

[プロフィール]
福岡県久留米市生まれ。化学を環境に活かす興味から大学は環境化学科で学ぶ。2021年株式会社鴻池組に入社。鉄道高架橋の構築工事現場での仕事を経て2023年より現職。小水力発電、バイオマス発電といった再生可能エネルギー分野の営業開発を担当。主に小水力発電の分野で、調査、計画などの初期段階から発電運用までのトータルコーディネート業務を担っている。2025年1月に「地方創生カレッジin高知県四万十町」に参加した。

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