地方創生「連携・交流ひろば」 | 地方創生のノウハウ共有掲示板と実践事例紹介全国で活躍する地方創生専門人材-学びと実践の事例-専門人材23:町の活性を自分事として捉えられるかがカギ/青写真を描いたうえで協力をあおぐアプローチも重要

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

青木さん


氏名

青木 啓さん(あおき・ひろし)
所属 小樽商科大学商学部夜間主コース1年
プロフィール 1980年北海道小樽市生まれ。小樽商科大学夜間主コースに在学中。札幌、東京、シンガポールで美容師として働いた後、2020年から札幌で美容師と兼業でBtoCのECビジネスを起業。いったんビジネスを終了しフリーランスで美容師として働きながら次なる起業のための自己研鑽、情報収集を兼ねて2024年、社会人学生として小樽商科大学に入学。小樽商科大学では地方創生カレッジと連携した大津晶教授の「本気(マジ)プロ」を受講し、そこで地方創生カレッジのeラーニングを体験した。

町の活性を自分事として捉えられるかがカギ/青写真を描いたうえで協力をあおぐアプローチも重要

NEW! 2025.03.19公開 
 

美容師をしながら、日本と海外の橋渡しになるようなビジネスを試行してきた青木啓さん。40代になって社会人入学した小樽商科大学で、地方創生をテーマにした大津教授の実践型授業「本気(マジ)プロ」を受講しました。2024年度は地方創生カレッジとのコラボで、小樽郊外の朝里川温泉を舞台に「アドベンチャートラベル」の拠点創出がテーマ。青木さんのチームは「人材育成」に注目し、地元町会や観光協会と関わりながら、社会人ならではの目線で地方創生に必要な課題を探りました。

 

地元のことをもっと知って次のビジネスステージへ

──青木さんは、本業は美容師なんですね。

青木:はい。美容師になったのは10代の頃に起こったカリスマ美容師ブームで美容師に憧れたからです。僕はまだ開けていない扉を開けたいタイプで、美容師の仕事も札幌、東京、シンガポールといろいろな場所でしてきましたし、副業で起業も。美容師は仕事を通してさまざまな業界の方とお話できる環境にあり、シンガポールにいたときは共感し合えるシンガポリアンと出会って、日本のものを輸入して現地で売ったりしていました。そもそも海外が好きで、若い頃、世界一周クルーズに参加したこともあります。海外と日本を橋渡しできるような仕事をやりたいという気持ちがベースにあるんです。


──その後本格的に起業された?

青木:6年前に札幌に帰って、美容師をしながら、北海道のよいものを東南アジアや台湾のオンラインマーケットプレイスで販売し始めました。でも、コロナもあってうまくいかなくなったんです。仕切り直そうと美容師一本で仕事をしながら次なるプランを考えていたんですが、これというアイデアが浮かばずにいたとき、たまたま美容室の高校生のお客さんから、小樽商科大学(以下商大)の入試に社会人枠があるという話を聞いたんです。


──それが学び直しのきっかけに。

青木:「商大で学び直す!」と気構えて受験したわけではなく、学校という場に、僕が見たかったものが網羅されていて、広く学べるというメリットを感じたからです。必要なことを学ぶというのは、起業したとき会計の知識を得るために「簿記」を学ぶといったように当たり前のようにしてきたので、今後の方向性を見つめるために商大で学んでいるという感じです。
日本の製品はポテンシャルも独特の文化ももっている。だから需要はあるのだけれど、日本の問屋で商品を見つけては売ることを繰り返していては、価格競争に巻き込まれて立ち行かなくなってしまったのは当然でした。自分で商品を作るか、もしくは誰も目をつけていない商品を作っているところと提携するか。オリジナル商材を見つけてそれをどう売っていくのか――「何をどうやって?」を学びながら模索しています。


──大津先生の「本気(マジ)プロ」(以下マジプロ)」は、フィールドワークを通じて地域社会における具体的な政策課題の理解を深める取り組みで、2008年から行われている授業なのですね。受講した理由は何だったのでしょう? 地方創生にも関心があったのですか。

青木:マジプロは、商大を調べていたときに目が留まったんですが、そのときはまずは受験してみようという気持ちが先行していたので、受講を決めたのは入学後です。
もう一度ビジネスのネタを探すにあたって、今後は日本の魅力的な製品に付加価値をつけて売っていかなければいけないし、そのためには日本のこと、地元のことをもっと知らなくてはと、改めて思ったんです。自分の住んでいる地域だから特色やアピールポイントは知っていますけど、実際住人が地域のことをどういうふうに思っているのか、何に誇りを感じているのかなどを知らなければと。僕に足りなかったのは包括的に捉えていくことだと感じていたところに、マジプロという選択肢が現れた。日本全国や北海道全体を見ていく過程として、まず地域の課題に向き合うことが、ビジネスアイデアのなんらかの材料にはなるだろうなと見立てたんです。


──2024年度夏期のマジプロのテーマは「朝里川温泉でのアドベンチャートラベルの可能性」。フィールドワークに先がけて、「インバウンド市場を拓くマーケティング」「DMO概論」「観光地マーケティング」の3つのeラーニング講座を受講したのは、大津先生の指定ですね?

青木:はい。3つとも今回のマジプロを進めるにあたって、前提となる知識として絶対に必要なもので、とてもよい内容でした。
観光地域づくりを推進する法人である「DMO」は、朝里地区でいうと観光協会や温泉組合さんもそうなんですが、そういった認識も講座で初めて得た概念です。eラーニングで基礎や知識をある程度入れ、そのうえで聞きたいことを乗せていったことで、関係者にヒアリングをする際の質問のレベルが上がり、深堀りすることができました。


地域が抱える問題をジブンゴトとして捉えることが地元を元気にするポイント

──マジプロでは「自然資源」「身体活動」「人材育成」など5つのグループに分かれてプラン作りをしたのですね。青木さんが選んだのは「人材育成」。活動してみていかがでしたか。

青木:フィールドワークでは朝里町内会長さんに朝里地区をガイドしてもらいました。大切なストーリーがあるのに、整備もされず地元の人にさえ忘れ去られている場所が結構ありました。光を当てたい場所なのに、ストーリーテラーは少なくなり高齢化しています。地域活性にはそういった人材の確保・育成が必須だと観光協会の方もおっしゃっていたし、これは朝里に限らずどの地方自治体にとっても喫緊の課題です。
僕たちのグループは、人材育成には短期・長期の両方の視点が大事だと考え、小学生を対象にしたガイドの疑似体験ツアーも行いました。子どもを巻き込むと子どもの口から保護者に感想が語られ、活動の内容が伝わると思い、保護者の年代層を意識したんです。

朝里町会事務所にて朝里町会長の前川さんに地形や成り立ちについて資料の説明を受けているところ.jpg

朝里町会事務所にて朝里町会長の前川さんに地形や成り立ちについて資料の説明を受けているところ(中央が青木さん)


──地域への意識を継承させるということですね。

青木:ほかにもアイデアの提案はしましたが、温泉組合や町会の方に「具体的にやりましょうよ」と、もう一押ししたかったというのが反省点です。ただ、人材育成への問題意識は皆さんもっていても、実際誰かが旗振り役にならなければ進まないということがあるんですよね。
自分に置き換えて考えても、住まいは札幌で家族もいて地域活性の中心人物になるのは難しい。同じチームの学生たちも、意欲はあっても生活の中心に活動を据えるのはまず無理でしょう。やはり地元の方で旗振り役が必要というのは、マジプロの発表会で温泉組合の組合長さんも主張してくださってとてもうれしかったんですが、時間はかかるし目先の利益にはならないものに継続的なアプローチをするのは困難です。
会社を経営している知人がヒントをくれました。あと一歩踏み出せば形になるくらいの具体的な絵を描いて、根回しまでしたプレゼンテーションをすれば、当事者の方に前向きになってもらえるのでは?と。そのつもりの発表ではあったんですけど、今一歩足りなかったなというのも反省点です。

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発表会でプランを発表する様子(中央が青木さん)


──新たな気づきもあったマジプロの取り組み。青木さんにとって地方創生の意味は変化しましたか?

青木:これからも日本の中で眠っているもの、地元の人が忘れていても他の地方の人には価値があるもの、海外の人から見たときに価値のあるものを掘り当てる活動はしていきたいと思っているので、地方創生は大学在学中だけではなく、しばらく僕のテーマになりそうです。
どんな人でも自身の生活の流れの延長に、地方創生という目線をもつことはできると思うんですよね。自分の住んでいる地域が抱える問題を、対岸の火事ではなくどれだけジブンゴトとしてとらえられるか。それが地元を元気にできるかどうかのポイントになりそうです。


勉強はやったぶんだけ自分に返ってくる。今、学ぶことがすごく楽しい

──今後の展望は? 地方創生カレッジのeラーニングにリクエストがあれば。

青木:今回eラーニングで学んだことはフィールドワークに深みをもたせてくれ、アドベンチャートラベルというテーマの解像度をぐんと上げてくれました。今後も地方創生カレッジを含め、使えるリソースはなんでも使ってビジネスのアイデアを洗練させていけたたらと思っています。
地方創生カレッジのeラーニングは、ツールとしての有用性が高く内容的にも面白かったんですが、もう少し一般的なキーワードで講座検索ができたらいいですよね。例えば今回僕が受けた「DMO概論」は、観光地を活性化させたい人にお勧めなんですが、これから学ぼうとしている人は「DMO」というワードでは検索しませんよね。「EC」「お土産」「特産品」などのワードでも、横断的に学べるコースがピックアップされたら使いやすいのではないかと思います。あとは、外国のオンライン講座のように、単元が終わるとポジティブな声をかけてくれたりするのはどうでしょう。続ける意欲やモチベーションアップにつながるのではないでしょうか。

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発表後は地域の方々との意見交換と交流が行われた(左から二番目が青木さん)


──ありがとうございます。最後に、学び直しをしたい社会人の方に皆さんへアドバイスがあればお聞かせください。

青木:大学に通い始めたんだよと人に話すと、「うらやましい」という感想を多くもらいます。大人になると学ぶ意欲は高まるようですね。でも忙しくて時間がないし、通学で学ぼうとするとその分収入に影響するから、あと一歩を踏みだせないという人も多いと思います。そんなとき、地方創生カレッジのような空き時間を利用して低コストで受けられるオンライン講座ならすぐに始められますよね。何か新しいことやりたいという気持ちとフィットする講座を見つけられたら、学び直しの最初の一歩になるのではないでしょうか。
起業がうまくいかなかったから思うんですが、ビジネスって努力が必ずしも報われるわけじゃないけれど、勉強は必ずやったぶんだけ自分に返ってきます。いいですね、勉強って。今、学ぶことがすごく楽しいです。

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青木 啓さん
(あおき・ひろし)

小樽商科大学商学部夜間主コース1年

[プロフィール]
1980年北海道小樽市生まれ。小樽商科大学夜間主コースに在学中。札幌、東京、シンガポールで美容師として働いた後、2020年から札幌で美容師と兼業でBtoCのECビジネスを起業。いったんビジネスを終了しフリーランスで美容師として働きながら次なる起業のための自己研鑽、情報収集を兼ねて2024年、社会人学生として小樽商科大学に入学。小樽商科大学では地方創生カレッジと連携した大津晶教授の「本気(マジ)プロ」を受講し、そこで地方創生カレッジのeラーニングを体験した。

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