住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

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氏名

越後 雄太さん(えちご・ゆうた)
所属

達信用金庫 地域経営支援室

アグリサポート担当

プロフィール 北海道札幌市生まれ。2012年伊達信用金庫に入庫。複数の営業店で渉外担当として融資、商品の提案などの業務にあたる。2019年に現在の部署に異動し、農業者の所得向上に向けた施策、地域商社の営業責任者として事業者支援に携わったのち、スマート農業の導入に取り組み、農業者の収益基盤の拡大に力を注ぐ。

ICTを活用した地域農業支援を通じて農業者の収益基盤拡大を支援

NEW! 2024.03.29公開 
 

 

メリットを伝えるだけではダメ。
農家さんの意識が変わるように一歩ずつ

──伊達信用金庫が進めるICTを活用した地域農業支援の取り組みは、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が発表した「令和4年度 地方創生に資する金融機関等の『特徴的な取組事例』」に選ばれました。地方創生カレッジでは地方創生に取り組んでいくためのヒントとして主に金融機関職員の方向けに「地方創生に資する金融機関等の『特徴的な取組事例』」を紹介するeラーニング講座を年度ごと制作してきました。越後さんが地方創生カレッジを受講するようになったきっかけを教えてください。


越後:受講のきっかけは地方創生カレッジの講座で当金庫の取り組み「ICTを活用した地域農業支援~アグリテックを活用した所得向上プロジェクト~」を紹介させていただくにあたって、eラーニングの仕組みや内容を勉強するためでした。
受講した講座では金融機関が専門機関と連携しながら課題解決のための支援をしていく事例が多く紹介されていました。講座を通じて連携先を複数持つことによって、「幅広いメニューで行う」、「オーダーメイドで行う」、「初めての領域にチャレンジする」など様々なアプローチが生まれること知ることができました。我々は専門人材と連携しながらクイックに対応するスタンスで取り組んでいましたので、自分たちの現状を認識することができ、進むべき道に確信を持つことができました。




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伊達信用金庫の取り組みは、eラーニング講座 No.200『地方創生に資する金融機関等の「特徴的な取組事例」(令和4年度)』 で詳しく紹介している。



寄り添いながら客観的に、できる限りのことをする

──支援を行っていくうえで大事にしていることを教えてください。


越後:日々大事にしているのは、どこまで一緒にやるかというラインを決めることです。我々がいくらよい情報を伝えても、最終的に意思決定をするのは農家さんです。「馬を水辺に連れていくことはできても水を飲ませることはできない」という言葉のとおり、我々は水を飲んでいただく工夫はたくさんしたいと考えていますが、客観的な視点を持って日々緊張感を持ちながら、うまくいくかどうかを見ています。


──実証実験では各作物の収量アップ、それに働き手不足という点も改善され、資金調達しやすくなったという好循環が生まれました。農業者からはどういった声がありましたか。


越後:よい感触で受け止めていただき、自分の弱点や課題がより明確になったというお話をいただきます。まだ導入していない農家さんの意識変化にもつながっているようです。「長年父親のやり方を見てきたけれど、もしかしてそのやり方はよくなかったのか?」と率直な相談を受けるケースが出てきました。一つの対策として環境制御のお話をさせていただきます。「まずは農作地の1/3で試験的にやってみませんか?」とご提案して、変化を実感していただけたら次のステップに移ります。農業は時間がかかる仕事で、毎日目に見える形で加速度的に変化するということはありませんが、結果が見えればだんだん「父親を説得してみたい」という気持ちになってきます。あせらず、納得していただきながらよい循環をつくっていくというやり方がよかったと思います。


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これまでの取り組みの成果を発表する越後さん

eラーニングから最新情報を学び、適切な支援を続けていきたい

──越後さんはこれまでに10以上のeラーニング講座を受講されています。今後地方創生カレッジでどのような学びを深めたいですか。


越後:販路支援と技術支援は両輪なので、収量が増えれば今後は新しい販路を求めていく必要があるでしょう。これからは販路支援もしっかりしなければいけないというのが課題です。一つ一つのアイテムに付加価値やストーリーをつけて販売することも大事ですし、フィット感を持って他と連携しながらやるべき取り組みだと考えています。そういったことが学べる講座を受講したいし、同業者や地域の事業者さんなどにもおすすめしていきたいです。


──スマート農業などの事例を通じて農林水産・食関連の分野におけるデジタルの力を利活用した地域課題解決のノウハウを学べる講座が2024年3月に開講しました。


越後:ぜひ受講したいです。作る・売るのバランスがいかに大事かは、農業の現場にいればいるほど感じます。情報がまったく入らないことで農家さんが「孤立して作る人」にならないように、情報がクイックに入っていく仕組みを金融機関が主体となって築いていくことも大切な方向性の一つだと思っています。今後は、技術支援、販路支援、金融支援、課題解決支援などいろいろなスキームから必要な支援を選んでいただくような施策を考えていきたいと思っています。


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本講座の詳細は、eラーニング講座 No.205『【冬のDigi田甲子園事例から紐解くデジタル利活用による地方創生 分野別編(農林水産・食関連)】「スマート第一次産業」が導く可能性』からご覧ください。



──地方創生カレッジへの期待や要望を教えてください。


越後:農業現場のフィールドに立って農家さんと会話をし、困っていることを伺うだけでなく、栽培するところに入って作業をして実感する、3、4か月後の収穫期に結果が出てともに喜ぶというように、汗をかいて農家さんとここまでやってきました。現場を肌で感じることで培われた部分がとても大切だったので、地方創生カレッジでも座学と現場でのフィールドワークなどがリンクできるような学びができたら、より一層生きた学習になると思います。
今後は、農業研修センターの営農検証業務を地域農業者とともに受託し、伊達市で農業を目指す人が研修を受けられる体制づくりをコンサルタントとして支援していきます。農業研修センターは、我々が以前から取り組んでいた環境制御機械を導入した施設なので知見を活かして地域農業の発展に貢献したいと考えています。日本の各地で農業人口は減っているので、このような取り組みは全国どこでもできるのではないでしょうか。さきほどの新たに開講する講座などを研修のカリキュラムに紐づけして受けてもらえたら、とても有意義ですよね。


大切なのは、一人ひとりの心のありよう

──越後さんはもともと社会貢献への意識が高かったのですか。


越後:社会貢献を意識しだしたのは今の農業支援の業務に携わるようになってからです。当初、農業支援は事業者支援の一つのメニューだととらえていましたが、今では金融機関だからできる社会貢献だという高い意識を持つようになりました。金融機関の立場だと他の組織ではなかなか入り込めない現場への支援を行っていく場面があります。地域に不足しているリソースや役割を我々が補完するという意味もあるし、農家さんにも喜んでいただけるやりがいのある取り組みだと思っています。


──札幌出身の越後さんにとって伊達市での生活そのものが地方創生とつながっていそうです。


越後:大学の卓球部OBとのご縁で伊達市に住んで働くようになり、家庭を持ちました。あと何年かすると生まれ育った札幌よりこちらでの生活のほうが長くなります。伊達市を含む西胆振地域は、寒さが厳しい北海道の中では降雪量が少なく、お正月でも自転車で走ることができる。「北海道の湘南」と私たち地元住民は言っています。これからも地域の特徴を活かした支援を続けていきたいです。
我々金融機関が事業者支援をすること自体が一つの地方創生の姿だと思っています。私は特にわかりやすい部門に配属されたので、「地方創生に取り組んでいます」とはっきりと言えるかもしれませんが、どんな産業に関わっていても、どんな仕事でも、「地域課題を解決している」「地方創生に取り組んでいる」ととらえていいと思います。そうした心のありようで仕事に取り組めるかどうかが地方創生を進める上で大事なのではないでしょうか。


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越後 雄太さん
(えちご・ゆうた)

伊達信用金庫 地域経営支援室
アグリサポート担当

[プロフィール]
北海道札幌市生まれ。2012年伊達信用金庫に入庫。複数の営業店で渉外担当として融資、商品の提案などの業務にあたる。2019年に現在の部署に異動し、農業者の所得向上に向けた施策、地域商社の営業責任者として事業者支援に携わったのち、スマート農業の導入に取り組み、農業者の収益基盤の拡大に力を注ぐ。

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