住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり
住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり
氏名 |
小橋 奈月さん(こばし・なつき) |
所属 | 法政大学キャリアデザイン学部1年 |
プロフィール | 埼玉県さいたま市出身。共立女子高等学校を経て、現在は法政大学キャリアデザイン学部在学中。日本各地への家族旅行の経験から、それぞれの土地の文化や風土の違いに関心を持つ。高校生のとき、総合的な学習・探究の時間で進路について調べるなかで「まちづくり」のワードにひかれ、将来の仕事に結び付けたいと思いキャリアデザイン学部に進学。今回のプロジェクトでは、現地の人と直接関わって意見を聞きながら地域の魅力を活かす力になっていきたいという思いを新たにした。 |
フィールドワークは自分を成長させてくれる/現地で人と話して魅力を活かすまちづくりをしていきたい
NEW! 2024.03.27公開
白馬バレー(長野県北安曇郡白馬村・小谷村)において現地が抱える課題を解決するためにフィールドワークを重ねて施策を発表するプロジェクト、「学生が主役の地方創生プロジェクトin白馬バレー」。まちづくりを自身のキャリアのテーマにしたいと考えている法政大学1年の小橋奈月さんは、現地で見て話して感じることの大切さを改めて痛感したようです。
「地方のいいところを知ってもらいたい」という気持ちが原点
──ご両親がいろいろな土地に連れていってくれたことが、小橋さんの「まちづくり」への関心の根っこになっているのですね。
小橋:はい。ずっと関東に住んでいるのですが、両親がそれぞれの出身地をはじめいろいろな土地に連れていってくれ、だんだんと自分がいま住んでいるところと地方との違いを感じるようになりました。「日本にはいいところがこんなにたくさんあるのにまだまだ知られていないことが多い」という思いの積み重ねが、今の自分につながっているように思います。「まちづくり」には教育、経済、社会学などいろいろな観点からのアプローチがあります。今は、自分がどのアプローチからからまちづくりをしていきたいかを模索しているところです。
──今回のプロジェクトは、2024年1月のキックオフに始まり、地方創生カレッジのeラーニングで学びながら現地でフィールドワークを行いました。その後大学に戻り3回のグループワークを経て再び現地でのフィールドワーク、そして最終発表会となかなか濃密な1か月半でした。参加のきっかけを教えてください。
小橋:このプロジェクトの前に、大学主催の島根県松江市を対象地とした地方創生に関するプログラムに参加しました。自治体から示されたテーマに対して地域活性化につながるプランを企画・提案するもので、やはりフィールドワークやグループワークが組み込まれていました。実際に地元でいろいろな取り組みをしている方とお話ししてみると、魅力のある町なのに発信方法がわからないという方もいれば、何がこの土地ならではの魅力なのかがわからないという方もいた。その土地について知ることはとてもおもしろかったのですが、松江のよさを発信してどのように魅力的に感じてもらうかというところで行き詰まってしまいました。今回の白馬バレーのプロジェクトは施策まで構築する一層本格的なものだったので、松江での反省点を活かしたいと思って参加しました。
──松江での経験は活かせましたか?
小橋:想像していたよりも難しかったです。自分がこうしたいという理想はあっても、どうしてそうしたいと思ったかという根拠を説明するのが特に難しい。思い付きで提案してもいけないけれど、外からの視点も大事で、そのさじ加減も難しい。
私たちのグループは「雇用と産業」をテーマに取り組みました。過疎化している地域を活性化させるためには、そこで働きたいと思うこと、その地方ならではの産業があることがポイントだと個人的に思っているのでそのテーマに取り組んだのですが、地域の魅力は十分わかっても、それを活かしていくことは大変ですね。
──eラーニングでテーマに即した講座をいくつか受講されました。勉強になったことや、フィールドワークやワークショップで役立った学びはありましたか?
小橋:最初に受講したのは「地方創生の課題と新しい地域振興策」です。講座では人口減少に関する論点がありました。人口減少は悪いことばかりに目が行きがちだけれど、人口減少をチャンスにとらえる考え方を知り、視野が広がりました。
また、フィールドワーク前に民間企業の活動について考える機会があったときは、各メンバーが受講した講座をグループ内で要約して紹介し合ったり、動画を見ながら感想を出し合ったりするなかで、官民連携の「官」のことを何も考えていなかったことに気づかされました。自治体がどれだけ民間企業をサポートしてあげられているかという面も見ていかなければいけないという意識を持つきっかけになり、フィールドワークのときに白馬村と小谷村それぞれの役場で取り組みについて話を伺うときにとても役立ちました。
──地方創生に関する知識を得てからフィールドワークに向かった点がよかったということですね。
小橋:はい。知識があるのとないのでは、アプローチ方法が全く違うと思います。私のグループは3年生と2年生が中心で、1年生は私だけでした。他のメンバーは地方創生に関する知識や、プロジェクトを立てるうえで必要な基本がすでにあって、自分の意見の根拠を論理的に説明されていました。まだ一部の講座はすべて視聴できていないのですが、自分が考えることの根拠につながる知識を増やすために、休日に時間をかけて学びたいと思っています。
フィールドワークでは現地の事業者らと意見を交わしながら施策の検討を進めた
まちづくりへの思いは愛あればこそ。
直接意見をいただけたのがうれしかった!
──現地の方々の「まちづくり」への思いはいかがでしたか?
小橋:「白馬や小谷が好きだから、自分の力でどうにか盛り上げたい」という熱い思いを肌で感じました。そこまでの熱意は愛がなければできないこと。自分が住んでいるところにそこまでの愛着を持てていない私にはとてもうらやましく、率直にすごいなと思いました。
お話を聞いていて、ともかく人手が足りないという意見が切実でした。最初に聞いたときにはただただ人口が少ないだけなのかと思っていたのですが、白馬や小谷は観光業が中心で、必要に応じて雇い入れる形になってしまうので定住人口にはなりにくい。この地域でずっと働きたいとか、愛着をもって再訪するような「関係人口」を増やしていかないと立ち行かなくなるということを強く感じました。
──最終発表会での施策は、そこにポイントを置かれたのですね。
小橋:施策では、「スタディーケーション」という新しい言葉を作りました。大学生が地方に行って、地方で大学のオンライン授業を受けながら、空きコマや休み時間に白馬・小谷で農業など仕事の手伝いをしてみるというもの。もう1つは「インターンシップ」で、白馬・小谷で働いてみて、現地をよく知るという提案です。時間が足りなくてギリギリなんとか仕上げました。
発表会は緊張しすぎてあまり覚えていないのですが、現地の方が、自分たちが考えたプランに興味を持ってくださって直接意見をいただけたというのはうれしかったですね。
──東京の学生さんがわがまちのことを真剣に考えてくれたことが、現地の方たちは何よりうれしかったのでしょう。
小橋:質疑応答では予算に関することや、実現可能性などについて現実的なコメントが多く寄せられました。皆さん私たちの考えたことに本気で向かってくださいました。プロジェクトに参加するまで何も知らなかった地域について施策提言をするのは大変な作業でしたが、とてもいい経験になりました。
最終発表会で地域にむけて施策を発信する小橋さん
地方創生という視点は、自分が成長するきっかけになる
──プロジェクトを通じて新たに得られた気づきはなにがありましたか?
小橋:地域の人の話を聴くこともそうですが、グループメンバーの意見や考え方を理解することの重要性を知りました。もう少しフィールドワーク前にメンバー間でお互いのことをよく知り合えていれば、最初のフィールドワークでのインタビューで、もっと連携して相手の本音に迫ることができたのではないかという場面がありました。その後毎週グループワークがあり、チームで顔を合わせるようになってからはお互いの思っていることがわかってだいぶ進めやすかったです。まちづくりは広い視点が大事だからこそ、チームワークはより大切ですね。
──今回のプロジェクトでまちづくりへの思いに変化はありますか?
小橋:フィールドワークで小谷村役場の方が、私たちの意見に対して「実現の可能性は大いにある」とおっしゃったことが印象に残っています。プロジェクトに取り組んでよかったと思いました。地域の人に意見をぶつけてみて、反応まで見ることができたのは大きな経験になりました。フィールドワークに行く前とは、地域に対する思いが全く違ってきたんです。実際に行くことは本当に大事ですね。
現地に行って実際に働いていたり住んでいたりする人と話して課題や状況を知り、自分の意見を人に伝えていく力は、今回のプロジェクトを通して成長できた部分だと思っています。
地方創生という視点は、自分が成長するきっかけになると思っています。今後もまちづくりには携わっていきたいので、いろいろな地域の声を聴くことができる今回のようなプログラムや、地方でのインターン、NPO法人の動きに興味を持って、参加できるものがあればしていきたいと思います。ただ施策をポンと考えて出すのではなくて、地域に根を下ろしている人の意見を聞きながら、地域の魅力を活かす取り組みをお手伝いしていきたいです。
まずは身近なところから。
なぜ?と関心を持てば風景が違って見える
──小橋さんにとって地方創生の魅力を教えてください。
小橋:白馬バレーでのプロジェクトに参加してから大学の講義でもなんでも「まちづくり」と結びつけて考えるようになりました。例えば再開発されているところなどを見ると「再開発される前は何があったんだろう?」「昔のよさは消えていないかな?」と、ふと思ったりします。そういう気持ちは、誰でも心のなかに持っているものなのかなという気がします。プロジェクトを終えた今もインタビューをした方のその後の取り組みが気になるし、今後どういう発展をしていくか、関心を持って見続けたいという気持ちが生まれました。フィールドワーク前は、長野県のどこにあるのかも知らなかった白馬村と小谷村ですが、今も私の心にあり続けています。
プロジェクトで訪れた白馬村と小谷村での経験が深く心に刻まれたという小橋さん
(写真は白馬村役場に訪問したときの様子。前列右側が小橋さん)
──どういった学生に地方創生への興味を持ってもらいたいですか?
小橋:学生のうちにやりたいことがわからない人にまず興味を持ってもらいたいです。地方創生という言葉にとらわれずに、「何か新しいことをしてみたい」というだけで取り組んでみてもいいかなと思います。最初は大学近辺や家から通える場所に関心を持つことでも、視点を変えて物事を見る面白さを感じられると思います。
いまの知識に自信がなくてもeラーニング講座で必要な知識や情報はしっかり得ることができます。今回のようなプロジェクトなら周りのメンバーや先生から学ぶこともたくさんあります。ちょっとでも面白そうと思ったら、目的は何でもいいのでぜひ挑戦してみてほしいです。
小橋 奈月さん
(こばし・なつき)
法政大学キャリアデザイン学部1年
[プロフィール]
埼玉県さいたま市出身。共立女子高等学校を経て、現在は法政大学キャリアデザイン学部在学中。日本各地への家族旅行の経験から、それぞれの土地の文化や風土の違いに関心を持つ。高校生のとき、総合的な学習・探究の時間で進路について調べるなかで「まちづくり」のワードにひかれ、将来の仕事に結び付けたいと思いキャリアデザイン学部に進学。今回のプロジェクトでは、現地の人と直接関わって意見を聞きながら地域の魅力を活かす力になっていきたいという思いを新たにした。