住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり
住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり
氏名 |
三浦 愛翔さん(みうら・まなと) |
所属 | 秋田県立大学システム科学技術学部3年 |
プロフィール | 秋田県能代市出身。5歳より由利本荘市で育つ。秋田県立本庄高等学校を経て、現在は秋田県立大学システム科学技術学部在学中。地方創生に関心を持ったのは大学の「あきた地域学」(担当教員:経営システム工学科 嶋崎真仁教授)の履修がきっかけ。「あきた地域学」から派生した「あきた地域学アドバンスト」の中で実施された「学生が主役の地方創生プロジェクト」の期間中に就職が内定。地域社会を支えることを目指す会社で、eラーニング講座やワークショップで得た経験を活かしていきたいと、地方創生への思いをふくらませている。 |
ワークショップでの他世代との対話が刺激に/夢物語でもいい。発表してみることが地方創生を自分事にしていく第一歩
NEW! 2024.03.27公開
地方創生カレッジと秋田県立大学が連携した「学生が主役の地方創生プロジェクトin由利本荘」に参加したことで「いろいろな人と交流し、現状の殻を破ることができた」という秋田県立大学3年の三浦愛翔さん。プロジェクトの参加を通じて何が三浦さんに成長をもたらしたのか、お話をうかがいました。
eラーニング講座の受講で、地方創生のテーマが生まれた!
──今回のプロジェクトは、嶋崎真仁先生の授業「あきた地域学アドバンスト」と連携していました。
三浦さんはもともと地方創生に関心はあったのですか。
三浦:この授業は1年時に履修した「あきた地域学」から派生したものです。秋田県立大学は他県出身の学生が多いのですが、15年も由利本荘市に住んでいる自分よりよほど地域のことを考えていて、感化されました。僕も主体的に地域のことを考えていく立場になれたらと思って授業に臨みました。
──まず、ワークショップが行われました。テーマは「“地域の暮らしを楽しくする方策”実現によるこの街の地方創生」。そして「地方創生アイデア発表会」で1分間のプレゼンに参加、という流れですね。ワークショップ参加前には「地方創生カレッジ」のeラーニング講座を受講されました。ワークショップにつながる学びになりましたか?
三浦:受講を指定された講座は、「地域人口推計」と「地域課題解決のためのデータ利活用」の2つです。どちらに講座もワークショップにも役立ちましたし、自分で案を考えること、発表の内容を考えるときにもとても役立ちました。地域人口推計では、地域とのつながりの大切さや、地域に根ざした人口定住の進め方というところに意識が生まれ、プレゼンの内容のベースになりました。特に、都市の住民が農山村に移住する「田園回帰」の話は興味深かった。例えば田園がある地域だったら、田園をみんなで見て回って田園に親しみを持って魅力を知ってもらうということです。僕のプレゼンのテーマは「地域に根付く、“ガイ”を作る」で、商店街を作ることによって地域に親しみを持ってもらうという発想はそこから生まれました。
ワークショップで出た意見をもとにアイデアにまとめあげた(写真は発表内容をグラフィックレコーディングしたもの)
──eラーニング講座で学びながら、地方創生のテーマが生まれたのですね。
三浦:はい。プレゼンにあたっては、ほかの地域ではどんな取り組みをしているかというリサーチが必要で、「地域課題解決のためのデータ利活用」にあったいろいろな地域の事例、たとえば北海道名寄市の「ごみ分別案内 LINE Bot」や、秋田県湯沢市の特別定額給付金対応などが役立ちました。「DXとデザイン思考」も目から鱗の発想でした。便利だと思ういくつかのアイデアをつなぎ合わせて、地方創生やビジネスにつなげて思考していくものです。これは、データのどこに重要性を持って、どのように案を発想するかという学びになり、ワークショップで活かされました。プレゼンでも活かしたかったのですが、まだまだです。プレゼンの機会は社会人になっても多いと思うので、今後も活用していきたいです。
地方創生では多くの視点を持つことが特に大事
──お話をうかがっているとeラーニング講座での学びが、アイデアを生むことだけでなく形にしていくところにも役立ったようですね。ワークショップでは、社会人や高校生とグループでアイデアを出し合いました。
三浦:社会人、高校生、大学生の計6人で話し合ったのはこれまでにない経験で、とても楽しかったです。まず「この地域でワクワクしたり楽しい時」を、次に「暮らしの中でモヤモヤするところ」を出し合い、それを分類して、そこから見えてくる地域の魅力や課題を話し合いました。eラーニング講座で思考したことを、ワークショップで能動的に言語化することによって自分の思いをより認識できたと思うし、今までの自分を思い返しながら課題を見つけて、改善策を思考する経験ができました。
──立場が違えば、視点も変わりますね。
三浦:地域へのモヤモヤやワクワクするポイントは三世代で違っていて、それが地域をよくする糸口になると実感しました。高校生や僕たち大学生は理想を前面に出した案が多くなるんですが、それに対して社会人の方が、「現実的にはこうなんじゃない?」「もうちょっと礎となるような案を考えたほうがいいのでは?」と、大人目線で突っ込んでくれる。ワークショップの前に大学生だけで話すことがあったんですけど、1つアイデアが出たらノリでそのことばかりをずっと話し続けてしまいがちでした。高校生ならではの感覚や、社会人ならではの客観的な視点が入ってくることで、今まで自分が構築してきたことが壊されることもあれば、深みを増すことがあったりして、現状の殻を破ることができました。 人それぞれの感じ方が違うこと、ものの見方、考え方は多様的であるという視点は、地方創生では特に大事なのではないでしょうか。地方創生はいろいろな世代、役割、職業の人が協力して取り組んでいかなければいけないことですから。大学生だけでかたまるのではなく、いろんな世代と関わることで地方創生への意識は変わっていきやすくなると思いました。
時間をかけてもっと地域を深堀りしたい
──「地域に根付く、“ガイ”を作る」が、三浦さんのプレゼンのテーマでしたね。ガイは商店街の「ガイ」?
三浦:商店街、飲み屋街、繁華街など、「ガイ」のつくものを作ろうということです。就職活動で盛岡市に行ったとき、盛岡駅前の商店街は細い車道を挟んでいて、歩いて回れる飲み屋街のようになっていました。こんな「ガイ」が由利本荘市にもあったらいいなと思いました。 由利本荘市にもかつては大きな商店街が2つあったんです。それがさびれてしまったのは、大きな車道をはさんだ商店街で車社会に対応できなかったからではないかと考察しました。駐車場をつくって車道をなくした商店街にすれば車社会に対応でき、「ガイ」が人でにぎわうのではないかとひらめきました。テーマが確かなものになったのは、ワークショップでのディスカッションのときです。総体的に地域を盛り上げていく案がいくつも出ましたが、地域に根付いて持続的に存在していく商店街があれば、それらの案の礎になるのではないかなと気づかされたからです。
学びや気づきをアイデアとしてまとめ上げ、発表会では参加者にむけて1分間でプレゼンテーションを行った
──ワークショップから発表会までは、1か月半ほど。準備はどのように?
三浦:まずは発表内容を決めるために、準備期間に行ったアンケートを活用しました。アンケートに書かれていた疑問点や不満点を解消する内容にしたいと思ったからです。そしてワークショップで話したこと、それを自分はどうとらえたのかを改めて整理しました。由利本荘市への見方を問い直し、自分事として由利本荘市に必要だと思えることを一から構築しました。由利本荘市の統計データを入手してそれを分析しながらまとめるには、1か月半は長くはありませんでした。何といっても、自分の思いと、いろいろな考え方の中から本質を見抜き、1分間という短い時間にアイデアの魅力を詰め込むのは大変な作業でした。
──プレゼンの機会はこれまでの学校生活でもあったかと思いますが、今回は何が違いましたか。?
三浦:学校ではもともとテーマがあってそれを説明することがほとんどで、今回のように自分で決めたテーマから作り上げるのは初めての体験でした。自分のプレゼンに対する反応を予測して、それに対する回答を先に用意しておくような技術も必要ですね。発表会ではみなさん魅力的な案を作っていらっしゃったので、時間をかけてもっと地域を深堀りしたい気持ちになりました。
発表の様子はオンライン配信を通じて地域内外に発信され、リアルタイムで数多くの応援コメントが三浦さんに寄せられた(掲載しているコメントは一部)
夢を発信することから地方創生は始まる
──eラーニング講座での学びからテーマがひらめき、ワークショップでそれを確信した三浦さん。eラーニング講座の使い勝手はどうでしたか?
三浦:第一線の講師と1対1で学ぶことができ、繰り返し視聴して学べるところがよかったです。ユニットの途中で確認テストがあるんですけど、僕はそれを完全にクリアするために何回も視聴し直しました。1回でスルスル理解できるほど簡単な内容ではなかったんですが、テストをクリアするために何回も観たことで身になりました。 僕は「あきた地域学アドバンスト」の授業でこのeラーニング講座を初めて知りましたが、授業を受けていない学生の中にも知っていれば受講したいという人はいると思います。地方創生もそうですが、アイデアを考えること、誰かのために何かを考えてプランを立てること、人とコミュニケーションをとりながら何かしらの活動をしている学生なら興味を持ちそうです。秋田県立大学では毎年、秋田県や出身地域を盛り上げる「アクションプランコンテスト」というものをやっているんですが、それにエントリーする学生も、このeラーニング講座を受けていれば効果的にコンテストに参加できたのでは、と思うほどでした。 今、窓を開ければ田園が広がっているところに住んでいて、講座で知った「田園回帰」の話はとても身近なもので、心が動きました。eラーニング講座を受講することでそういった心が動くワードとの出会いがあるかもしれません!
──あと1年で社会人ですね。どんなことを意識していきたいですか。
三浦:今回のプロジェクトに参加している期間中に、地域に根差した企業への就職がかないました。ワークショップ以来、暮らしの中のモヤモヤやワクワクを付箋に書いて貼り、それを分類分けして整理する作業を続けています。小さなことかもしれませんが、自分の生活の質や自分が暮らしていく社会をよくしていく最初の一歩になるんじゃないかなと。どんな人でも住む場所や環境は変化していきますが、今いる場所をよくしていくという気持ちを誰もが持っていれば地方は活気づくし、日本が元気になっていくと思っています。
──これから「学生が主役の地方創生プロジェクト」に参加していく未来の後輩にメッセージをお願いします。
三浦:夢物語でもいいからアイデアを出してみてほしいです。僕は現実味を持たせたくて、プレゼンの最後に実現に向けたアイデアを差し込んだんですが、夢でもいいから発表してみることが、地方創生を自分事にしていく第一歩になると思います。
三浦 愛翔さん
(みうら・まなと)
秋田県立大学システム科学技術学部3年
[プロフィール]
秋田県能代市出身。5歳より由利本荘市で育つ。秋田県立本荘高等学校を経て、現在は秋田県立大学システム科学技術学部在学中。地方創生に関心を持ったのは大学の「あきた地域学」(担当教員:経営システム工学科 嶋崎真仁教授)の履修がきっかけ。「あきた地域学」から派生した「あきた地域学アドバンスト」の中で実施された「学生が主役の地方創生プロジェクト」の期間中に就職が内定。地域社会を支えることを目指す会社で、eラーニング講座やワークショップで得た経験を活かしていきたいと、地方創生への思いをふくらませている。
主なテーマ