住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり
住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり
氏名 |
山本 茉由さん(やまもと・まゆ) |
所属 | 静岡県立大学経営情報学部3年 |
プロフィール | 静岡県御殿場市出身。静岡県立御殿場南高等学校卒業。2020年、静岡県立大学経営情報学部に入学。国保研究室では組織論を研究。大学3年の秋に地方創生カレッジ「\静岡発/学生が主役の地方創生」プロジェクトのリーダーに自ら立候補。学生が地方創生を自分事化するためのワークショップや、学生と地方創生に取り組む社会人に交流会等の企画・運営を担当。プロジェクトを通じて企画立案や集客方法などを身につけるとともに、地方創生の意義やその魅力を実感する。 |
(第3話)「\静岡発/学生が主役の地方創生」
学生に地方創生の大切さや魅力を発信/ワークショップやフォーラムの企画運営を通じて自身も成長
2023.03.24公開
「\静岡発/学生が主役の地方創生」のプロジェクトは、学生たちが「地方創生」を見つめ直し、「自分には何ができるのか」を考えるきっかけをつくりました。ワークショップに加え、プロジェクトの集大成となったフォーラムの企画運営に奔走した静岡県立大学3年の山本茉由さんに、地方創生への思いを聞きました。
ワークショップの企画運営を務める山本さん(左)
初めてのワークショップ企画運営、手探りのスタート
──ワークショップの企画運営に関わったきっかけや思いを教えてください。
山本:「\静岡発/学生が主役の地方創生」は、私が所属している県立大の国保研究室と地方創生カレッジが連携したプロジェクトです。最初は、私自身地方創生にすごく関心が高かったわけではありませんでした。地域の将来に役立つ企画や運営について学びを得たいという思いから立候補し、このプロジェクトに携わることになりました。
──企画内容はどのように考えましたか?
山本:ワークショップを4回、フォーラムを1回開催することが当初から決まっていました。しかし地方創生という言葉は知っていても、自分は経営学部なのであまり馴染みがありませんでした。地方創生をテーマとしてどんな内容で開催していくのか、まさに手探りのスタートでした。周囲にもまちづくりや地方創生に興味がある人が少なかったので、まずは興味がある人とつながるところから始めました。プロジェクトのサポート団体でもある一般社団法人草薙カルテッドさんから助言をいただきながら、地方創生に関心がある人を紹介してもらい、徐々に人脈を広げていきました。
企画の考案と集客に奮闘/失敗を重ねながら乗り越える
──ワークショップの企画運営にあたってどんな点に苦労しましたか?
山本:苦労したことは大きく2つあります。まず一つ目は最も重要な企画のところ。ワークショップを企画して開催すること自体が初めての経験だったので難しかったです。しかもそれを4回開催して最後のフォーラムにつなげることまで考えなければいけません。各ワークショップをどんな構成にし、どのようなテーマや問いを深堀していくか。そしてどのように締めにつなげていくのか。正しいプロセスの踏み方も分からず、関連する参考書を読んだり、教授に相談したり、同じ研究室の生徒に頼んで模擬のワークショップを開くなどしながら、少しずつ企画に落とし込んでいきました。
ワークショップの参加ターゲットを考える際も、静岡県以外の生徒を対象とするか最後まで悩みました。今回のテーマは地方創生ではあるけれど、静岡に焦点を当てる内容だったため、他の地域の人は話についこれないんじゃないかと。でも都会の大学にも地方出身者がたくさんいて、他の地域も静岡と共通した問題を抱えていると教授からアドバイスを得て、最終的に延べ10人ほどが県外から参加してもらいました。結果的に、他の地方の事例なども入って話し合いの幅がぐっと広がったと思います。
もう一つ苦労した点は集客です。これも経験がなかったので、参加してくれる人をどうやって探し、巻き込んでいくのか分かりませんでした。そもそも地方創生に興味がある人がどこにいるのかも分からず、最初はとにかく同じ大学の別の授業などにお邪魔して宣伝しました。これは失敗談なのですが、一度大教室でPRした際、当時なかなか集客がうまくいかず焦っていたこともあって、「頑張って企画しているので協力して!」といった感じで同情を買うような伝え方になってしまい、実際この時はチラシを全然受け取ってもらえませんでした。この反省を受け、次はより小規模で活動的なサークルを訪問してPRしました。伝え方も少し工夫して、「今度こんな楽しい会を企画します。他県や他大学の学生も来るので交流の場として利用してみませんか?」と交流や人脈づくりをアピールしました。そうすると反応も良く、何人かが応募してくれました。集客は伝え方やターゲットが鍵だと実感した経験でした。
ワークショップでは「学生にとって魅力的なまち」についてのアイデア発表を行った
(山本さんは左から二番目)
企画運営のプロセスや情報共有の大切さを学ぶ
──ワークショップの企画運営を終えて、どんな気づきや学びがありましたか?
山本:苦労した分だけ学びは多かったです。イベントの問いを考える際は、参加した人がどのような成果を得られるかを最初に考えることが大事だと思いました。問い次第で答え、つまり成果が大きく変わってくるので、イベント企画では最も重要な部分だと思います。そしてそこを起点に、ワークショップ全体をどう「デザイン」していくかを考えるにあたって、会場自体の雰囲気づくり、会場で流すBGM、テーブルに用意するお菓子など、全体をつくらないといけないので、当日の流れをイメージしながらデザインをしていくことが重要だと実感しました。例えば、今回はワークショップの中で各チームに大きな紙と共に付箋を全員に渡し、考えた意見をどんどん貼ってもらいました。そうすることで、発言するのが得意な人の意見ばかりに偏らないように工夫しました。イベント当日は私は全体の司会を務めながら、各チームで「魅力的な静岡」を深堀していくうちに課題が見えてくるという流れがスムーズに進むように見守りました。
また、今回のプロジェクト全体からの学びとして、こういったイベントをみんなでつくり上げていく際は、準備段階で進捗情報をできる限りチームで可視化し、アドバイスや意見、協力を得ながら進めることが大事だと痛感しました。今回もプロジェクトの関係者の方に相談したり、報告したりしながら進める必要がありましたが、私が簡潔でわかりやすい資料を用意していなかったために、質問を受けて答えるだけになってしまい、アドバイスをいただく時間がありませんでした。この経験を教訓として、何かプロジェクトをチームで進める際はその都度簡潔な資料をつくって道筋を全員に示すことが、効果的かつ効率的に進めていけると身をもって学ぶことができました。
地方創生は「難しいことじゃない」
より身近な課題に感じるように
──ご自身の地方創生に対する考えに変化はありましたか?
山本:地方創生って一般的にはあまり身近な言葉ではないと思っていましたが、地方創生カレッジのeラーニング講座を受講したり、ワークショップの企画や運営のために色々と調べる中で、それほど難しいことではないと思えました。行政や企業が主体となるだけでなく、住民が主体となってつくっていく地方創生もあることを知ったからです。地方創生は人ごとじゃなくて自分たちで住みやすいまちをつくっていくことなのだと。自分が感じているちょっとしたまちの問題や課題に対して、何かアクションを起こす、それが「地方創生」につながっていくのだと今は感じています。
イノベーションや人材活用、マーケティングなど
多角的に学べた地方創生カレッジ
──地方創生カレッジの講座は、企画や運営に役に立ちましたか?
山本:プロジェクト全体のテーマ「学生が主役の地方創生」を決める際に講座の内容が参考になりました。それは「生涯活躍のまち」という講座で多世代交流をテーマにしており、お年寄りや子供たちが支え合うまちづくりのケースでした。とても良かったのですが、私たち学生の存在が抜けていることに気づきました。これがヒントになって、地域のために学生は何ができるか、というスタート地点に立つことができました。大学生や社会人になって、家と会社や学校の往復だけでサードプレイス(第三の居場所)を作れない人が多いと見聞きしていたので、若い世代が積極的に地域に入って、サードプレイスとしての居場所をつくることで、住み続ける動機になると思いました。学生や社会人の居場所があれば地域もより活気づくはずです。
また、地方創生カレッジの講座は地方創生を様々な視点から題材にしつつも、私のような学生にも役立つ講座がたくさんありました。地域について深堀しつつ、リーダーとしての在り方や、イノベーションを起こす方法など、多角的に学べることがとても良かったです。例えば「人材×組織×マーケティングによる地域活性化戦略」という講座は地域の埋もれた資源をどう活用していくかがテーマでしたが、人材活用やマーケティングについても学ぶことができました。
高校生、大学生、社会人が身近な地域貢献をテーマに
交流/フォーラム(交流会)を開催
──プロジェクトの集大成としてフォーラム(交流会)も企画運営されましたね。
山本:フォーラムまでにワークショップを4回開催したので、企画や運営のノウハウもだいぶ身につき、集大成のフォーラムに生かせたと思います。今回の参加者は高校生、大学生、社会人の3つの世代の方々でしたが、「地方創生について知らない高校生が一から学べて楽しめる」という点を重視してました。テーマは直前まで悩みましたが、最初に私からワークショップでの成果を発表し、続いて地域貢献活動に取り組む学生団体が実際の取り組みを紹介しました。そこから参加者の皆さんにも「小学生までに地域のために行った活動を振り返ってみよう」というテーマで考えていただきました。自分の経験を振り返りながら、実際の活動を知ってもらうことで、地方創生について身近に感じてもらうことが狙いでした。特に、地域のために実際に活動している人たちの楽しそうな様子や生の声に触れることで、参加者も地方創生に取り組むやりがいを感じとってもらえたのではないかと思います。
フォーラムで司会を務める山本さん(中央)
──世代の異なる三者はうまく交流していましたか?
山本:フォーラムでは5人一つの班に分けたのですが、各班に三世代が揃うように分けました。各世代がそれぞれ違う役割を持って、互いに良い影響を与えて合ってくれたと思います。例えば、高校生は勉強と部活で忙しくてなかなか地域貢献につながる活動ができないと思いますが、自分の近い将来像である大学生の話を聴きながら、身近なことでも地域への貢献ができると視野を広げてくれたのではないかと思います。また大学生は、社会人の活動や、歳下である高校生の熱意から刺激を受けたと思います。そして社会人も、今の若者たちがどんなことに興味を持って活動しているかを知ることで新しい価値観を学べたのではないでしょうか。上の世代の人が助言をしたり、歳下の学生が質問をしたりと、同世代だけではなく、色んな価値観を共有し合ったことで話し合いがより深まったと思います。
──フォーラムを終えた参加者たちの反応はいかがでしたか?
山本:イベント後にアンケートを取ったのですが、大変うれしいことに約90%が「とても満足した」と回答してくれました。実際のコメント内容を少し紹介すると、「身近な地方創生を見つけられたことで今後の過ごし方の目線が変わった(大学生)」や、「地方創生について様々な視点から考えることができて、とても興味深く面白かった(高校生)」、「参加前は地方創生というと行政や地方自治体が行うものだと思っていたが、実際は空き缶拾いなど、すごく身近で誰でもできるとわかった(大学生)」など、地方創生への関心度の高まりを感じました。
フォーラムの様子(1)
フォーラムの様子(2)
山本:このプロジェクトは「地域のために何かしたいと思える学生を増やす」を目標としていました。私自身もほぼゼロから地方創生を知っていく中で、注目は集めている分野である一方で、地方創生を身近に感じていない人が多いことが分かりました。だからこそ、学生の自分たちでも地域に貢献できることがたくさんあるのだと気づいてほしいとの思いで活動していました。そういった観点では、フォーラムを通じて、参加者が地方創生を自分の関心ワードに変えていくことに少しは貢献できたのかなと思います。プロジェクトに携わった5カ月間、頑張ってきて本当に良かったです。
将来の目標は「静岡を元気に」
──今後、地方創生の分野に関わっていきたいとお考えでしょうか?
山本:すぐに地方創生にどっぷり関わっていきたいというより、まずは企業に入社して働きながら、地域とどう関わっていくかを少しずつ考えていきたいと思っています。将来的に東京など都会で培った経験や能力で、いつか静岡を元気にしていけたらいいなと思っています。そのために、これから様々な人と関わりながら成長していきたいです。今回のプロジェクトを通じて、誰かと関わりながら何を成し遂げていくことにとても達成感を感じることができ、本当に良い経験になりました。
テーマとして今関心があることは、新型コロナウイルスの流行を受けて地方創生のあり方が変わったことです。地方移住者に関心を持つ人が増える中で、各地域が移住した人たちを地方創生にどう巻き込んでいくべきか、新しく来た人たちをどう馴染ませていくか。これからますます大きな問題になるのではないかと思っています。今後地方創生カレッジの講座でこういったコンテンツが追加されれば、ぜひ受講したいと思います。
山本 茉由さん
(やまもと・まゆ)
静岡県立大学経営情報学部3年
[プロフィール]
静岡県御殿場市出身。静岡県立御殿場南高等学校卒業。2020年、静岡県立大学経営情報学部に入学。国保研究室では組織論を研究。大学3年の秋に地方創生カレッジ「\静岡発/学生が主役の地方創生」プロジェクトのリーダーに自ら立候補。学生が地方創生を自分事化するためのワークショップや、学生と地方創生に取り組む社会人に交流会等の企画・運営を担当。プロジェクトを通じて企画立案や集客方法などを身につけるとともに、地方創生の意義やその魅力を実感する。
主なテーマ