住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

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氏名

戸塚 愛琳さん(とづか・まりん)
所属 静岡県立大学経営情報学部3年
プロフィール 静岡県牧之原市出身。県立榛原高等学校を経て、現在は静岡県立大学経営情報学部在学中。高校時代に牧之原市が実施した「地域リーダー育成プロジェクト」への参加をきっかけに地方創生の活動に興味を抱く。大学では、学生ボランティアセンターや、大学生有志が地域連携活動を実践する「地域コラボプロジェクト」に加わるなど、地方創生に関連した活動に積極的に取り組む。2022年12月には地方創生カレッジ「\静岡発/学生が主役の地方創生」のワークショップに参加。「地元への恩返しをしたい」と、高校時代から抱いていた静岡の地方創生にかける思いをさらに深める。

(第1話)故郷・静岡を「移住したくなるまちに」/地方創生カレッジのワークショップ参加を通じて将来の目標が具体的に

2023.03.24公開 
 

地方創生カレッジと静岡県立大が連携した「\静岡発/学生が主役の地方創生」。県立大3年の戸塚愛琳さんはプロジェクトのワークショップに参加し、新たな学びや気づきを得て、ふるさとの地方創生に対する思いをより一層膨らませました。

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ワークショップに参加する戸塚さん(写真右から2番目)

 

高校時代に故郷の課題を知り、地方創生への関心が高まる

──地方創生に関心を持つようになったきっかけを教えてください。

戸塚:まちづくりに初めて興味を持ったのは、高校1年生の時です。私の地元は静岡県牧之原市ですが、通っていた高校で募集していた市の「地域リーダー育成プロジェクト」に応募したことがきっかけでした。この時、自分が住む町にもたくさんの課題があることを初めて知りました。牧之原市はお茶の生産地として有名なのですが、生産者さんたちが後継者不足に困っていたり、当時のお茶の卸売価格が下がっていたりと深刻な問題がありました。それを知って自分が大好きな故郷の良いところがなくなってしまうかもしれないと不安になりました。そこで、どうすれば若者が農家の後継ぎになってくれるのか、魅力的な町にするには何ができるのかを考えて、当時の市長に地域活性化策についてのプレゼンテーション等を行いました。このころから、地方創生への関心が徐々に高まりました。


ワークショップで県内外の学生たちと
静岡の地方創生について議論

──今回「\静岡発/学生が主役の地方創生」ワークショップへの参加は何がきっかけでしたか?

戸塚:自分と同じ大学の同級生が地方創生をテーマにしたワークショップを企画していると知り、もともと関心のあったテーマだったので面白そうだと思いすぐに申し込みました。地方創生は決して簡単なテーマではないので、企画から当日の運営まで全て学生が行うというのはすごいなと思いました。実際、参加する側としてとても参加しやすかったです。


──ワークショップではどんなことに取り組まれましたか?

戸塚:5人1チームに分かれ、2日間にわたって静岡の地方創生について考えました。私のチームは地元の静岡からだけでなく、東京から参加していた学生もいたので、静岡に対する客観的な意見を聞くことができ、とても良い議論ができたと思います。まずチームで静岡の理想像を考えることから始め、どうすれば若者たちにとって魅力的なまちになるのかについて意見を出し合いました。一方で、多くの若者たちが大学生や社会人になると静岡を出ていってしまう現状があったので、「大学の選択肢が少ない」「学生と社会のつながれる場所がない」「働きたい場所が少ない」・・・などと、それぞれが意見を書いた付箋をどんどん一つの大きな紙に貼っていき、その理想と現状とのギャップを浮き彫りにしました。そして、そのギャップを埋めるためにはどんなことができるかを考えました。私は生まれも育ちも静岡なので、住んでいる人の視点で、静岡の良さや課題などについてみんなに伝えるように心がけました。


「子育て世代が移住するまちに」
議論を通してやりたいことが具体的に

──チームでの議論はどのようにまとまりましたか?

戸塚:チーム内で様々な意見を出し合った後、私たちのチームがワークショップの最後に発表した静岡の理想の姿は「Uターン・移住したくなるまち」です。それを実現させるために、教育環境を充実させることに力を入れるべきだと提案しました。現在の静岡は若い世代が東京など都会に出て行って戻ってこないケースが多く、そうした若い世代が戻ってきてくれたり、留まってくれたり、数年後に移住してもらうことでまちに活気が生まれます。その流れをつくるためには、小さいころからの教育環境を整えることが、子育て世代に響くのではないかと考えました。これに加えて、人のつながりや誰もが生き生きと活躍できる場、子育てや仕事のしやすさも必要だと考えました。私たち学生ができることの一つとして、地域の高校生、大学生が子どもたちとつながることができる場所づくりを提案しました。学生が地域の子どもたちに勉強を教えたり、遊び相手になることで、地域一体となって子育てをサポートできます。また学生自身もコミュニティに貢献したり、自分の将来のことを考えるきっかけにもなり良い経験になるはずです。このように地域の中で様々な経験ができ、心理的なよりどころとなるようなコミュニティをつくることでそれぞれが活躍でき、自分たちの理想のまちに近づいていけるのはないかと思います。


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──ワークショップを通じて新たな学びや気づきはありましたか?

戸塚:様々な地域の学生が参加していたので、自分の生まれ故郷をより客観的に見ることができました。例えば東京の学生から静岡のいいところとして、「全国的にも天候が安定している地域」だという意見をいただきました。静岡にしか住んだことがない私にとって、他の地域と比較しての新しい視点を知ることができたのは、とても新鮮で良かったです。また教育の面でも、都会にはない自然体験が静岡ではたくさんでき、そうした五感を使った体験は子どもたちの豊かな心を育むという点で良いと、地域ならではの良さを活かせることにも気づけました。一方で、東京の話を聞く中で、「教育環境の格差」も感じました。静岡では小学校や中学校の段階も含め、教育の選択肢が少ないという意見が多く出ました。東京の学校であれば海外留学や新しい取り組み、積極的な活動を周りで取り組んでいる人が多く、それに刺激を受けてチャレンジしてみようという機会が多いように感じました。静岡の学校は、特に地方は安定志向であったり、考え方が閉鎖的だったりするので、それらが教育の選択肢を減らす一因になっているとも感じました。ワークショップで現状、理想、ギャップ、そして何ができるかについて話し合っていくうちに、私自身が静岡の地方創生でやってみたいことが少しずつ言葉になっていきました。今回のワークショップは自分と同じ学生が主催するイベントということで、どんなワークショップになるのだろうとワクワクして参加できましたし、当日も学生同士、あまり堅苦しくなり過ぎずに本音で語り合ったり、共感したりすることができたと思います。


様々な地方の好事例について学べた地方創生カレッジ講座

──ワークショップへの参加の前に地方創生カレッジのeラーニング講座を受講されていますが、地方創生を学ぶ上で参考になりましたか?

戸塚:私が主に受講した講座は「生涯活躍のまち」と「地方に飛び出す公務員」です。これらの講座では、私が将来チャレンジしてみたい多世代間の交流の場づくりを実践している各地の事例が紹介されていて、とても参考になりました。例えば、石川県のある事例では、廃寺を活用してそこに温泉やフィットネスジムをつくり、地元の高齢者や子供たち、観光客の集いの場になっていました。とても良いなと感じた点は、そこに来る人がみんな受け身ではなくて、それぞれが何かしら役割を持っていて、他の人のために行動していました。障害を持った人ができる範囲で他の人のために手伝いをしたり、編み物が得意な高齢の方が他の利用者のために編み物を作ったりと、自分の特技を活かしてコミュニティに貢献していました。そこにいる人たちが支え合いながら、楽しめる場所になっていて、自分の故郷にもこんな場所をつくれたらいいなと思いました。
また、講座で様々な事例を知る中で、「まちづくりは結果よりもプロセスが大事」だという重要な点にも気づけました。地元の人たちとのワークショップだったり、イベントの開催だったりと、同じ地域に住む人をたくさん巻き込んでいくことで、地域が一体となって活力となり、自分たちも楽しめて地域が盛り上がっていくのだと思います。また、自分の故郷の牧之原市が抱えている課題と同じく、「移住者と地元の人の結びつき」に関する課題も取り上げられていて、移住者側の視点を学ぶことができて参考になりました。


──ワークショップや講座の受講を経て地方創生に対する考えに変化はありましたか?

戸塚:これまでは「地方創生」という言葉はふわっとしたイメージでしか考えられていませんでしたが、今回ワークショップへの参加や地方創生カレッジの講座受講を通して、地方創生は「そこに住む人が豊かに過ごし、やりたいことを実現するために、みんなで協力してまちづくりをしていくこと」なのかなとより具体的に考えられるようになりました。


自分を育ててくれたまちへの恩返し
将来の目標は「故郷の地方創生」

──今後地方創生にどのように関わっていきたいとお考えですか?

戸塚:高校生の頃から、将来は地元の活性化につながるような仕事をしたいという漠然とした思いはずっと持っていましたが、今回ワークショップでの新しい学びや気づきから、将来は地元の静岡で地域の居場所づくりのような仕事をしたいとと少し具体的に考えられるようになりました。職業としてはまずは公務員を目指し、地元の牧之原市で、色んな人を巻き込んでまちづくりに関わるような仕事にチャレンジしたいと思っています。そして牧之原市は多世代の人たちが交流できる場が少ないので、障がいを持っている方や地域のこどもたち、高齢者、学生などいろんな人たちが集まって交流ができ、活躍できるような居心地の良いそんな場所をつくることができたらいいなと思います。この町で育って、色んな思い出があり、自分にとって好きな景色がたくさんあり、お世話になった人たちのためにも何か自分ができることに取り組んでいきたいので、故郷の地方創生や地方活性化に関わっていきたいです。


──地方創生の魅力とは何でしょうか?同じようにこの分野での活動を志している人たちにメッセージはありますか?

戸塚:地方を盛り上げることは個人個人でできることではなく、地域の人や企業の人、行政の人、学生など、色んな立場の人たちが力を合わせていかないと実現できないという中で、みんなで協力することの楽しさは大きいと思います。まちづくりの過程で、少しずつ変化していくまちの様子を一緒に味わったり、居心地が良くなっていくことを一緒に感じたりして分かち合うことができるのも、「地方創生」の魅力や醍醐味だと思います。


「\静岡発/学生が主役の地方創生プロジェクト」の密着動画


学生が主役の地方創生プロジェクトの概要はこちらからご覧ください

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戸塚 愛琳さん
(とづか・まりん)

静岡県立大学経営情報学部3年

[プロフィール]
静岡県牧之原市出身。県立榛原高等学校を経て、現在は静岡県立大学経営情報学部在学中。高校時代に牧之原市が実施した「地域リーダー育成プロジェクト」への参加をきっかけに地方創生の活動に興味を抱く。大学では、学生ボランティアセンターや、大学生有志が地域連携活動を実践する「地域コラボプロジェクト」に加わるなど、地方創生に関連した活動に積極的に取り組む。2022年12月には地方創生カレッジ「\静岡発/学生が主役の地方創生」のワークショップに参加。「地元への恩返しをしたい」と、高校時代から抱いていた静岡の地方創生にかける思いをさらに深める。

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