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住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

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氏名

井上 大輔さん(いのうえ・だいすけ)
所属・肩書 新潟市江南区役所 地域総務課 主査
プロフィール 1982年生まれ。
2006年、新潟市役所入所。いくつかの部署を経て、2015年、地方創生を目的に新設された新潟暮らし奨励課に異動。「新潟市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定や計画実施の進捗管理に携わる。2017年、業務が政策調整課へ移管されたことに伴い同課へ。さらに2020年4月から現職。より市民に近い職場に異動し、地方創生にかかわる仕事に携わっている。


中学校区単位で取り組む人口減少対策

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住民参加型で開催されたワークショップ

 

新潟市初の小地域人口推計を行うために

──最初に、新潟市の課題についてお聞かせください。

井上:全国どこの自治体でもそうだと思いますが、新潟市でも人口減少が最重要課題となっています。新潟市の人口は2005年を境に減り続けていますが、これから人口を増やすのは難しいため、減少速度をできるだけ抑えながら、そのなかでいかに安心して暮らしていけるかが課題になってきます。当然、今までとは違う新しい対策も考えていかなければなりません。

そこで2017年から、当時私が所属していた政策調整課で取り組み始めたのが、市全体としてだけではなく、「中学校区」という狭い地域単位で、10年後、20年後の姿を「見える化」することでした。当時はまだ中学校区単位のデータや推計がありませんでした。新潟市は、たくさんの市町村との合併を経て2007年に政令指定都市となることによって、課題がそれぞれの地域ごとに多様化・複雑化してきました。人口減少や少子高齢化の問題は地域によって進み方が異なります。そして地域住民と行政が協働していくためには、共有して依拠できる科学的な基礎データがないと困ります。そのような理由から、まずは中学校区単位でのデータを「見える化」することが重要だと考えたわけです。

ただ、中学校区ごとのデータ整理や分析を行うにも、当初は何をどうすればよいのか、見当もつきませんでした。そこで、「何か、参考になる情報があるのでは」と思って、政府からのお知らせメールで紹介されていた地方創生カレッジにアクセスしてみました。そうしたらズバリ「地域人口推計」という講座があったのです。

 

「地域カルテ」を基礎に市民と行政が協働

──「地域人口推計」講座で学んだことを活かして完成させたのが「地域カルテ」というものですね?

井上:そうです。「地域カルテ」は中学校区単位で作成し、内容はそれぞれの中学校区の20年後(2036年)までの人口推計を中心にした「人口データ」、検診受診率などの「健康データ」、公共施設の利用率や配置状況などをまとめた「施設データ」の三部構成となっています。「健康データ」と「施設データ」は他の部署から提供されたデータなどを活用し、私が所属していた政策調整課は「人口データ」の部分を整理しました。私が「地域人口推計」講座で学んだことをそのまま適用して、「人口データ」の部分をまとめることができました。「地域人口推計」を学んでいなければ、「地域カルテ」は作れなかったと思います。

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「地域カルテ」の例(写真は、新潟市江南区両川中学校区の「地域カルテ」の一部)

──作成された「地域カルテ」は、どのように活用されていますか?

IMG_1726.JPG中学校区単位で行われたワークショップ。
「地域カルテ」を参照しながら、短期的、中長期的に地域で取り組むことを住民同士で話し合った

井上:新潟市は以前から区自治協議会やコミュニティ協議会と協働を図ってきたのですが、そのためのツールのひとつとして「地域カルテ」を活用しています。ちなみに区自治協議会とは、市の各区に一つずつあり、学識経験者や公募委員など30人で構成される組織です。コミュニティ協議会は、主に各区の中学校区ごとにある住民組織です。

2018年度は、人口減少がより深刻な地域やご希望のあった中学校区で、「地域カルテ」を使ったワークショップも実施しました。当時、私はまだ政策調整課に所属しており、カメラマンとして一部のワークショップの現場に立ち会いました。「地域カルテ」をご覧になった市民の皆様の反応がよく、嬉しかったですね。「人口減少で大変になるとは思っていたけど、まさかこんなになるとは……」といった具合に、より「自分事」として考えていただけた印象です。そもそも市全体の大きな話を聞くより、自分が暮らす中学校区の現状と未来を知るほうが、活動に熱心に取り組んでいただけると思います。

IMG_1726.JPG 中学校区単位で行われたワークショップ。「地域カルテ」を参照しながら、短期的、中長期的に地域で取り組むことを住民同士で話し合った

 

地方創生カレッジが自分の「引き出し」になった

──ほかに役立った講座にはどんなものがありますか?

井上:業務にすぐさま役立った講座としては「地域経済分析の基礎知識」があります。内閣府のRESAS(地域経済分析システム)が提供するビッグデータの見方や使い方を、私はよくわかっていなかったのですが、この講座のおかげでデータを正確に読めるようになり、RESASを活用できるようになりました。RESASによる分析は新潟市全体が対象になりますが、中学校区単位で将来を考える場合も、そのような広い視野は欠かせません。


──仕事の様々な部分で、地方創生カレッジの講座が役立ったわけですね。

IMG_2539.jpg 地方創生カレッジの講座を受講中の井上さん

井上:はい。私にとって、地方創生カレッジの網羅性が非常にありがたかったです。地方公共団体は異動が多く、異動先の業務が未経験の分野であることは珍しくありません。これまで手がけたことがないような企画が求められる場合も多い。初めてだけれど、なんとかしなければならない。そういうときに重要なのは、自分がどれだけ「引き出し」を持っているかではないでしょうか。私にとって、地方創生カレッジはそういう貴重な「引き出し」になりました。つまり、知りたいことや困ったことがあれば、まず地方創生カレッジの講座一覧を見るわけです。

IMG_2539.jpg 地方創生カレッジの講座を受講中の井上さん

 

区の地域公共交通について検討する

──今年4月に江南区役所地域総務課に異動されましたが、お仕事の今後の展開についてお聞かせください。

IMG_6616.JPG新潟市江南区内を走る「区バス」。区ごとに運行ルートが設定され、運行事業者も異なる

井上:現在の部署は、江南区における各種施策の企画・推進・進捗管理、広報、区自治協議会やコミュニティ協議会の運営・支援など、地域振興や住民自治にかかわる非常に幅広い業務を行っていて、より住民に近い立場で地方創生を担う立場でもあります。そのなかでも今年度は、江南区の地域公共交通をどうしていくかが検討課題のひとつになっています。

例えば、2018年度に実施されたワークショップでも、地域の実情に沿った交通体系を再構築していく必要性が明らかになりました。異動後、早速その課題に取り組み始めているところです。異動先で地域公共交通を検討することになったときにも、地方創生カレッジをのぞいてみたら、「地方創生に資する交通・観光事業の再生と活性化」というズバリの講座があり、すぐに学ぶことができました。

振り返ってみると、2015年に「新潟市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定して以来、ずっと地方創生関連の仕事に携わってきました。今後も地方創生カレッジのなかで、業務に役立ちそうな講座を参照しながら、市民のため、新潟市のために力を尽くしていきたいと考えています。

IMG_6616.JPG 新潟市江南区内を走る「区バス」。区ごとに運行ルートが設定され、運行事業者も異なる

井上大輔さんからひと言アドバイス

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地方創生カレッジは、役立つ講座の宝庫です。政策調整課で計画立案の仕方がわからなかったときには、「自治体マネジメントの基礎」講座で事業計画の策定や評価の方法、PDCAの回し方などを学ぶことができました。「地域カルテ」を作成するときは、「地域人口推計」講座に記されていた、誰もが簡単に作成でき、理解できる推計手法を知ることで、スムーズに作成することができました。この2つの講座は大変わかりやすく、入門用としてお勧めです。
私がeラーニングで勉強したのは、地方創生カレッジが初めてでしたが、動画は活字よりも内容が頭に入ってきやすいと思いました。また、先生の顔が見えるので、地方創生への思いや情熱がよく伝わってきて、私のやる気も高まりました。
課題解決への第一歩は、本を読んだり、先輩や他の自治体職員からアドバイスを受けるなどいろいろありますが、「地方創生カレッジをのぞく」も、ぜひそこに加えてみてください。

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井上 大輔さん
(いのうえ・だいすけ)

新潟市江南区役所 地域総務課 主査

[プロフィール]
1982年生まれ。
2006年、新潟市役所入所。いくつかの部署を経て、2015年、地方創生を目的に新設された新潟暮らし奨励課に異動。「新潟市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定や計画実施の進捗管理に携わる。2017年、業務が政策調整課へ移管されたことに伴い同課へ。さらに2020年4月から現職。より市民に近い職場に異動し、地方創生にかかわる仕事に携わっている。