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住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

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氏名

松場 孝一さん(まつば・こういち)
所属・肩書 足立成和信用金庫
地域創生・課題解決担当参与
プロフィール 1955年千葉県生まれ。11歳のとき東京都に転居し足立区で育つ。東洋大学卒業。1978年足立信用金庫(現・足立成和信用金庫)入庫。6支店の支店長を務めた後、2012年地域連携・活性化特任部長(現在は地域創生・課題解決担当)に就任。2015年に定年を迎えて以降も、参与として業務を継続。足立中小企業支援プラットフォーム創設、区内大学との産学連携協定、工業高校・職業能力開発センターと企業とのジョブマッチング、「あだち菓子本舗」設立などに携わる。


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地元信用金庫主導の産学公金連携による
「足立のお菓子でまちおこし」

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「あだち菓子本舗」で開発されたお土産品「お菓子セット」と包装紙


信金がハブとなって地域を元気にしたい

──まず、足立成和信用金庫が「地域創生・課題解決担当」という部署を設けて、足立区の創生に取り組む背景について教えてください。

松場:当金庫の前身は、1926(大正15)年に設立された千住信用組合です。地元の中小企業に融資するための地域金融機関をつくろうということで、千住町役場と地元有志が出資し、当時は町役場の中で仕事をしていたそうです。このように足立区と一体となって歩んできた歴史があり、現在も23店舗のうち20店舗が区内にあります。
足立区が元気でなくては、当金庫の発展もありません。ただ、地域を活性化させようといっても、金融機関だけでできることは限られます。専門家や行政、大学、経済団体と連携して地域の課題解決にあたるため、2012年に「地域連携・活性化特任部長」が誕生しました。私は2代目で、2020年3月に現在の名称に変わりました。

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街の人々に愛され、街に根づいている足立成和信用金庫本店

──北千住駅周辺は再開発が進んで、ずいぶん様変わりしましたね。

松場:はい。2000年以降、千住地区に数多くの大学(放送大学、東京藝術大学、東京未来大学、帝京科学大学、東京電機大学)が移転してきました。来年(2021年)には文教大学も開設予定です。駅前は若い学生が増えて、活気が出てきました。
ただ、足立区全体で見ると、昔ながらの商店街や町工場が多い地域もあり、ここ20年間で事業所の数が半分ほどに減りました。若い人材の不足や、事業承継の問題に悩む事業者もたくさんいます。

──信用金庫が仲介役になって、地元への就職を支援していると伺いました。

松場:足立区には都立の工業高校があり、生徒のインターンシップの受け入れ先として当金庫の取引先を紹介しています。また、学校では旋盤や電気配線、自動車整備などの実習が行われていますので、それを地元企業の社長さんに見てもらおうと、企業向け学校見学会を実施しています。生徒に地元企業を知ってもらうだけでなく、地元企業にも生徒の技術を知ってもらおうということです。2012年から毎年実施していますが、多い年で10名以上、取引先に就職が決まりました。


足立のお菓子でまちおこしプロジェクト

──ほかにも様々な取り組みをされています。最近は足立のお菓子を積極的にプロモーションされていますね。

松場:あまり知られていないのですが、足立区にはお菓子のメーカーが多く、都内の菓子組合に所属する会社の30%近くが集まっています。そこで当金庫がハブとなって、区役所、菓子メーカー、小売店をつなぎ、お菓子を足立区の地場産業として盛り立てていこうというプロジェクトを始めました。

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定期的にイベントの会議を実施。2020年のイベント「あだち夢のお菓子コンテスト」の運営について、活発な意見交換が行われている

──そのなかで松場さんは、具体的にどのような活動をされているのですか。

松場:地元の小規模メーカーは、作るのは上手ですが、往々にして売り方が不得手です。そのような現状を、どう克服すべきかを考えるのが我々の仕事です。まず「足立の菓子を手土産として持っていけるような名産品にしたい」という目標を持つ焼きたてパン工房の社長さんと一緒に、キックオフミーティングを立ち上げました。菓子メーカーだけでなく、販売業者、足立区産業経済部、大学の先生も呼んで、十数回にわたって協議を重ねました。
その成果が、「あだち菓子本舗」です。区内にある菓子メーカー15社が集まり、各社の商品を、「あだち菓子本舗」という統一したブランドのもとに売り出しています。また、昨年(2019年)は地元の大型商業施設で「あだち菓子博」が開催され、菓子メーカー22社が出展しました。「あだちの菓子」は、東京都の地域産業資源にも指定されました。足立区の地場産業として認知度が高まっているのは嬉しいですね。

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    「あだち菓子本舗」の拠点「サンベルゴ」
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    「サンベルゴ」店主の宮下和朋さん。店内には、足立区のお土産品として開発された「お菓子セット」も!


全国の地域金融機関の取り組みに共感

──松場さんは何を通じて地方創生カレッジをお知りになりましたか。

松場:ちょうど足立のお菓子の会議を立ち上げた頃、知り合った行政の方からご紹介いただきました。試しに見てみたら、私のやっていることに関係しているなと。何かヒントがつかめないかと思って受講を始めました。登録すれば誰でも受講できて、特に無料で受けられる点がいいですね。自分の興味のある講座を選んで次々と受講できるので、この2年間で30講座を修了しました。

──特に意義深かった講座は何ですか。

松場:地方創生について理論的な面から学ぶ講座もいくつか受講しましたが、やはり私にとって参考になったのは、実践をされている方のお話で、それも事例を多く取り上げたものでした。なかでも一番印象に残っているのは、「地方創生に資する金融機関等の『特徴的な取組事例』」です。Part1、Part2とあり、それぞれ(平成)28年度、29年度、30年度とありますが、すべて受講しました。同業者でもあり、地域金融機関がこういうこともできるのかと、勉強になりました。金融マンとして必須の講座だと思い、職場の後輩にも受講するように勧めています。

──この講座では、全国の地域金融機関によるユニークな取組事例がたくさん紹介されていますね。それらの中でどの事例が、松場さんが活動を続けていくうえでどのように参考になりましたか。

松場:そうですね。どの事例がというより、全体として「地元を元気にしたい」という地域金融機関の気持ちが伝わってきて、私も微力ながら地元に貢献したいという思いをますます強くしました。実は、昨年の「あだち菓子博」では、企画から実施、報告会までの進行役を任されました。行政、商工会議所、法人会など関係者が多いなかで不安もありましたが、無事に終了することができました。地元を元気にしたいという、私の思いが伝わったからだと思います。

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昨年開催された「あだち菓子博」。区内の菓子メーカー22社が出展した


空き家再生にも取り組みたい

──お忙しいなか、どのように学習時間をつくっているのでしょうか。

松場:週末に学習することもありましたが、早起きして出勤までに学習することが多かったです。時には動画を1.5倍速で見ることも多かったです。

──オンライン学習は、いつでもどこでも学べるというメリットの一方で、学習意欲を維持しにくいということもあるかと思います。どういう工夫をされていますか。

松場:確かに途中で嫌になってしまうこともありましたが、せっかくここまで受けたのだからと、自分を鼓舞して頑張りました。

──今後、どういうことに取り組んでいきたいですか。

松場:空き資源を活用した地域活性化についての講座を受講したいと思っています。足立区でも空き家が増えています。放置すると治安上の不安も増えますので、その利活用が課題です。古い民家をリノベーションして、住民が集まるコミュニティスペースのような場所をつくれないかと考えているところです。

松場孝一さんからひと言アドバイス

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以前、別の人材育成研修で、現地に行って研修を受けたことがあります。まちづくりのプロが地方に移住して、実際に3年間で商店街を再生させたという話を聞いて、とても感銘を受けました。座学もいいですが、やはり現場で学ぶと面白いし、より実践的な知識が身につきます。私が地方創生カレッジでお勧めしたい講座は、やはり事例が多く紹介されているもので、例えば、「地域おこしと商業」という講座は、後半部分で、地域おこしと商業の関係を事例に基づいて掘り下げているので、大変参考になりましたね。
もし実地講座を開催するなら、都市型のテーマも取り上げてほしいです。都市部は、地方の過疎地に比べると恵まれた環境にありますが、地方と同じように少子高齢化や事業所の減少という難題があります。都市型の成功事例を紹介できる講師を招き、行政・金融・商工団体等、業種を越えて同じ課題を抱える人たちが集まり、参加者全員で解決策を議論するような場にできるといいと思います。

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松場  孝一さん
(まつば・こういち)

足立成和信用金庫
地域創生・課題解決担当参与

[プロフィール]
1955年千葉県生まれ。11歳のとき東京都に転居し足立区で育つ。東洋大学卒業。1978年足立信用金庫(現・足立成和信用金庫)入庫。6支店の支店長を務めた後、2012年地域連携・活性化特任部長(現在は地域創生・課題解決担当)に就任。2015年に定年を迎えて以降も、参与として業務を継続。足立中小企業支援プラットフォーム創設、区内大学との産学連携協定、工業高校・職業能力開発センターと企業とのジョブマッチング、「あだち菓子本舗」設立などに携わる。

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