「食と健康」で地方創生。日本の本物の食を伝えるdancyuが徹底取材。
第一回
世界が注目する「日本の薬草酒」
バーテンダーによる薬草づくりと薬草採取
バー「BenFiddich」のオーナーバーテンダー、鹿山博康さんが「ユートピア」と称する実家の畑へと向かった。そこに行けは、あの独創的カクテルが生まれる理由のヒントがつかめるのかもしれない。場所は、埼玉県ときがわ町。池袋から1時間ほど電車に揺られ、さらに駅からはタクシーで向かう。
畑にたどり着くと、バーにいるときの雰囲気とは別人のような鹿山さんが迎えてくれた。作業着に長靴。リラックスした表情で、愛しむように育てる植物を解説してくれる。
「これがジュニパーベリー。ねずの実ともいう、ジンの原料になる実です。こちらはゲンチアナの根。生はカクテルよりもっと苦いですよ」
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さらに山にも案内してもらう。清涼な空気の中を颯爽と歩を進める鹿山さん。気に止まった葉や枝は、躊躇なく揉んで香りを嗅いだり、かじったり。そこから、「これは、いける!」という発見があるのだという。
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鹿山さんの実家では、かつては乳牛を育てることを生業にしており、今は使っていない牛舎は、植物のフローラ―ウォータをつくる絶好のラボとなっている。採取した植物を蒸留して香りを凝縮した芳香水をつくり、それもまたカクテルに生かしているのだ。今は使わなくなった兄の部屋は、あたかも乾燥室のごとく植物が干されていた。
鹿山さんは、多忙な日々を送りながらも、夏なら最低でも週に一度は実家を訪れ、畑の世話をするという。それは、唯一無二のカクテルを生む材料を収集する実務でもあると同時に、植物に触れることが彼の発想の源でもあり、そして頭と心をリフレッシュするかけがえのない時間にもなっている。この先どんな薬草を植え、どんなカクテルに仕立てるのか。
無限の可能性を感じさせる。
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