地方創生「連携・交流ひろば」 | 地方創生のノウハウ共有掲示板と実践事例紹介人材紹介業務の実務に役立つコンテンツ【Vol.30】地域金融機関が「人材紹介業務」を成功させる秘訣とは?「求人対応におけるトラブルへの対策(その1)」

2022/11/4配信メールマガジンアーカイブ


 

【Vol.30】地域金融機関が「人材紹介業務」を成功させる秘訣とは?「求人対応におけるトラブルへの対策(その1)」


第29回に続き、地域金融機関における人材紹介業務を成功させる秘訣をお送りいたします。
https://www.chihousousei-hiroba.jp/recruitment/recruitment_NEW_inquiry.html


人材紹介業務は人の御支援に関する仕事のためリスクやトラブルもゼロではありません。
寧ろ人材紹介業務に着手したどの地域金融機関でも取組みが進み実績が上がるにつれ多かれ少なかれリスクやトラブルに見舞われた経験もあるかと存じます。
ただ、そんな側面があっても、4年近くの取り組みになっている金融機関もある中で、一行もレピュテーションリスクのようなトラブルに発展した事例はありません。
これは何故なのでしょうか?そんな観点も含めて今回はお送りしてみたいと思います。
前回同様、他行様と情報交換をできた中で得られた事例を中心にご紹介します。


特に今回は成約前のトラブルについてお伝えさせていただきます。
(成約後のトラブル対策については次回以降でお送りさせていただきます)

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1.成約前のトラブルと対策について
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■1. 成約前のトラブルと対策について
・紹介手数料の案内のトラブルと対策


初歩的な誤りは、求人企業に自行の人材紹介サービス申込をしていただく際に営業店や本店の専担者から正しい紹介手数料を求人企業に説明していないケースです。
例えば成約時に紹介手数料としていただく「入社された方の理論年収の35%」ということ自体を伝えていないのは論外でありますが、「理論年収」が何を指すのかや、ご請求や御支払いのタイミングや、万一の退社時の返戻金ルール等を正しく詳細に案内できていなかったために、内定者が出たタイミングで求人企業とトラブルになった事例も発生しています。
「そんなルールなら採用していない」「最初から案内なかったので割引をしてほしい」、そんな要求を求人企業から受けた事例もあります。


まずこの事例は、確実に未然に防げます。
求人企業と最初に求人内容の打合せをするタイミングで必ず人材紹介サービスの申込書を書面でお見せし、具体例も挙げながら詳細をご説明し御納得いただく形かと思います。
逆に丁寧に御説明しても御納得いただけない場合は無理に申し込んでいただかないことが重要です。
そして、このプロセスを定型的なタスクとしていずれの求人企業に対して必ず実施することが重要かと思います。



・面談時のトラブル(約束した日時での面談ができなかった)と対策
これも初歩的なことながら実際に起きている事例です。
多くは約束した日時の認識違いのケースですが、中には求人企業側や求職者側から当日に直前キャンセルが入ってしまうケースもありました。
採用面談という場においては、これらの事が求人企業・求職者にとって心証を害しその後の面談や面接に支障をきたさないように事前の取り仕切りをしておく必要があるかと思います。


求人企業・求職者側双方へ、「お互いに直前で都合が悪くなることもあるので、その場合は日を改めて調整」ということを予めお伝えしておけば実際にこういうケースが起きた際も夫々の心証は確実に違います。
また面談日の前日に双方に今一度の確認を入れておくということも効いてきますので、こうした作法もタスクとして定型化しておくことが重要かと思います。



・面談時のトラブル(求人企業からの一方的な面接になってしまった)と対策
地域金融機関の人材紹介担当者が求人企業と求職者の面談・面接に同席する場合、このようなお話を聞いたことがあります。
「求人企業側が採用してあげる(選ぶ)という意識が強く、候補者をテストする、というような面談・面接となり、結果として候補者側が応募意欲を失ってしまった」


地域中小企業が採用を通して人材確保を確実にしていくためには、地域中小企業が現代の採用市場を正しく理解している必要があると思います。
「採用市場は新卒、中途問わず買い手市場から売り手市場にシフトしている」
「求人企業が求職者を選ぶと同時に求職者も求人企業を選んでいる」
「多くの求職者は他社も併行して応募していることが多い」こういったことを踏まえて、面談・面接の場を考える、ということを、地域中小企業の経営者や採用担当者に予め共有していくことが実際の面談・面接に臨むにおいて非常に重要で効果的です。


この事例に見舞われた金融機関では、面談・面接の進行として
(1)先に求人企業側から求職者へ会社や事業の案内および今後の展開やミッションを説明していただく
(2)説明した内容への求職者からの関心や質問に応じてさらに話をし、その中で求職者の能力や資質を図る③求職者の履歴書や職務経歴書を見ながらの質疑応答は最後の方にもってくる、という形式にされたそうです。
これにより、面談・面接後の求職者側の入社意欲が上がるケースが殆んどになったとのことです。



・条件提示におけるトラブルと対策
「求人内容と違う採用内定通知の内容が提示された」こんなケースはどうすればよいでしょうか?
基本的には、人材紹介の立場である地域金融機関の担当者として、求人企業との面談・面接のプロセスにおいて明示的に確認をとってあげるのが大切です。
大きくは二つあります。


一つ目は「ミッション(業務内容)」「ポジション(職位・役割)」「サラリー(給与)」が変更になる場合です。
これについてはそもそもで面談・面接時に求職者を交えて合意するようフォローすることが大切です。
面談・面接後に求人企業側が一方的にこれらの採用条件を提示する形をさけるため、面談・面接後の求人企業へのフォローも必要となります。
そして変更があった場合は、速やかに求職者へのその旨連絡して御意向を確認したり、再度の面談・面接の場を設けたりするところまで含めてサポートしていく必要があります。


二つ目は、上記の要素以外の条件についてです。
契約期間、就業場所、就業開始時刻と終了時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、賃金の決め方、計算と支払方法、締日と支払日等、盛り込む内容の一つ一つについて、求人内容どおりの提示がされるか、具体的に求人企業と確認をする必要があります。
内定通知書等の書面もそのプロセスを経て作成いただくようフォローする必要があります。
これらの条項について違いが判明した場合は速やかに求職者へもお伝えし、御意向確認や調整を図ることが必須です。


なお求職者が御納得されない場合はその旨や条件調整可能かも含め、求人企業側へ調整することも含めて対応する場合もあるかと思います。
折り合いがつかない場合は無理せずに成約を見送る場合もありますが、強引に調整を寄せてしまって入社後に大きなトラブルになるよりは賢明な判断ですので、必ずその余地も持ってフォローをしていくことが人材紹介の務めだと思います。


いかがでしたでしょうか?
基本的なリスク・トラブル対策については、その事態が起きないよう常に前段のプロセスやさらに上流のプロセスで講じる内容を業務として織り込み定型化しておくことかと思いますが、一方で発生した場合についても同様に対応の仕方を定型化・標準化・可視化しておくことがポイントと考えます。