2021/12/15配信メールマガジンアーカイブ
【Vol.18】ケーススタディ-金融機関ならではの人材紹介事例(その1)
第17回に続き、地域金融機関における人材紹介業務を成功させる秘訣についてお送りいたします。
前回のテーマは「現実的な解決策の検討(その3)」でした。
今回のテーマは「ケーススタディ-金融機関ならではの人材紹介事例(その1)」です。
(当メルマガのテーマは、皆様からの御意見・御質問をもとに作成しております)
https://www.chihousousei-hiroba.jp/recruitment/recruitment_NEW_inquiry.html
人材紹介業務に取り組まれている皆様にとって、金融機関ならではの人材紹介がどうあるべきか、 どうやっていくべきか、まだまだ正解が得られていないことの方が多い状況かと思います。
収益化への施策、稼働バランスへの配慮、リスクやトラブルへの対策、行内への理解や連携の模索等々課題がある状況で、 ともすると方向性を見失うこともあるかもしれません。
そのような状況を踏まえ今回は、金融機関だからこそできる人材紹介の事例について改めて共有してみたいと思います。 これは嘗ての地域金融機関向け人材支援機関であった日本人材機構が地域金融機関とともに協同して実現した事例です。
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1. 求人企業の希望する人材像と異なる人材を提案したケース
2. 求人企業が検討していた事業展開・求人と異なる事業展開・求人を逆提案したケース
3. 異なる二つの求人を一つの求人要件まとめて成功したケース
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【1. 求人企業の希望する人材像と異なる人材を提案したケース】
ケース1:伝統部署の幹部希望から新部署の幹部候補へ人材要件を変更
金属製品(売上65億円、従業員数200人)を扱うA社の社長より「定年を迎える技術部門の常務の後任を探してほしい、
数百年続く企業である当社にとって、技術の継承と発展を担う人材は命綱だ」とオーダーがありました。
これに対し、「年齢の高い方が候補者となり、それでは数年後に同じ状況となる可能性が高いです。
見方を広げて、将来の幹部候補を採用しませんか」と問いかけました。
社長も理解はされるもののその打開策のイメージがわかず最初は合意を渋られていました。
その後、再訪してこの会社の強みと課題の整理のご支援を粘り強く行う中で以下のとおり提言してみました。
「国内屈指の伝統を持つ金属メーカーであり、ものづくりの力は申し分なく、取引先からの信頼も大きい。
一方、今後の成長のために、他社に先んじて、引き合いがクライアントから来るのを受けて受注生産を繰り返す
下請けメーカーからソリューション提案型の企業へ変革すべき。
技術と営業の両方を束ねる知見を有し、将来、経営陣に加わることのできる人材が必要ではないでしょうか?」
これに納得された社長からは「当社は時代時代の地域ニーズに応える形で変化を繰り返してきたからこそ、
数百年も続いているのであり、昔からの考え方としてこの提案は取り入れる必要がある」と合意をいただきました。
これを受け、営業技術室長というポジションの求人条件を作って求職者を探しました。
その結果、「大手メーカーで生産部門に従事した後に、中小メーカーに移籍し“生産畑で獲得した技術的知識”をベースとして
「技術面の分かる営業」として活躍していた方を御紹介し、その方にも当社の経営理念に共感いただいて入社に至りました。
【2. 求人企業が検討していた事業展開・求人と異なる事業展開・求人を逆提案したケース】
ケース2:海外展開のための人材を希望→国内展開を提案しそのための人材を提案
工業部品(売上35億円、従業員数300人)を扱うB社の社長より「この4~5年で売上が半分以下になってしまった。
何とか利益は出しているものの再浮上のために右腕となってくれる人材を探している」とお話をいただきました。
これに対し「右腕といっても、売上増加やコスト削減・収益性改善などの経営課題によって、人材像が異なってきます。
どのような課題を認識されていますか?」と問いかけたところ「やはり売上を増やすことが重要であり、
その解決のためには海外事業への進出が重要であるので、その経験のある右腕人材が欲しい」というのが当初の社長からの回答でした。
これを受けて社長とも会話しながら業界動向や事業分析を行ったところ「売上減の原因が主力部品のPCパーツとしての需要減にある、
PCパーツとしての需要減は国内だけではなく、世界的にも同様の傾向。海外に進出したとしても勝算のない可能性が高い。
主力部品は、”CASE”への大変革が進むはずで自動車業界においてニーズがあるのではないか」という仮説に辿りつきました。
丁寧に質問・傾聴・議論を繰り返した中での仮説であったため社長にも深くご納得いただきました。
これを受けて丁寧に粘り強く人材スカウトをかけ続けたところ、金属加工メーカー入社後に生産管理部門を経験し、
社内プロジェクトで自動車関連事業参入の新規事業立ち上げをされてきた方が見つかりました。
実際に面接した中で自動車関連事業での市場開拓の経験を多角的に有していることが判明し、
最終的に営業本部長というポジションで入社いただけることになりました。
【3. 異なる二つの求人を一つの求人要件まとめて成功したケース】
ケース3:2人の採用を希望→1人に絞った採用を提案
食品製造(売上8億円、従業員数100人)を営むC社の社長より「主力商品の市場規模縮小や工場火災で不振に陥り、
本業以外の事業に活路を求めたが、逆に傷口が開く結果になった。助けとなる人材を求めたい」とご相談がありました。
当社は明らかに再生フェーズにあり既存事業・新規事業と早急な立て直しが必要であり体制の強化も急務でした。
当初求める人材要件を社長に伺ったところ「自分が管理部門を担当し経営に専念できていない。その管理部門に1人と、
手つかずの営業部門に1人ずつ人材が欲しい」との回答でした。
ところが現在の事業状況、業務状況および人組織の状況をヒアリング・可視化しつつ課題の整理を行った結果、以下の分析を得ました。
「先代の遺産で会社も事業も維持されてきた側面が大きく、現社長には決定的に経営経験が不足している」
これを受けて社長へ提言したのは「社長を支え、再生に長けたターンアラウンドマネージャーが必要、・管理部門と営業部門に
それぞれ年収500万円の人材という考え方ではなく、1000万円を出してでも副社長クラスの右腕を加える必要がある」という内容でした。
「わからないでもないが、そういう給料の人間を入れたら既存社員との軋轢が生まれて逆効果ではないのか?」と、
最初は社長の合意を得られませんでした。
そのため一度、社長の当初のご希望どおり2つの人材要件に即した人材サーチをそれぞれ行い、
人材市場にどのようなキャリア・スキルの人材が実際にいるのか、どのような企業・仕事・職場環境を求めているのかを可視化しました。
結果、社長が望む500万円でしかも再生フェーズの企業へ好んで職を求めるミドル層の求職者はいない、ということを御理解いただきました。
その後、ターンアラウンドを経験されてたキャリアを持つ方を何人か御紹介し面接いただいたところ、現在の当社に必要なのは実際に事業再生を
経験した人材でないといけないと痛感いただき、採用する年収についても再生に向けた確実な事業投資であることを説いて御理解を得られました。
最終的に、大手飲食チェーンの経営企画を経験した後、親族の会社の経営に参画して再生に取り組み、負債の大幅減に成功した方が入社にいたりました。
いかがでしたでしょうか?日々の人材紹介業務は、地域金融機関であっても担当者クラスの人材ニーズの方が幹部人材のニーズよりも多く、
かつ取引先に対してこちらから幹部人材ニーズを喚起することも中々難しい中ではあります。
一方で、関係の深い取引先とは上記の事例にあるような人材紹介の推進は、地域金融機関にしかできないスタイルといえます。
現在すぐには実践できないかもしれませんが、求人企業との課題の整理や解決策の検討に伴走する数を増やしていけば必ず一つ二つできていきますし、
それをケーススタディとして営業店に展開してナレッジの共有を図りながら展開していけば、何れは多くの同類案件を作っていけるようになります。