2021/8/4配信メールマガジンアーカイブ


 

【Vol.11】【両手型の人材紹介業務】人材マッチング


第10回に続き、地域金融機関における人材紹介業務を成功させる秘訣についてお送りいたします。
前回の「【両手型の人材紹介業務】効果的な人材マッチングとは?」に続き、今回は「【両手型の人材紹介業務】人材マッチングにおける留意点」についてお送りします。
(当メルマガのテーマは、皆様からの御意見・御質問をもとに作成しており、前回のテーマである人材マッチングへの関心が高かった事から続編をお送りさせていただきます)
https://www.chihousousei-hiroba.jp/recruitment/recruitment_NEW_inquiry.html


前回の人材マッチングの説明で効果的な方法をご説明しましたが、「うまくいくことばかりではないのでは?」「注意すべき点はあるのか?」という御意見もいただきました。

これを受け、今回は以下2つの項目に沿ってお伝えしていきます。


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1. 人材マッチング全体を通した留意点
2. 人材マッチングのプロセスごとの留意点
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【人材マッチング全体を通した留意点】
まずは金融機関が両手型の人材紹介業務を行うにあたり、人材マッチングの工程全体における留意点を上げてみたいと思います。


■人材紹介業としての立場であることをお伝えすること
金融機関による人材紹介について、民間の事業者と比較して手厚い支援であるものの融資や他の支援への誘導や関連付けするものではないことをお伝えする必要があります。
少数ではありますが、人材採用を望む取引先の中には金融機関のすすめる候補者は優先的に採用を考慮しないといけないのではないかと配慮されるような経営者の方もいらっしゃいます。
そういった誤解をとくためにも「有料職業紹介として候補者を直接ご紹介や推薦はするものの、企業判断として自由に見送ることが出来る。その点で民間の事業者による人材紹介と変わらない」という旨を支援の早い段階からお伝えしていくことが重要となってきます。
これは人材マッチングの工程に入る直前というよりは、寧ろ求人企業への初回訪問時に金融機関による人材紹介業務の内容を説明する時点でお伝えするのがベストです。

一方で「民間の事業者との違いとしては、より適合する幹部人材を紹介できるよう経営課題の整理や解決策の検討、ひいては人材要件の最適化から実際の採用まで伴走的に手厚く支援する点であること(それでも民間平均と同じ35%であること)」も併せてお伝えするとスムーズな支援に繋がっていきます。


■人材マッチング(両手型の人材紹介)が有料(紹介手数料率35%)であることを伝達
これは過去に実際にあった事例ですが、「有料職業紹介として紹介した候補者の初年度年収の35%をいただく」ということについて、候補者を紹介する工程に入って初めて求人企業が認識する形となり、営業店含めたリカバリや調整に時間を要したというケースがあります。
求人企業への最初のアプローチは営業店が行うケースが殆どかと思いますので、この内容の伝達についてはトークスクリプトやマニュアルに落として営業店側にも運用徹底いただくことが現実的といえます。


■紹介する候補者が民間一般の転職DB等からのスカウト者であることを説明しておく
数多く人材紹介の支援をしていると、求人企業の中には金融機関が独自の人材ネットワークをもって紹介すると誤解されている会社も出てきます。
後々のトラブルや行き違いを避けるために、金融機関の人材紹介であっても民間の人材紹介会社と同じでビズリーチに代表されるような一般公開の転職DBから人材をサーチ・スカウトかけていることを早期に求人企業にお伝えしておくことも必須です。


■中立的な立場をとりながら双方のコミュニケーションをサポートする
民間の人材紹介会社と同様ですが、飽くまで「紹介者」という立場であり採用を決定し内定を通知する求人企業と内定受諾を決定する求職者の仲介をしている立場であるため、常に両者に対して中立的な立場を常に明確にしながら双方のコミュニケーションが円滑に進むようにサポートすることが重要です。
アドバイスを求められた場合も「こうした方がいい」と断定的に提案・進言するよりは「私ならこう考えます」と最終ジャッジや意思決定は企業側、候補者側に委ねられるようなリードの仕方が現実的といえます。
元々求人企業からも求職者からも「金融機関は知見や立場も含め信頼のおける対象」とみられている側面は少なからずあるかと思いますので、提案や提言が強すぎて強引なマッチングとなった結果後々で苦労する、といったことのないよう常々留意していきたいところです。


■企業も候補者も大切なお客様であることを認識しながら常にすすめる
金融機関が支援する求人企業が元々の取引先であることが殆どであるため、ともすると求職者の方もお客様であることが忘れられがちですが、人材紹介業務においては求人企業・求職者ともお客様と位置づけて支援していく考え方が非常に重要です。
特に求職者の方に対してはとある求人にて結果的に見送られたとしても他の案件でお声がけすることは十分にあり得るため、その意味でも常に求職者ファーストを心がけて人材マッチングをすすめることが必要となります。


【人材マッチングのプロセスごとの留意点】
人材マッチングにおいては、そのプロセスごとでも配慮すべき点があります。
①サーチ&スカウト
求人サーチ・スカウトに入る段階で求人企業側へは予め以下をお伝えします。
(1) 求人条件に合致する求職者にスカウトをかけても応募者が0人の場合、その旨報告して求人条件の緩和について相談しながらサーチを継続すること
(2) スカウト返信があっと求職者について金融機関として必ず事前面談を行い、求人企業に変わって企業および求人内容の魅力を直接お伝えすること、求職者のキャリア・スキル・性格を把握しながら求人企業へ応募の取次を行うこと
また新規案件でのサーチにおいて、過去に別案件でスカウトをかけたことがある方がリストアップされる場合は多々あります。このため求職者との接触(スカウト時や事前面談時)でやりとりした内容は簡便にでも記録を残しておき、新規案件での再度のスカウトの際にそれにも触れながらスカウトをかけることが非常に大切です。
(未然のトラブル防止に繋がることは勿論、求職者との信頼関係が向上し結果的に成約率の向上にも繋がります)


②事前面談
スカウト返信のあった求職者に対して事前面談を行う際に必ずお伝えすべきことは以下3点です。
(1)金融機関が転職の御支援をしている(開始した)理由を簡潔にお伝えすること
(2)金融機関として関係のある取引先(よく知っている取引先)からの求人であること
(3)求人企業への応募の手配から内定受諾および入社後フォローアップまで伴走支援を行う形であり、民間の人材会社より手厚い転職の支援であること
これをお伝えすることにより紹介者である金融機関への信頼、案件への信頼が向上する形となります。


③書類選考
応募者の書類を提出する際に推薦状をつけることは非常に効果的ですが、さらにそれに加えて求人企業にお伝えすると効果的なのは、「話を聞いてみたいという候補者には出来るだけ会ってあげてほしい」ということです。
理由としては以下のようなことが挙げられます。
(1)どこかの段階で採用を見送ることになっても、面談・面接の場を持ったことでこれまでにない知見や情報も入手できることが多く有用であること
(2)結果的に目金にかなわなくても最終的に候補者を絞り込むための比較にもなること
(3)あるいは転職市場にいる人材のタイプを図るためにも有用であること
(4)会ってみて初めてわかるキャリア・スキルもある、人柄や仕事への哲学まで知ることでレジュメ段階とは評価が大きく変わるケースも少なくないこと


④企業との面談・面接
面談・面接の前に求人企業側に説明しておきたいのは、会社側も選ばれる立場であるため、最大限のホスピタリティをもって各候補者に応対してほしいということです。
理由として「目の前の候補者が求人企業にとってお客様の立場に変わることも十分あること」や「世間一般に対して企業価値を知らしめる機会となること」等が挙げられます。
また「面談」「面接」の際に双方の会話が噛み合わない場合は、紹介者側からも企業側・候補者側のそれぞれに質問や問いかけをして、本来扱ってほしい双方の確認事項をクリアしていく橋渡しが必要です。


なお先述の「③書類選考」の項でも挙げましたが、初回面接の場の作り方にも配慮することが重要です。
マッチングが難しく候補者を集めにくい求人案件については、予め求人企業側にも求職者側にも正式な「面接」の前ステージとして(お互いに話を聞いてみる機会となる)「面談」という場を設ける提案をすることは特に有効です。


求人企業への提言の際は「転職市場は、求職者から求人企業が選ばれる時代へ変わっている、双方とも選ぶ立場にいる」ということを添えるとよりスムーズに「面談」の場を設定できます。


⑤選考で見送りになる候補者へのフォロー
いずれの選考段階でも求人企業が候補者の採用を見送りすることがありますが、その際もフォローの仕方に最大限配慮します。
採用お見送りを候補者にメールでお伝えするのに典型的な文面の一例として以下のようなものが挙げられますが、選考過程がある程度進んでいる場合は、こういう文面をお送りした上で更に御電話でもフォロー差し上げることが今後の候補者との関係のためにも非常に大切となってきます。


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御世話になっております、〇〇銀行の〇〇です。
お待たせしておりました、〇〇○様の求人の件ですが、
大変誠に残念で恐縮ながら今回はご期待に沿えない結果となりました。

此の度は大変残念な限りではございますが、私どもとしましては
御電話での事前面談にてお聞かせいただいた内容も踏まえまして、
また御関心いただけそうな案件が出てきた際には
改めて是非ご案内させていただきたく存じます。

今後とも宜しく御願い申し上げます。

〇〇銀行 〇〇
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