あじゃなん8(エイト)
あじゃなん/富山県・南砺市
富山県南砺市で2018年からスタートした「あじゃなん」。「あじゃあじゃ」とは、ごちゃごちゃ、カオスの意味で、「あじゃあじゃ南砺トーク」を略して「あじゃなん」。「なんでもいいから言ってOK、言ったことをみんなが耕してくれる場」をモットーに運営されています。
2018年には南砺市の各地区を順に巡って6回開催、2019年は2回目の開催、通算8回ということで、題して「あじゃなん8(エイト)」。歴史ある古民家を会場にアットホームな雰囲気の中、熱い会が繰り広げられました。
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8回目の「あじゃなん」、「あじゃなん8」の会場は、南砺市福野地区に残る、綿織物の商家だった大きな古民家。
しっとりした家並みが続く街の中でもひときわ目立つ大きな敷地を持つ旧家ですが、今は、地域おこし協力隊の河合さんが地域に開く場として活用されています。 -
スタート2時間前には、本日の3組のプレゼンターと運営メンバーが集合、プレゼンテーションの練習を行います。
今日のプレゼンターは女性が三人。お子さん連れで微笑ましい雰囲気の中、5分の時間に収まるように、そして、想いがより伝わるように、最後の調整を行います。
参加者にどんなアイデアを出して欲しいのか? が明確に伝わるように、プレゼンテーションの締めをチェックして、準備完了です。 -
外はすっかり暗くなり、この古民家の灯りに誘われるように、今日の参加者が三々五々集まってきます。
受付を担当するのは、城端地区で呉服屋を営みながら、まちづくりや新しいチャレンジにも積極的なメンバー。顔見知りの参加者も多く、楽しくアットホームな雰囲気で、参加者を迎えます。Facebookのイベントページの参加ボタンを押した人は10数名で、運営メンバーも当初気を揉んでいましたが、30人の参加者が集まり、いよいよ19時「あじゃなん8」スタートです! -
まず最初は、「あじゃなん」についてのオリエンテーション。今夜は初参加の方も半数近くいるため、今日のタイムテーブルを説明。そして、「あじゃなん」の立ち上がった経緯、目的、そしてこれまでの会について、また、「あじゃなん」の元になった「カマコン」についても紹介。みなさん熱心に聞き入りまっていました。
そして、オリエンテーションが終わると、いよいよプレゼンターの登場です。 -
一人目のプレゼンターは、出産・産後ケアを通じて、妊婦さん・産後のママと赤ちゃんをサポートする、安産ヨガ「ma・makana」を起業した井口幸子さん。
妊婦さんが出産の際に経験する苦痛について、ご自身の出生時のお母さんの話、ご自身の最初の出産経験を通じて、リアルに語り出します。
そして、二人目の妊娠中にヨガに出会い、これは出産の苦痛の低減に絶対いい!と確信して、一気にヨガ講師の資格を取得。二人目は苦痛なく気持ちよく出産できた経験から、安産ヨガの活動を始められたという経緯が語られます。 -
しかしその反響は今ひとつ、そこで妊娠出産の現場に入って現場の実情を知らなければ!と一念発起、産婦人科に看護師として勤務、その後改めて起業したという行動力に会場からは思わず感嘆のため息が。
「出産が苦痛なら、生まれてくる赤ちゃんも長い時間苦しんでいる。赤ちゃんを苦しみから助けたい!辛かった・痛かったというママの言葉で子供が傷つかないようにしたい!」という井口さんの深い思いに、若いママも参加している会場は共感に包まれました。そしてブレストのテーマは「安産ヨガをより多くの人に知ってもらうには?」です。 -
二人目は、南砺市地域おこし協力隊で井波地区のまちなか担当の松倉奈弓さん。今年6月に移住・結婚して井波で暮らし始め半年弱。早速、地区の貴重な資産を守りたい!という思いから、あじゃなんでのプレゼンに登場です。 本屋と美術館巡りが大好きという松倉さんが井波に地域おこし協力隊として暮らし始めて、出会った大きな課題が、「井波美術館」の存続問題。
大正12年に建てられた銀行の支店の建物は、その後旧井波町に寄贈され、長年美術館として運営されてきました。 -
しかし、建設当時、県下初の鉄筋コンクリートの建物だったという、大正モダンの銀行建築ですが、南砺市は維持費等の問題から売却を決定、長年運営を受託していた美術協会も譲受を断念、一時は存続できないという事態も危ぶまれましたが、今年末で美術館閉館後も、しばらく売却を延期、その間に活用策を探ることとなったのこと。
しかし地元からの活用策はまだ上がっていない、という現状に、松倉さんはなんとか、補助金に頼らず自立して存続可能な活用策を!と立ち上がりました。
ブレストのテーマは「どんな場所にしたいですか?」というアイデア募集です。 -
3人目は、コスプレイヤーとして活動する南部成美さんによる「南砺×オタク文化 井波でコスプレイベントがしたい!」。コスプレという趣味の楽しさ、奥深さ、そしてそのファンの広がりについて、数々の美しい写真とともに説明する南部さんの真剣さに会場が引き込まれます。
地域の街並みを活かしたコスプレイベントが、普段見過ごしていた街並みや建物の美しさを見直す機会になる、多くの写真がSNSやブログで発信され地域の認知度アップになる、地元の人と若者の交流が生まれる、コスプレイベントをきっかけに様々な人が街を訪れる、など、地域の活性化にも役立つことが語られ、会場は新鮮な感動に包まれました。 -
そして、地域の価値を再発見し、地域が光を浴びるきっかけになるコスプレイベントの価値を体験してきた南部さんだからこその、地元・井波で新しいコスプレイベントをやりたい! 歴史ある街並みの井波、素晴らしい木工・彫刻の伝統技術がある井波を舞台に、多くの若者が自分たちを表現し、井波を好きになってもらいたい! という熱い想いが語られました。
ブレストテーマは「井波ならではのコスプレイベントにするには?」というアイデア募集です。 -
プレゼンが終わると、いよいよブレストです。
参加者は、3組のうちどのプレゼンターをアイデアを出して応援するか、それぞれ選択します。
どうする?どうする? こっちかな? あっちかな? という声でザワザワしながら、ちょうど8〜9人くらいの3つのグループになり、プレゼンターを囲み車座になります。
ここで、カマコン型プレストは高速にアイデアを出すことであっという間にジブンゴトになってしまうのがツボなので、たくさんのアイデアを出すためのコツを皆さんに伝授します。 -
そのコツは、
1)ぶっ飛びOK!。どんな荒唐無稽なアイデアでも口に出していい。
2)乗っかりOK。人のアイデアに連想で乗っかるので構わない。人と違うことを言おうという努力は不要。
3)アイデアが出ないときは「いいね!」と大きくうなづいて声に出すだけで、貢献できる。
たくさんのアイデアを出す流れを質問で中断しないように、最初に質問タイムを設け、プレゼンターに聞きたいことを質問。そして、ブレストスタート!
さあ!グループ同士でアイデアの数を競いましょう! -
ポンポンと短い言葉で、みんなでアイデアを出して行きます。アイデアは後で数を発表するために、プレゼンターが紙に短くメモをして行きます。
ぶっ飛んだアイデアに、「それいい!」と笑いが起きるようになれば、もう何を言ってもいいんだ、どんどんアイデアを出そうという雰囲気が盛り上がり、ブレストの勢いは加速、隣のグループの笑い声が届くようになれば、互いにもっと出そう!という空気が充満し、部屋は熱気に包まれます。
約10分でブレストタイムは終了。短いようですが、たくさんのアイデアを連発した皆さんは、ちょっと息が上がるくらい興奮しています。 -
ブレストが終わると、各グループからアイデアの数と、一番盛り上がったアイデア、あるいは一押しのアイデアを1つ発表します。
一人目のプレゼンター井口さんのグループのブレスト結果は、アイデアの数は30個。
二人目松倉さんのグループのブレスト結果は、アイデアの数は21個、一押しのアイデアは「ミュージアムウェディング」。
三人目南部さんのグループは、アイデアの数はなんと64個!
一押しのアイデアは「井波の彫刻で立体的な背景の超すごい撮影スポットを作る」でした。 -
そして、次は、各プレゼンターのこれからのチャレンジを応援するチャンスです。
それぞれのプレゼンターが、次の一歩を宣言して、それを手伝ってもいい人! と呼びかけて挙手を募ります。
ブレストの熱気が残る参加者からは、続々と手が上がり、会場はその度の大きな拍手に包まれました。 -
通常はここであじゃなん定例会は終わりですが、今回の「あじゃなん8」では、追加でスペシャルなブレストをお願いしました。
この「カマコン特集」の「地域横断ブレスト」です。
地域横断ブレストのテーマは、「南砺から世界へ羽ばたくトップランナーを生むとしたら?」。
参加者が2つのグループに分かれ、ブレスト開始。すっかり高速にアイデアを出すブレストの要領をつかんだ皆さん、笑い声をを交えながら、活発にたくさんのアイデアを出してくれました。
熱気に包まれて、楽しさが充満する会場ですが、21時を回り、そろそろ終了の時間です。 -
「あじゃなん」のメンバーが編み出した、会の終わりに全員が一つになる温かいセレモニーが「リアルエンドロール」。
この会場を貸してくれた河合さん、
三人のプレゼンター
運営、準備を手伝ったそれぞれのスタッフ、
それぞれが順番に前に出て、一言感想を言っては、横にスライドして次の人が中央に出て一言・・・と、ちょうどドラマのエンドロールで左右に出演者・スタッフのクレジットがスクロールしていく様を模して、この会を支えたメンバーを称えます。
このリアルエンドロールは本当に会場が温かい感謝で一つになる素晴らしい時間でした。 -
集合写真を撮って、「あじゃなん8」本会は終了です。
みんなが取っているポーズは、南砺市の「N」。
そして、本会の後のお楽しみは、懇親会。このアットホームな会場に、手作りの自然派料理のケータリングと、地酒などのドリンクも飲み放題の楽しい時間です。
プレゼンターにさらにアイデアを出して応援する人、具体的な次の取り組みの相談をする人、近況を交換し合う人、南砺に最近移住してきた人にアドバイスをする人・・・ブレストの熱気で一つになった皆さんが、それぞれ思い思いに楽しく会話を重ねながら、交流を深めているうちに、あっという間に夜もふけていきます。懇親会は遅くまで盛り上がり解散となりました。
(写真協力:南砺市・千本松 賢一さん) -
<ブレストを終えて〜プレゼンターからのコメント>
井口幸子さん(左)
「プレゼンすることで、自分のやりたいことがより明確になって、皆さんからのアイデアで前向きな力が出ました!より多くの方に快感安産を伝えていきます!!」
松倉奈弓さん(中央)
「いつも街でいろいろ相談しても突飛なアイデアはなかなか出ないのですが、今日はたくさんの面白いアイデアが出て、実現してみたいものばかりでした!」
南部成美さん(右)
「コスプレという趣味の世界、若い人の文化を街の人に知ってもらうことができたのがまずうれしくて、それを受け入れてアイデアを出してくれる皆さんの空気がすごくうれしかったです!」
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運営メンバーから一言
「あじゃなん」の3大要素は、プレゼンター、スタッフ、懇親会で、いずれも「人柄」がポイントだと常々思っていたのですが、今回は本当にそれを実感しました。
実は、この秋の会をやろうか?となっても、最初は誰も反対もしないけど、誰も自分がやります!とも言わなくて、自分はどうしてもやりたかったので、リーダーを買って出ました。でも、準備も運営も到底一人ではできないので、本当に仲間に助けられました。身銭を切ってでも応援しようという人たちばかりで、その皆さんの温かさにとても助けられました。
すべての人にとって「ネットワークが広がる」そして「相談できる仲間、応援したくなる仲間ができる」ことが「あじゃなん」の意義だと思っていて、それが今日も達成できたのは、本当に参加してくれたみなさんのおかげです。
宝田 実 さん