イベント・調査報告

地方創生人材シンポジウム

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地方創生人材シンポジウム
~地方創生の深化と地方創生カレッジの創設に向けて~


レポート


開催日時 2016年6月5日(日)
     13:30 ~ 17:00(開場13:00)

会場   大手町サンケイプラザ 東京都千代田区大手町1-7-2

主催   (公財)日本生産性本部後援内閣府地方創生推進室、

     (一財)地域活性化センター、

     (公社)日本観光振興協会

定員   300名


     ※登壇者の所属、役職はシンポジウム実施時点のものです。



人口減少という「静かな有事」に、国と地方の共同作業による地方創生が求められている
主賓挨拶
石破 茂 氏(まち・ひと・しごと創生担当大臣)
1_ishiba_photo.jpg 石破 茂 氏

 地方活性化を考えなかった内閣はありません。しかし、これまでと異なり、今回の地方創生は、失敗してしまうと後がなく、国家の存立にかかわります。地方創生の流れは、絶対に不可逆的にしなければなりません。


 現在、日本には1億2700万人が暮らしていますが、このままの出生率と死亡率が続く場合、2100年には現在の半分以下になります。国家は国民、領土、統治機構からなりますが、そのうち、国民がこれまで経験したことのないような規模とスピードで減少していきます。これを「静かな有事」と言わずして何というべきでしょうか。


 今後も東京には、世界の中心として日本を牽引してもらわなければなりませんが、地方が衰退し東京だけが栄えるという日本はありえません。地方創生では、この両者をどうやって発展させるかに取り組む必要があります。


 地方創生とは、恵まれた自然条件などを活かすことができるということに気がついた人たちが一生懸命努力をしている取り組みを、国が情報面と人材面と財政面で支援するということです。そうでない取り組みには残念ながらお手伝いはいたしかねます。一生懸命なところとそうでないところとを同等に取り扱うと全部がダメになります。そのようなことをするつもりはございません。


 それぞれの地域において、どれだけの人が危機を認識し、責任を持つことができるかということが重要です。かつて、ケネディ大統領が就任演説で「我が合衆国市民諸君、合衆国が市民のために何をしてくれるかを問いたもうな。諸君一人ひとりが合衆国のために何ができるかを問うてくれ」、こういうような演説をしたのはあまりに有名なことでございますが、私は地方創生とは、それと同じだと思います。国は責任放棄をするのではありません。この地方創生というのは、国と地方との共同作業なのです。


 我々は、この自由で平和で豊かな国をなんとしても次の時代につなげる責任を持っています。そして、わが国は課題先進国であるがゆえに、この難しい課題を解決する責任を国際社会に対して持っていると思います。


 皆様方お一人おひとりが地域のために、次の時代のために大きなお力を発揮していただきますように、心からお願いします。

実行段階に移った地方創生:総合プロデューサーと分野別プロデューサーの育成を推進
主賓挨拶
伊藤 達也 氏(内閣府大臣補佐官)
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伊藤 達也 氏

 地方創生は、総合戦略の策定から、それを実行するステージに突入いたしました。しかし残念ながら地方の現場では、地方創生事業の推進をしていく専門性を身につけた人材が決定的に足りない状況にあります。求められる人材として二つのタイプを想定しています。一つは、総合プロデューサーです。首長を補佐し、戦略全体を俯瞰しつつ、リーダーシップを発揮し、関係者の方々との合意形成を行う、高い専門性を身につけた人材です。もう一つは、地方創生で推進される個別分野の現場に入り、中核の人材として活躍することができる分野別のプロデューサーです。


 現在、大学等いろいろな教育機関の方々が、地方創生をテーマとしてさまざまな取り組みを推進しておられます。私どもはそうした関係者の方々と連携し、地域の個性を未来につなげていく人材育成を推進していきたいと思っています。


 地方創生には二つの目的がございます。一つは人口減少の克服、もう一つが地域の成長力を取り戻し、いわゆる地方版の成長戦略であるローカルアベノミクスを推進していくことです。そのためには地域の中で若い人たち、働き手にとってのやり甲斐のある価値の高い仕事をつくり出していかなければなりません。具体的な取り組みとしてローカルイノベーションを推進し、地域の魅力のブランド化を図り、さらにサービス生産性を向上させていく。働き方改革など民間の活力あるいはノウハウを積極的に活用していくことが重要です。そのためには官と民をつなぐ人材も必要であり、専門性を身につける場を地方創生カレッジの中でもつくり上げていきたいと考えております。


 地方創生カレッジは年内に開校し、2年から3年間で約1万人の方々の受講、5年間で高度な専門性を有する人材を500名以上輩出することを目標に掲げております。


 地方創生に対して大きな志を持っている方々が、必要とする専門性を身につけて、地域の個性を未来につなげていく、未来を自分たちの手で変えていく、そうした人材を今日参加される皆様方と一緒になって作り上げてまいりたいと思います。皆様のご尽力、ご協力をお願いいたします。

地方の経営者に求められる、ローカル経済の多様な担い手が集うための仕組みづくり
記念講演 「地方創生の加速化に向けた課題」
松本 順 氏((株)経営共創基盤 パートナー/代表取締役マネージングディレクター)
3_matsumoto_photo.jpg 松本 順 氏
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 地方創生を推進するためには民間、市民、行政の三つの主体が役割を果たしていくことが重要だといわれております。私の役割は、特に、民間セクターの努力についてお話しすることだと思います。


 優れた人材がローカル経済の担い手として活躍しているケースは既にありますが、まだ、世の中のメインストリームにはなっておりません。地方の経営者にとっては、さらに多くの優秀な人材が欲しいけれど、思ったようには集まらないというのが現状だと思います。


 地方に留まる、地元にUターンする、あるいは地縁はないが、どこかの地域に移住して働く、そういう生き方が、もっと、有力で、夢のある選択肢とすることができないだろうか。
私はそれを実現していくために第一に必要なことは、ローカル経済の中小・中堅の企業経営者が人材を引き寄せる努力をすることだと思います。必要な経営上の努力には二つあります。一つは、社員が遣り甲斐を感じるような仕事のさせ方をすることです。ローカル経済だからこそ社員が遣り甲斐を感じ、社会とのつながりを、手触り感をもって感じ取ることのできる仕事が実はたくさんあります。仕事における社会性を社員に気付かせることは、経営者や上司の役割です。


 もう一点は、報酬です。報酬が重要な決定要素であることは間違いないのですが、その報酬は生産性を背景としています。経営者は、働く人の努力次第で生産性が上がるような仕組みの仕事や組織をつくること。そして、働く人が実際に頑張ったらそれに応じた賃金を払わなければなりません。生産性は、社員一人ひとりが自ら高めるものでもありますが、経営が仕組みを整えることによって生産性を上げられる幅のほうが大きいといえます。


 多様な学歴、多様な出自、幅の広い年齢の人材がすでにローカル経済の担い手として役割を果たしている実例があります。これらが今後メインストリームになるように、皆様方とともに仕組みを整え、また、私どもとしては民間事業者らしく働くことの魅力を高めていきたいと思います。

パネルディスカッション
「地方創生の深化に向けた人材育成のあり方を探る ~地方創生カレッジの創立に向けて~」

【発言順】
モデレーター:間宮 淑夫氏(内閣府地方創生推進室 次長)
パネリスト:椎川 忍氏((一財)地域活性化センター 理事長)、関 幸子氏((株)ローカルファースト研究所 所長)、岡崎 正信氏(オガールプラザ(株) 代表取締役)、宇田 左近氏(ビジネス・ブレークスルー大学 副学長)、見並 陽一氏((公社)日本観光振興協会 理事長)
4_mamiya_photo.jpg 間宮 淑夫 氏
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地方創生人材の集約的な育成プラットフォームづくりによる
人材育成の相乗的効果を 


間宮 淑夫 氏(内閣府地方創生推進室 次長)


 地方公共団体の皆様に、昨年度末までに、地方創生に関する要となる総合戦略を策定いただき、この4月から、それぞれの総合戦略に基づく具体的な調査、事業が本格的に開始いたしております。


 自治体や事業者の方々と意見交換いたしておりますと、課題といたしまして、様々な政策あるいは事業を推進できる専門性を有する人材が、地方、地方公共団体、地方の企業、あるいは推進プロジェクトの現場で非常に不足しているという声を耳にします。
これを踏まえて、国では、「地方創生人材支援制度」、「プロフェッショナル人材事業」、「地方創生人材プラン」という三つの取り組みを、既に実施するか、これから始めようとしております。


 最初の「地方創生人材支援制度」。これは、比較的規模の小さな市町村を対象として、国家公務員、あるいは大企業の社員の方を派遣して、その地方公共団体の実施する地方創生事業を手伝おうという、人材派遣・支援制度です。平成27年度に創設し、現在69の市町村に対して行っております。


 次の、「プロフェッショナル人材事業」。これは地域の企業が対象です。例えば、海外展開や、新規事業展開のノウハウを持っていない地域の企業がある一方で、東京の大企業で、国際的なお仕事をされていた方で、地方に移り、自分の力をさらに活かしたいという方がいる。両者のニーズを結んで、プロフェッショナル人材を地方の中小企業に引き合わせる事業を進めております。現在、全国46道府県にプロフェッショナル人材拠点を設け、地元で有力な方に拠点のリーダーになっていただき、地域の中小企業と、いわば東京等の大企業の人材を結ぶ活動を展開しております。


 3つ目ですが、先ほど石破大臣、伊藤補佐官のそれぞれのお話にもございましたように、地方創生事業-例えば、まちづくりや観光DMOといった事業で、戦略的な全体像を描く人、プロジェクトの現場に入って事業を実践するといった人材が不足しているということで、国としては「地方創生人材プラン」を策定し、それに基づいて地方創生カレッジを創設していこうと考えております。


 地方創生の人材育成に関してさまざまな大学、機関が取り組みを進めておられますが、各々の取り組みは必ずしも全国的に周知されている状況にはなっておりません。そうしたことから、国として、さまざまな大学や大学院、いろいろな団体の取り組みをワンストップで一元的に見ることのできるプラットフォームをつくり、プラットフォームに参加した方々が話し合える連携の場をつくったうえで、それぞれの取り組みを補い、あるいは相乗効果を発揮するようなカリキュラムを備えた地方創生カレッジを創設し、地方創生に関する人材を育成していくことを目指しております。2~3年で1万人の受講者、5年間で高度専門人材500人以上の輩出を目指し、さらに育成した人材と地方創生事業の現場とのマッチングを考えております。


 年内12月にはカレッジの開校を目指して、パネリストの皆様あるいは関係の大学教育機関の皆様、あるいは本日ご参加の皆様から幅広くご意見、あるいは地方創生人材育成へのご参加などを募りながら事業を進めていきたいと思っています。

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椎川 忍 氏
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求められる人材育成の体系的プログラムと
バウチャー発行の検討


椎川 忍 氏((一財)地域活性化センター 理事長)


 一般財団法人地域活性化センターは、ひとづくりのための各種研修・交流事業に取り組んでいます。例えば、平成元年に誕生した全国地域リーダー養成塾は、今年度で28年目になり、これまでに935名の方が修了され、首長、議員、商工会議所の幹部、地域コミュニティのリーダーになられるなど、さまざまな人材を輩出しています。これからも、私たちが地域に役立てる組織をとなるよう、ひとを育て、コミュニティを再生し、地域を輝かせるとともに、将来的には「地域力創造大学校」を目指し、イノベーション、現場主義、アクティブラーニングを重視して取り組んでまいります。


 さて、これまでの私自身の活動も含めて振り返りますと、地方創生に重要なのは、やはり人材だと思います。しかし、リーダーの育成については、これまで、体系化されたプログラムがありませんでした。また、自治体では、人材育成にお金が回りにくい。このためバウチャー(サービスの利用券)を発行し、自治体の財政負担軽減をすることで人材育成促進を図ることも検討すべきだと思います。バウチャーが無理なら、人づくり交付金を考えてもいいのではないでしょうか。


 地方創生に求められる人材像とその育成方法についてですが、地域は、幸せを求めるという一点において人が集まっています。これが企業とは異なる点ですが、持てる資源や人材をいかに組み合わせ、活用して成果を出していけるかなどという点では、地域経営は企業経営となんらかわりません。そのためには、さまざまな人材が必要となります。


 地域のコミュニティ・リーダー育成については、深い専門性までは求められませんが、幅広い分野について勉強することが必要となります。加えて、地域おこしを進めるうえでは、リーダーに対するフォロワーの理解も重要です。また、観光や農業などといった専門人材は、その専門分野について深い知識が必要となるうえ、自分たちのことだけでなく地域貢献のようなこともできる人材に育てていく必要があるため、その育成には大変難しいものがあると考えております。


 Eラーニングで学ぶことができる地方創生カレッジは、コスト負担軽減が期待でき、非常にいいアイディアだと思います。ただし、Eラーニングだけでなく、スクーリングによる実践指導との組み合わせ、バランスを考えることも必要だと思います。


 そして、一番重要なことは、本当に役立つしっかりしたものをつくることだと思います。そのためにも、2~3年かけてコンテンツ等の拡充を実施していただくことを切に願っています。

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座学と体験の連鎖による人材育成だけでなく、
権限委譲による人材育成の環境整備も
 


関 幸子 氏((株)ローカルファースト研究所 所長)


 

 私は、東京都三鷹市で30年間、公務員として働きながら、第三セクターを含む3つの会社のガバナンスを担当してきました。そうした経験も踏まえて、地方版総合戦略で策定された目標を、具体的なプロジェクトを通じて達成していくシティ・マネージャーの選定などにも関わっております。


 シティ・マネージャーには6つの能力が必要だと考えます。地域の資源として活用できるもの、不足しているものを分析する力、地域総合戦略の目標を具体的にどのような事業によって達成していくのかを構想する力、事業主体を見つける、創る、生む、借りるなどといった際に、必要な人を知っているかという人脈、国と地方をつないでいくコミュニケーション力、交付金が半減するなかで事業資金を調達していく能力、不確実な状況でも悩み過ぎずに、実際にやる、早くやるという楽観主義です。地方創生カレッジでもこうした能力が体系的に身につくカリキュラムが作られることを希望します。また、こうした育成の際、座学と体験の連鎖がとても重要だと思います。


 その一方で、地方創生の人材育成では、人を育てることだけに力点を置かないで、その人自身が育っていくという視点も大切だと思います。そのためには環境を整えることが一番重要です。具体的には、人事権、責任を明確化したうえでの業務権限、予算、時間の4つの権限を差し上げて下さい。この4つを差し上げれば、人は否応なく育ちます。徹底的に、決定、決断することが求められるからです。こうしたことも可能となる育成プログラムの開発を一緒にできればと思います。


 総合戦略でシナリオは書きましたが、絶対に効果があるかどうかは、やってみないとわからない。思い切ってやることが必要です。今回の地方創生人材カレッジが、人が育つきっかけの一助になり、地方創生の効果をあげることを望んでいます。

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岡崎 正信 氏

需要を探りだす力のある人材、稼ぐ力を持った人材の育成を 


岡崎 正信氏(オガールプラザ(株) 代表取締役)


 オガールプロジェクトは、遊休地となっていた公共用地を活用して、補助金に頼らず、いかに経済的利益をあげていくかというところから始まりました。


 外国に旅行していても感じることですが、人間の気持ち、人の望むことがわからなくて人を呼ぶことはできません。オガールプロジェクトでは、ライフスタイル寄りのまちづくりを実践しています。こうしたこともあり、視察にも訪れていただいていますが、そうした方に、何をもって地方が創生したことになるのかと聞けば、答えられない人がほとんどではないかと思います。


 紫波町長は明確でした。「岡崎君、町には金がないのだ。税金を稼ぐのは民間だ。町は、税収の再配分の際に地域がよくなるように頑張るから、とにかく税金を稼いでくれ。そのために君に土地を委ねる」と言ったのです。


 その後、私は東洋大に入学し、「公民連携」について学ぶためにアメリカに渡り、そこでフランク・シュニットマンという人から2つのことを教えられました。一つは、「バンカブル(bankable)になれ」。つまり、投資してもらった資金をきちんと回収できる事業を作れるようになれと言うことでした。もう一つが、「金がないならニッチ・テール(niche tail)を事業化しろ」と。隙間-どこにもないものを事業化しろと言われました。私が作ったバレーボール専用体育館は、世の中のどこにもありませんでした。


 地方創生カレッジでは、金融的な視点と稼ぐ力を持ったバンカブルな人材とニッチ・テールを事業化するような人材の育成という視点をぜひ取り入れてもらいたいと思います。


 誰も思いつかなかったけれどもマーケットが確実にあるものの発掘や、新たにマーケットをつくっていくことは民間に任せて、国には、稼ぎが最大化するような仕組みづくりを進めていただきたいと思います。

8_uda_photo.jpg宇田 左近 氏
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前例のない課題に自ら考えて答えをだせる人材育成の場づくりを 


宇田 左近 氏(ビジネス・ブレークスルー大学 副学長)


 

 ビジネスブレークスルー大学は株式会社立の大学で、100%オンラインで経営学の学習を提供し、約1,000名の学生がスマホ、あるいはパソコンで授業に参加しています。学生は地域という意味では世界99カ国、国内でも全国各地から参加しており、平均年齢はおよそ30歳、高校卒の入学者が3割、社会人が7割程度を占めます。高校からの受験生だけではなく、既に国内外で働いている人たちに大学での学びの機会を提供することに意味があると私たちは考えています。


 地元の高校生を採用する地方企業などが、オンライン大学での学位提供機会をインセンティブにしているというところもあります。そこで求められているのは、価値や利益を産み出していく人材-起業家です。地方創生でも、前例のないときに自ら考えて答えを出せる人、事業をつくることができる人が求められています。つまり、地方創生人材の育成は、起業家育成と同義です。


 そうした人材の育成は難しいことですが、私たちはそれに挑戦しています。例えば、私たちのビジネス・インキュベーション・センター(BIC)には、起業したい人たちに加えて教員をはじめとした様々なサポーターが集まり、オンライン上で議論をします。実際に集まり交流することもあります。「どういう方法が良いだろうか」、「誰を紹介すればうまくいくだろうか」-起業したい人が持ち寄ったビジネスのタネを一つの事業まで持っていくため、シリコンバレーのようなサポートの仕組みを設けています。また、リアルタイム・オンライン・ケーススタディでは、「もし、あなたが〇〇市長なら、△△社の社長なら、どういう解決策を示すか」という議論を、学長を中心に毎週実施しています。


 地方創生カレッジに望むのは、予め用意された答えを見つける技術ではありません。ここにアクセスすれば実学的、実務的な能力の高い人と議論できたり、洞察を与えてくれ、自分なりの答えを見つけられるというプラットフォームです。地方創生カレッジがこうした場になることを期待します。

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見並 陽一 氏
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世界に通用する観光地域づくりのための組織と人材育成を 


見並 陽一 氏((公社)日本観光振興協会 理事長)


 現在、観光振興は国の大きな目標になっています。


 この2年間で訪日外国人旅行者が倍増し2000万人となったことを受け、国では訪日外国人旅行者数の目標を2020年に4000万人、2030年には6000万人へと上方修正しました。これは世界の中の観光大国を目指すことにほかならず、しっかりとした観光振興策が必要となります。また、観光は裾野の広い産業で、地域の中小事業者の方々が担っているため、観光が元気になれば地域が元気になります。地方創生には観光の力が重要な役割を担います。さらに、観光客が訪れることで震災・災害地域復興の大きな力になります。


 こうした観光振興に必要なことは、世界に通用する観光地域づくりを各地で続けることです。例えば、日本人対象の短期の国内旅行とは異なり、訪日外国人旅行者を呼び込むためには、四泊五日、一週間といった長期の旅行に耐えられる広域観光の確立が必要です。


 そのためには、DMO(Destination Management/Marketing Organization)と呼ばれる推進組織のもとに、地域そのものを商品にすることができる人材、推進組織をマネジメントする能力、マーケティング力を持った人材を集め、魅力的な観光地づくりを恒常的に進めるようにすることが必要です。



 各地の観光協会を、お金を使う組織から、お金を稼ぐ組織に変えていかなければ、世界に通用する観光地は出来ないということで、私どもは今年から、日本観光振興アカデミーを設けました。一番の柱がDMOです。


 諸外国の例を見ますと、人材育成プログラムの成果が地域で実感されるまでに10年位かかっています。その意味では、長期的な観点でこの取り組みを進めていきたいと考えています。


 地方創生といった事業は、ややもすると中央主導型になってしまいます。常に地方、地域のことを視点に入れていただきたい。特に観光の場合は、温度差やばらつきが地域によって顕著に現れています。ネットワークによって自分たちのやるべきことが明確に見えるようなカレッジになってほしいと思います。


講演の様子
石破 茂 氏


伊藤 達也 氏


松本 順 氏


パネルディスカッション 前半


パネルディスカッション 後半

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