1. ホーム
  2. 地方創生実践事例
  3. 地域活性化を戦略的に支援

地域活性化を戦略的に支援

井手修身氏

福岡県福岡市
イデアパートナーズ株式会社 代表取締役
NPO法人イデア九州・アジア 理事長
井手 修身 氏

イデアパートナーズ株式会社は、集客イベントの企画や施設の再生、特産品の開発などを通して、地域の観光・まちづくりを支援する企業だ。社長の井手修身さんは、株式会社リクルートで全国の地域活性事業に携わったあと、独立。九州各地で、地域の資源を発掘して磨きをかけ、マーケティングを導入して売れる仕組みをつくるという戦略的な手法で、地域活性化を手がけてきた。2010年には、NPO法人イデア九州・アジアを立ち上げ、福岡を中心に集客・交流サービス事業を展開している。

主な取り組み

◎福岡の街を飲み食べ歩きするまちづくりイベント「バルウォーク福岡」の企画・運営
◎西鉄バス利用の着地型商品「FUKUOKA体験バスTICKET」の企画・運営
◎九州産の肉(ジビエ等)、野菜、酒にこだわったレストラン「情熱の千鳥足 CARNE(カルネ)」を運営
◎長崎県波佐見町(はさみちょう)の地域再生を支援
◎長崎県小値賀町(おぢかちょう)の古民家再生宿泊施設の運営支援
◎熊本県南阿蘇村の特産品ブランド「みなみあそ くらしのめぐみ」の開発・販路開拓
◎「福岡県観光連盟 DMO人材育成」、「くまもとむらづくり人材育成塾」などの人材育成支援
◎まちづくり、人づくりに関わる異業種交流会「イデア塾」を主宰
 など

地域の課題解決を専門家として支援

――井手さんが福岡で、地域活性化を支援する専門集団としてイデアパートナーズを起業された経緯を教えてください。


井手:僕はもともとリクルートで地域活性事業をやっていたのですが、地域活性事業部が廃止されることになり、それまで築いてきたネットワークを生かして、九州で旅館の再生と地域活性の仕事をやろうと思って立ち上げました。基本的には、地域の資源を活用して、それが経済活動につながるような仕組みづくりをお手伝いしています。


――仕組みづくりのお手伝いというと、地域に受け皿となる組織があることが前提になりますか。


井手:それはできていないことが多いですね。地域に何らかの資源があって、それを活用したいという思いはあるけれども形になっていない、あるいは立ち上げたもののうまくいっていないというケースもあります。では、誰がどういう組織でという話になるので、組織づくりや人材の採用からのお手伝いもします。


――例えば長崎県波佐見町の地域再生のケースでは、どういう関わり方をされてきたのでしょうか。


井手:波佐見町は400年の伝統がある陶磁器の町ですが、窯業の生産額が最盛期の3割近くにまで落ち込んで疲弊していました。なんとかしたいという地元の商社の方から声をかけていただいて、まだリクルートにいた時に行ったのがきっかけです。

 最初にNPO法人を立ち上げて、窯元工場跡の廃屋を、人が集まる拠点に再生させるお手伝いをしました。その拠点に人が集まり始めると、それがきっかけになって民間から次々とアイデアが出始め、レストランや温泉センターをつくるお手伝いをしました。10年かけて観光客が50万人ぐらい増え、宿泊施設もできて、今では長崎県の一大集客地になりました。

 少し行政の補助金も使わせていただきましたが、やはり地元でビジネスをされている民間の方と長くお付き合いしながら、一緒にまちづくりに関わっていったことが大きかったと思います。


――地域の潜在的な力を引き出し、それを支援するという立場で仕事をされているのですね。


井手:はい。僕たちも一緒にやるのですが、僕たちが主体で動いては長続きしません。やはり地元の方たちが主役なので、僕たちは黒子役になって、皆さんが動きやすいように準備をしたり、道筋をつくったりして、後ろから支えているイメージで仕事をしています。

 一方、NPO法人イデア九州・アジアは自社事業です。もちろん、いろいろな企業と一緒に仕事をしますが、こちらは基本的に自分たちで、福岡を中心に「バルウォーク」や「体験バスTICKET」などを企画・運営しています。


スキルやノウハウよりも資質

――ところで、組織づくりや人材採用から支援されるということですが、まちづくり会社などで人材を採用する場合には、地元にこだわったほうがいいのでしょうか。


井手:地元の方でなければできないということはないので、全国公募でいいと思います。もちろん地域のなかの方も人材ですし、今は地域おこし協力隊などの形で外から入ってくる方も多いです。外部の人のほうが、しがらみがなくて活動しやすいですが、内側にいてそれを応援する人がいないとうまくいきません。そこは両輪だと思います。


――外から入ってくる人材には、どういう能力が求められますか。


井手:共感力、コミュニケーション力、調整力、やり続ける習慣などでしょうか。地域の個別性や人間関係のなかで構築していかなければならないものがあるので、スキルやノウハウを習得したからといって、ただちに実践できるものではありません。まずは、きちんと挨拶ができたり、人とのつながりを大事にしたりするほうが、外から入ってきた場合は大切です。そういう個人の行動特性、いわゆるコンピテンシーがあった上で、スキルやノウハウを磨くのがいいと思います。


――それは、人材育成の講座などで学んで身につくものでしょうか。


井手:学んで身につくというより、資質でしょうね。人材育成塾で募集をかけると、さまざまな参加者が集まります。僕たちができることは、いわゆる気づきとか動機づけ、つまり、参加者が、他人と一緒に何かを行うことで発見することがある、というようなことでしょうか。


地方は営業力を求めている

パンフレット1パンフレット2 イデアパートナーズが関わる九州各地の集客サービスなどのパンフレットが並ぶ

――人材育成塾で座学で学べることがあるとすれば、何でしょうか。


井手:DMOに関して言うと、地域のマーケティングです。地域をマーケティングするとはどういうことなのか。どういう調査の手法があるのか。顧客をきちんとターゲティングして、そこに対して商品をつくり出すという手順については、一定のスキルを提供できます。ただ、これについても、講義だけでは「はぁ、そうですか」で終わってしまうので、演習や実践が必要です。


――講義で学んだことを実践する演習の場も重要ということですね。


井手:そうです。例えば、広島県から受託した「ひろしま『ひと・夢』未来塾」は全6回で、毎回座学とワーク(演習)を繰り返して、最後にプレゼンテーションをやります。マイプランといって、個人の事業計画を毎回ブラッシュアップしていって、最後に発表する個人ワークと、それをグループで一緒にやって発表し合うグループワークの両方があります。講師陣による講義だけでなく、参加者が主体的に参加し、意見を言うことが重要です。そういうアウトプットがないと、参加者が地域に帰って活躍できません。


――今後、地方創生にはどういう人材が必要だと思いますか。


井手:調査分析能力、コミュニケーション力、折衝力、モチベーション、何かを突破する力も求められますから、相当に優秀な人材です。僕としては、民間企業で一定の営業経験を積んだ人に来てほしいです。地方には、営業力と販売力が欠けています。地方の産品の価値に気づいて、地域づくりに共感できる人にガンガン活躍してほしいですね。


■ ■ ■


プロフィール

井出修身氏  

井手 修身(いで・おさむ)


観光まちづくりのプロデューサー。熊本大学卒業。1986年株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)入社。全国の地域活性事業を数多く手がけ、2006年イデアパートナーズ株式会社を起業、九州を中心に旅館・ホテルの再生支援と地域活性化のプランニングに携わる。2010年NPO法人イデア九州・アジアを設立、理事長。DMO推進機構常務理事。内閣府「地域活性化伝道師」。

DATA

組織・団体名  イデアパートナーズ株式会社

住所      〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神4丁目2-36 天神第一ビル4F

設立      2005年

Webサイト   http://www.idea-p.co.jp/

パンフレット1.gif

この事例に対するレビュー






    タグ

    • 地方創生実践事例
    • 観光・DMO
    • 人材育成
    • マーケティング
    • 地域活性化
    • 九州地方

    シェアする