- 地方創生カレッジ講座情報
第3回「地方創生カレッジonワーケーション」研修を開催しました
日本観光振興協会 観光地域マネジメント担当 | 2022-02-21 17:09:01
2022年2月16日に、第3回「地方創生カレッジonワーケーション」研修を開催しました。
前回の講義では、すでにワーケーションを取り組まれている3名の地域実践者の方に、取組の経緯や内容などをご発表いただきました。ワーケーションを通じて目指しているもの、ターゲット、具体的な取組内容等、3地域それぞれ異なることがわかりましたが、地域資源や立地特性を考慮しながら、ワーケーションに取り組む目的やターゲットが明確であることは共通していました。
今回は、受講者の皆様への事前課題としていたワーケーション事業やアイディアの中から、3名の方にワーケーション取組案をご発表いただき、田中先生、前回ご発表いただいた3名の地域実践者の方(鳥取県の岡本様、信州たてしな観光協会の渡邉様、ナカガワ・アドの中川様)からコメントをいただきました。次に、その3つの取組案をモデルに、3グループに分かれてグループディスカッションを行いました。最後に、田中先生と実践者の方によるクロストークを行い、グループディスカッションの共有や今後のワーケーション展望をお話しいただきました。
◆今後取り組んでみたいワーケーション
(1)かすみがうら版ワーケーション実証プロジェクト
茨城県かすみがうら市産業経済部 理事 高井 淳 氏
今年度、3回にわたりモニターツアーを実施するなど、すでに取組に着手されているかすみがうら市様ですが、ターゲットや目的の絞り込み、4つのステークホルダーにとってのメリットを再検討し、次年度は研修型ワーケーションに取り組みたいと発表されました。
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○高井 氏
新事業創出や企業誘致を目指す中で、週末に人が集まる古民家ホテルを拠点にワーケーションを仕掛けることで、平日の集客や滞在のしかけに取り組みました。昨年11月からモニターツアーを3回実施しましたが、毎回テーマも異なりターゲットも幅広く設定しました。
次年度は地域との交流に、より重きをおいた課題解決型に絞り、4つのステークホルダーのメリットを意識したプログラムにしたいと考えています。持続可能な感性を養う中でビジネスにもいかすSDG’s、地域体験留学でもある親子ワーケーション、市内の畑などを活用して次世代農業技術の実証実験や新規ビジネス創出につながる農業の3つをテーマとします。これらは長期滞在にむけた仕組みづくりでもあり、経済効果だけでなく新たなパートナーシップ構築などの地域への効果があると考えています。
■渡邉 氏
ちゃんとストーリーができていて順調に進んでいらっしゃる。分野を問わず大学生とコラボするのは非常に良い。宿泊施設など受け入れ施設を増やしたほうが良いのでは。
親子連れワーケーションは小学生以上だと長期休暇中が対象となり、わざわざ保護者が仕事をするのか疑問。思い切って未就学児のみ対象など。
■中川 氏
地域との交流をメインに考えているなら地元事業者でも外から来た方でも巻き込む仕掛けが大切。最終的には人と人のつながりでその人に会いに行く「旅ワーケーション」などユニーク。美馬でも冬は全然観光資源がないのでサウナワーケーションに取り組んでいる。
■岡本 氏
地域課題解決というのは地域側の負担が大きく、対応できるプレイヤーも限定されがちなので地域周遊型のワーケーションなど、組合せで考えてもよいのでは。
コミュニケーション継続も重要、関係性を持たせていく仕組みがあるとさらに広がる。
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(2)温泉地から地方創生「湯原・環桶(ワーケ) ーションおもてなし事業」
岡山県 一般社団法人 真庭観光局 総務部 田中 賢一 氏
真庭観光局様は平成30年に設立された地域連携DMO法人です。今年度モニター実証に取り組まれましたが集客に苦戦され、ターゲット、受入整備、認知度向上などに課題があると考え、見直しのご提案をいただきました。
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○田中 氏
今年度は環境省の滞在型ツアーワーケーション推進事業で機器の貸出、体験プログラム提供、地域事業者との意見交換会などを行い、内閣府の交付金事業で施設整備を実施しました。
今回の研修で知らない土地へ来て過ごすことに不安を抱えている方が多くいらっしゃることを学びました。まずは地域への誘客を促し地域の方と交流することで不安の解消を図る体制作り、地域住民の理解と協力からなるイベントを定期開催する仕組み作りが必要です。ワーケーション推進の課題のうち最も重要である主たるプレイヤーですが、地域事業者と考えており、地域事業者の方向性統一や認識共有が大事です。
次年度は、おもてなしイベントの定期的開催、ジビエメニュー、キャンドルイベントなど来訪者と地域との交流の場を地域住民が率先して創出し、異郷の地での生活に対する不安払拭を図って地域評価の向上、リピーター増加を目指します。
■中川 様
温泉は強いコンテンツで、温泉入り放題プランとサイクリングやバイオマスツアーの連動など面白い企画となりそう。ガストロノミーなどもよいのでは。この時期この地域に帰ってくる、のようなコンテンツができると良い。
シェアオフィスやサテライトオフィスは全国がライバルなので難しいが、地域で一番最初に会った方のアテンドで決まることもあるので、人づくりも重要。
■渡邉 様
ワーケーションのWEBサイトを見つけられなかった。またフライヤーに机を貸しますと書いてあるけれどサイズなど不明。個人客対象ならコーディネーター的人材は特にいらないが、代わりにWEBに情報を詳細に記載することが大切。家族連れはワーケーションに来るというより、家族旅行で行った先で急な仕事が発生した時にも対応できるという懐の深さが行きやすい観光地になると思う。
■岡本 様
子供連れの場合は、両親がともに仕事をして、託児のニーズがでてくる場合もある。夏休みの宿題をサポートしてくれるコーディネートはあると面白い。
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(3)うきは市の遊休施設等を活用したワーケーションの取り組みについて
福岡県うきは市都市計画準備課 熊懐 真孝 氏
うきは市様では、コロナ前から遊休施設を整備し、観光以外の宿泊への活用を展開されていますが、情報発信やコーディネート機能強化にむけた各組織との連携整備・強化をご提案されました。
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○熊懐 氏
平成29年度、文化財施設や廃校などの活用方法を検討したが行政の担当部署によってモチベーションが違い、既存の組織が進めるには難しかったため、行政だけでなく地域おこし協力隊や東京の企業も入ってプロジェクトチームを結成しました。その後、施設整備などを行い、企業合宿も行って課題を探し、これからという時にコロナとなり方向転換、令和2年度はテレワークでも働けるワーケーション実施者への補助を行いました。
その際、ある地域事業者の代表の方がフックとなっているのがわかり、行政は農泊事業者への後方支援や既存の宿泊施設等の状況等を把握していたが、ハブになる可能性が高い観光公社との連携の重要性を認識しました。令和3年度は定例会議を実施しながら、宿泊、体験、ワーク等可能な施設等の情報を公社と共有し、公社が前面に立って情報提供するとか、旅行業の資格を活かし既存宿泊と農泊事業者を繋ぐ等、公社の受入力向上を狙っています。
行政の役割はあくまで後方支援、予算も限られているため、民間事業者のアイディアやネットワークを活かした拡がりなどはお任せしたい。企業、団体の呼び込みに注力して、受入事業者間の取組み状況や内容を収集し、事業者間の連携を強化したいと考えています。
■岡本 氏
ワーケーションには、地域側の団体等をまとめるコーディネーター、都市側と地域を結びつける機能を持つ人、現地行政側のコーディネーターが必要といわれていますが、行政側は異動があるので地域のDMO等とタッグを組み連続性を作っておくことが重要。
■渡邉 氏
福岡でも開発合宿に取り組む企業もあり、さらにネットワークでつながっている地元のおばあちゃんたちというコンテンツがあることは強い訴求力になると思います。
■中川 氏
民間事業者の立場からすると、公社さんとの繋がり、行政さんとの繋がりを引き継いでいただける方がいると、地域が盛り上がっていくきっかけとなります。
◆グループディスカッション
受講者、取組発表者、地域実践者の方、それぞれ、A~Dのグループに分かれ、取組案をモデルに、もう少し詳しく聞きたいと思ったことや、気づいたことなどを話し合うグループディスカッションを行いました。地域実践者の方に各グループの進行をお願いしました。(内容は、クロストークで紹介します)
◆クロストーク
田中先生、地域実践者の方によるクロストークを行いました。
まずグループディスカッションにおける話題の共有、続いて受入れ環境づくりの成功ポイント、最後に、数年後のワーケーションの姿について、議論を深めていただきました。
(1)グループディスカッションの共有
グループディスカッションの意見や議論を受講者全員と共有するため、地域実践者の方からお話しいただきました。
○Aグループ 取組モデル:かすみがうら市 中川氏
二次交通の課題について意見や質問が多く出ました。最初は助成があっても次年度からどうするかという指摘、かすみがうら市さんの学生アンケートでも道のりや動線をどうするかという課題が指摘されたそうです。シェアサービスや相乗りタクシーの可能性、どういう風に来てもらうかということを体験にしてしまう、という意見がでました。
○Cグループ 取組モデル:うきは市 渡邉氏
自分が参加するならどんな情報が必要か皆で考えたところ、どこにあって、どうやって行くのか、そこで何ができるのか、ということが最初に求められるのでそれを集約して発信するのが大切、と纏まりました。またコーディネーターが必要だけどなかなか見つけられないという課題があることを皆さんで確認しました。
○B・Dグループ 取組モデル:真庭観光局 岡本氏・田中先生
地域がターゲットとする地域からどう見えているか、近隣地域や他の施設との連携をどうするか、受け入れ施設が少ないときはどうするか、ワーケーションの目的をどうやって定めるかといった共通する課題がありました。
(2)受入れ環境づくりの成功ポイント
継続する地域の受け皿づくりについて、どうやって苦労を乗り越えてきたか、何がポイントか、など、お話しいただきました。
渡邉様からは、ワーケーションの大義名分は地域側の人々になかなか理解されにくいため、最初は宿への受入をお願いするところから始め、説明は後回し。スキー場リフト無料キャンペーンを通じてようやく最近理解してもらえるようになったという例を紹介いただきました。
岡本様からは、わかりやすいトピックを作ることに取り組んだとのこと。有名企業と組む、先行地を褒める、横展開時には有識者や有名人と手を組む、ノウハウをフリー素材として広げる、企業には門を正面から叩いても厳しいのでそこに勤務している面白い人たちとの関係を作ることに注力した、ということでした。
中川様はワーケーションを通じてコミュニティ形成をされていますが、うまくいっているところ、いっていないところの違いは、スピード感とフットワーク、ということでした。さらに、日頃から情報をインプットしていて、それらを好材料にすぐに取り組める地域がうまくいっていると思いますとのことでした。
(3)ワーケーション展望
最後に、田中先生から、ワーケーションは第2フェーズに入ったのではないかという話題提起がありました。ワーケーションには、地域内の人でも地域外の人でも、そこで仕事をすることが自分にとってハッピーにつながりいろんな発見につながるというマインドを持つ人たちがとても集まりやすくなっているという指摘です。また、海外ではデジタルノマドが認識されつつあったときにコロナとなりましたが、インバウンドが復活すれば日本で旅をし仕事をする人が間違いなく増える、こういったことを踏まえ、各実践者の皆様に、これからどんなワーケーションを考えていくとよいかお話しいただきました。
岡本様は、今後はワーケーションを常態化するにはどうしたらよいか、ということだと思う、地域からすれば外から来た人の知恵を借り、それを基調としたまちづくりに繋がっていくのではないかと述べられました。インバウンドの取組はこれからだが将来的には視点として持っているとのことでした。
渡邉様からは、全国どこでも仕事ができる環境になったことから、夏と冬で北と南を行ったり来たりするなど季節のいいとこどりをする人が増えそうであり、ペンションや貸別荘などのサブスクや長期利用などを検討しているそうです。地域それぞれの特色を生かし地域間連携にも取り組みたいとのことでした。
中川様からは、人をつなげていきたいので、「人」がきっかけになって動く時代になるといい、またシェアリングは重要なコンテンツになるので新しいサービスを創り出していけると良い、人は貸し借りなので、いい意味の貸し借りを広げていきたいとのことでした。
最後に田中先生からは、キーワードは、「連携する、繋がる、一緒に」。ワーケーションの目的は広がりすぎてわかりにくいところもあるが、「繋がる。連携。一緒に」に収斂をされながら、それぞれの新しいライフスタイル、新しいワークスタイル、あるいは新しい地域課題の解決の仕方を手に入れることができた、それが現時点でワーケーションが置かれている位置づけかもしれません。1年後2年後、今まで移動できなかった人たちや外国人が色々な立場で地域とつながっている姿が見られるとよいと思います、と自由に往来する人と地域のつながりに可能性を感じる展望をお話しいただきました。
以上をもって第3回研修を終え、全3回の研修プログラムをすべて終了いたしました。
田中先生、実践者の皆様には、多方面にわたり有益なアドバイスをいただき大変ありがとうございました。受講者の皆様にはコロナ感染拡大の中、研修へのご参加、課題へのお取組など、大変お疲れ様でございました。本研修がワーケーション推進への道行を示すものとなり、具体化に向けて動き出す助けとなれば幸いです。
<お問い合わせ>
公益社団法人日本観光振興協会
観光地域づくり・人材育成部門
観光地域マネジメント担当 岩本・鈴木
kokunai@nihon-kankou.or.jp
前回の講義では、すでにワーケーションを取り組まれている3名の地域実践者の方に、取組の経緯や内容などをご発表いただきました。ワーケーションを通じて目指しているもの、ターゲット、具体的な取組内容等、3地域それぞれ異なることがわかりましたが、地域資源や立地特性を考慮しながら、ワーケーションに取り組む目的やターゲットが明確であることは共通していました。
今回は、受講者の皆様への事前課題としていたワーケーション事業やアイディアの中から、3名の方にワーケーション取組案をご発表いただき、田中先生、前回ご発表いただいた3名の地域実践者の方(鳥取県の岡本様、信州たてしな観光協会の渡邉様、ナカガワ・アドの中川様)からコメントをいただきました。次に、その3つの取組案をモデルに、3グループに分かれてグループディスカッションを行いました。最後に、田中先生と実践者の方によるクロストークを行い、グループディスカッションの共有や今後のワーケーション展望をお話しいただきました。
◆今後取り組んでみたいワーケーション
(1)かすみがうら版ワーケーション実証プロジェクト
茨城県かすみがうら市産業経済部 理事 高井 淳 氏
今年度、3回にわたりモニターツアーを実施するなど、すでに取組に着手されているかすみがうら市様ですが、ターゲットや目的の絞り込み、4つのステークホルダーにとってのメリットを再検討し、次年度は研修型ワーケーションに取り組みたいと発表されました。
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○高井 氏
新事業創出や企業誘致を目指す中で、週末に人が集まる古民家ホテルを拠点にワーケーションを仕掛けることで、平日の集客や滞在のしかけに取り組みました。昨年11月からモニターツアーを3回実施しましたが、毎回テーマも異なりターゲットも幅広く設定しました。
次年度は地域との交流に、より重きをおいた課題解決型に絞り、4つのステークホルダーのメリットを意識したプログラムにしたいと考えています。持続可能な感性を養う中でビジネスにもいかすSDG’s、地域体験留学でもある親子ワーケーション、市内の畑などを活用して次世代農業技術の実証実験や新規ビジネス創出につながる農業の3つをテーマとします。これらは長期滞在にむけた仕組みづくりでもあり、経済効果だけでなく新たなパートナーシップ構築などの地域への効果があると考えています。
■渡邉 氏
ちゃんとストーリーができていて順調に進んでいらっしゃる。分野を問わず大学生とコラボするのは非常に良い。宿泊施設など受け入れ施設を増やしたほうが良いのでは。
親子連れワーケーションは小学生以上だと長期休暇中が対象となり、わざわざ保護者が仕事をするのか疑問。思い切って未就学児のみ対象など。
■中川 氏
地域との交流をメインに考えているなら地元事業者でも外から来た方でも巻き込む仕掛けが大切。最終的には人と人のつながりでその人に会いに行く「旅ワーケーション」などユニーク。美馬でも冬は全然観光資源がないのでサウナワーケーションに取り組んでいる。
■岡本 氏
地域課題解決というのは地域側の負担が大きく、対応できるプレイヤーも限定されがちなので地域周遊型のワーケーションなど、組合せで考えてもよいのでは。
コミュニケーション継続も重要、関係性を持たせていく仕組みがあるとさらに広がる。
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(2)温泉地から地方創生「湯原・環桶(ワーケ) ーションおもてなし事業」
岡山県 一般社団法人 真庭観光局 総務部 田中 賢一 氏
真庭観光局様は平成30年に設立された地域連携DMO法人です。今年度モニター実証に取り組まれましたが集客に苦戦され、ターゲット、受入整備、認知度向上などに課題があると考え、見直しのご提案をいただきました。
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○田中 氏
今年度は環境省の滞在型ツアーワーケーション推進事業で機器の貸出、体験プログラム提供、地域事業者との意見交換会などを行い、内閣府の交付金事業で施設整備を実施しました。
今回の研修で知らない土地へ来て過ごすことに不安を抱えている方が多くいらっしゃることを学びました。まずは地域への誘客を促し地域の方と交流することで不安の解消を図る体制作り、地域住民の理解と協力からなるイベントを定期開催する仕組み作りが必要です。ワーケーション推進の課題のうち最も重要である主たるプレイヤーですが、地域事業者と考えており、地域事業者の方向性統一や認識共有が大事です。
次年度は、おもてなしイベントの定期的開催、ジビエメニュー、キャンドルイベントなど来訪者と地域との交流の場を地域住民が率先して創出し、異郷の地での生活に対する不安払拭を図って地域評価の向上、リピーター増加を目指します。
■中川 様
温泉は強いコンテンツで、温泉入り放題プランとサイクリングやバイオマスツアーの連動など面白い企画となりそう。ガストロノミーなどもよいのでは。この時期この地域に帰ってくる、のようなコンテンツができると良い。
シェアオフィスやサテライトオフィスは全国がライバルなので難しいが、地域で一番最初に会った方のアテンドで決まることもあるので、人づくりも重要。
■渡邉 様
ワーケーションのWEBサイトを見つけられなかった。またフライヤーに机を貸しますと書いてあるけれどサイズなど不明。個人客対象ならコーディネーター的人材は特にいらないが、代わりにWEBに情報を詳細に記載することが大切。家族連れはワーケーションに来るというより、家族旅行で行った先で急な仕事が発生した時にも対応できるという懐の深さが行きやすい観光地になると思う。
■岡本 様
子供連れの場合は、両親がともに仕事をして、託児のニーズがでてくる場合もある。夏休みの宿題をサポートしてくれるコーディネートはあると面白い。
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(3)うきは市の遊休施設等を活用したワーケーションの取り組みについて
福岡県うきは市都市計画準備課 熊懐 真孝 氏
うきは市様では、コロナ前から遊休施設を整備し、観光以外の宿泊への活用を展開されていますが、情報発信やコーディネート機能強化にむけた各組織との連携整備・強化をご提案されました。
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○熊懐 氏
平成29年度、文化財施設や廃校などの活用方法を検討したが行政の担当部署によってモチベーションが違い、既存の組織が進めるには難しかったため、行政だけでなく地域おこし協力隊や東京の企業も入ってプロジェクトチームを結成しました。その後、施設整備などを行い、企業合宿も行って課題を探し、これからという時にコロナとなり方向転換、令和2年度はテレワークでも働けるワーケーション実施者への補助を行いました。
その際、ある地域事業者の代表の方がフックとなっているのがわかり、行政は農泊事業者への後方支援や既存の宿泊施設等の状況等を把握していたが、ハブになる可能性が高い観光公社との連携の重要性を認識しました。令和3年度は定例会議を実施しながら、宿泊、体験、ワーク等可能な施設等の情報を公社と共有し、公社が前面に立って情報提供するとか、旅行業の資格を活かし既存宿泊と農泊事業者を繋ぐ等、公社の受入力向上を狙っています。
行政の役割はあくまで後方支援、予算も限られているため、民間事業者のアイディアやネットワークを活かした拡がりなどはお任せしたい。企業、団体の呼び込みに注力して、受入事業者間の取組み状況や内容を収集し、事業者間の連携を強化したいと考えています。
■岡本 氏
ワーケーションには、地域側の団体等をまとめるコーディネーター、都市側と地域を結びつける機能を持つ人、現地行政側のコーディネーターが必要といわれていますが、行政側は異動があるので地域のDMO等とタッグを組み連続性を作っておくことが重要。
■渡邉 氏
福岡でも開発合宿に取り組む企業もあり、さらにネットワークでつながっている地元のおばあちゃんたちというコンテンツがあることは強い訴求力になると思います。
■中川 氏
民間事業者の立場からすると、公社さんとの繋がり、行政さんとの繋がりを引き継いでいただける方がいると、地域が盛り上がっていくきっかけとなります。
◆グループディスカッション
受講者、取組発表者、地域実践者の方、それぞれ、A~Dのグループに分かれ、取組案をモデルに、もう少し詳しく聞きたいと思ったことや、気づいたことなどを話し合うグループディスカッションを行いました。地域実践者の方に各グループの進行をお願いしました。(内容は、クロストークで紹介します)
◆クロストーク
田中先生、地域実践者の方によるクロストークを行いました。
まずグループディスカッションにおける話題の共有、続いて受入れ環境づくりの成功ポイント、最後に、数年後のワーケーションの姿について、議論を深めていただきました。
(1)グループディスカッションの共有
グループディスカッションの意見や議論を受講者全員と共有するため、地域実践者の方からお話しいただきました。
○Aグループ 取組モデル:かすみがうら市 中川氏
二次交通の課題について意見や質問が多く出ました。最初は助成があっても次年度からどうするかという指摘、かすみがうら市さんの学生アンケートでも道のりや動線をどうするかという課題が指摘されたそうです。シェアサービスや相乗りタクシーの可能性、どういう風に来てもらうかということを体験にしてしまう、という意見がでました。
○Cグループ 取組モデル:うきは市 渡邉氏
自分が参加するならどんな情報が必要か皆で考えたところ、どこにあって、どうやって行くのか、そこで何ができるのか、ということが最初に求められるのでそれを集約して発信するのが大切、と纏まりました。またコーディネーターが必要だけどなかなか見つけられないという課題があることを皆さんで確認しました。
○B・Dグループ 取組モデル:真庭観光局 岡本氏・田中先生
地域がターゲットとする地域からどう見えているか、近隣地域や他の施設との連携をどうするか、受け入れ施設が少ないときはどうするか、ワーケーションの目的をどうやって定めるかといった共通する課題がありました。
(2)受入れ環境づくりの成功ポイント
継続する地域の受け皿づくりについて、どうやって苦労を乗り越えてきたか、何がポイントか、など、お話しいただきました。
渡邉様からは、ワーケーションの大義名分は地域側の人々になかなか理解されにくいため、最初は宿への受入をお願いするところから始め、説明は後回し。スキー場リフト無料キャンペーンを通じてようやく最近理解してもらえるようになったという例を紹介いただきました。
岡本様からは、わかりやすいトピックを作ることに取り組んだとのこと。有名企業と組む、先行地を褒める、横展開時には有識者や有名人と手を組む、ノウハウをフリー素材として広げる、企業には門を正面から叩いても厳しいのでそこに勤務している面白い人たちとの関係を作ることに注力した、ということでした。
中川様はワーケーションを通じてコミュニティ形成をされていますが、うまくいっているところ、いっていないところの違いは、スピード感とフットワーク、ということでした。さらに、日頃から情報をインプットしていて、それらを好材料にすぐに取り組める地域がうまくいっていると思いますとのことでした。
(3)ワーケーション展望
最後に、田中先生から、ワーケーションは第2フェーズに入ったのではないかという話題提起がありました。ワーケーションには、地域内の人でも地域外の人でも、そこで仕事をすることが自分にとってハッピーにつながりいろんな発見につながるというマインドを持つ人たちがとても集まりやすくなっているという指摘です。また、海外ではデジタルノマドが認識されつつあったときにコロナとなりましたが、インバウンドが復活すれば日本で旅をし仕事をする人が間違いなく増える、こういったことを踏まえ、各実践者の皆様に、これからどんなワーケーションを考えていくとよいかお話しいただきました。
岡本様は、今後はワーケーションを常態化するにはどうしたらよいか、ということだと思う、地域からすれば外から来た人の知恵を借り、それを基調としたまちづくりに繋がっていくのではないかと述べられました。インバウンドの取組はこれからだが将来的には視点として持っているとのことでした。
渡邉様からは、全国どこでも仕事ができる環境になったことから、夏と冬で北と南を行ったり来たりするなど季節のいいとこどりをする人が増えそうであり、ペンションや貸別荘などのサブスクや長期利用などを検討しているそうです。地域それぞれの特色を生かし地域間連携にも取り組みたいとのことでした。
中川様からは、人をつなげていきたいので、「人」がきっかけになって動く時代になるといい、またシェアリングは重要なコンテンツになるので新しいサービスを創り出していけると良い、人は貸し借りなので、いい意味の貸し借りを広げていきたいとのことでした。
最後に田中先生からは、キーワードは、「連携する、繋がる、一緒に」。ワーケーションの目的は広がりすぎてわかりにくいところもあるが、「繋がる。連携。一緒に」に収斂をされながら、それぞれの新しいライフスタイル、新しいワークスタイル、あるいは新しい地域課題の解決の仕方を手に入れることができた、それが現時点でワーケーションが置かれている位置づけかもしれません。1年後2年後、今まで移動できなかった人たちや外国人が色々な立場で地域とつながっている姿が見られるとよいと思います、と自由に往来する人と地域のつながりに可能性を感じる展望をお話しいただきました。
以上をもって第3回研修を終え、全3回の研修プログラムをすべて終了いたしました。
田中先生、実践者の皆様には、多方面にわたり有益なアドバイスをいただき大変ありがとうございました。受講者の皆様にはコロナ感染拡大の中、研修へのご参加、課題へのお取組など、大変お疲れ様でございました。本研修がワーケーション推進への道行を示すものとなり、具体化に向けて動き出す助けとなれば幸いです。
<お問い合わせ>
公益社団法人日本観光振興協会
観光地域づくり・人材育成部門
観光地域マネジメント担当 岩本・鈴木
kokunai@nihon-kankou.or.jp
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