三陸の豊かな資源をマーケットにつなぎ直したい
岩手県大船渡市
有限会社三陸とれたて市場
代表取締役 八木 健一郎 氏
主な取り組み
◎三陸の魚介類をインターネットで販売
◎漁の現場や魚の捌き方を動画で紹介、当日限定品のタイムセール
◎小規模漁業者とともに新たに「三陸漁業生産組合」を組織
◎「漁師のおつまみ研究所」を立ち上げ、漁師料理の商品開発
◎HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)準拠の魚の加工プラントをつくり、CAS(Cells Alive System)を導入
◎「懐かしき昭和の漁村再生プロジェクト」を推進
など
三陸には水産資源があふれている
自社だけが再建しても、漁業者の再生がないと意味がない
伴走しながら構造をつくり替えていく人材が必要
――震災後、八木さんは漁業者とともに「懐かしき昭和の漁村再生プロジェクト」を立ち上げて、漁業の復興に取り組んでいます。具体的にどういう活動をされていますか。
八木:震災後の5年間、実際にやってきたのはインフラの再整備です。漁業の現場にどういう構造物をつくり、どういう設備を入れるのか。船や漁具はどうするのか。その資金をどこから調達してどう運用するのか。どういうチームを組んでどう動けば、新しい価値を生み出せるのか。今、それらの活動が一段落したところです。
また、民間ファンドから資金を調達してHACCP(食品の製造工程に潜む危害をあらかじめ分析し、それを安全なレベルにまで管理できる重要管理点を工程上に定め、それを常時監視する食品の衛生管理手法)準拠の魚の加工プラントを新設し、CASを導入しました。ただ、市場から買ってきた材料を使ってCASで鮮度の低下を止めても、市場の鮮度を維持できるだけです。それでは築地に勝てないので、原材料の鮮度を上げる技術開発をしています。例えば、脱血、神経〆をした魚のCAS凍結ですが、これは漁業者の協力がないとできません。漁業者との連携技で、新しいマーケットを生み出そうとしています。
――今後、地域再生を進めていく上で、どのような知識や能力を持った人材が必要だと思われますか。
八木:農業でも漁業でも、地方には豊富な資源がありますが、そのほとんどが利用されずに捨てられています。まず、日本の1次産業のポテンシャルを、点ではなく面で考えて、有効利用のグランドデザインを大局的に描ける能力を持った人材が必要です。また、そこで描いた青写真を地域に落とし込んでいくためには、これまでの産業構造を再点検して、定義し直していく必要があります。組織に伴走しながら、そこを一緒に乗り越えていく手助けができるファシリテーターのような人材が求められていると思います。
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